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2011/12/09

福島第一原発1号機  午後六時すぎ、一時的にバッテリーが復活したのを受け再起動させたが、「IC内の水が不足し、原子炉蒸気が通る配管が破断する恐れがある」と考え直し、その七分後に停止させた

冷却装置作動と誤認 原発事故 聞き取り調査公開
2011年12月6日

 福島第一原発の事故当時、現場の東京電力緊急対策本部が、大津波の襲来後も1号機の非常用冷却装置(IC)は作動し続けていると誤認していたことが六日、経済産業省原子力安全・保安院が情報公開した保安調査の文書で分かった。現場の状況を正しく認識できていなかったことで、事故対応に遅れが出た可能性もある。

 保安院は八月四、五の両日、福島第一原発で、吉田昌郎(まさお)所長(当時)らから聞き取り調査を実施。保安院はこれまで内容を明らかにしてこなかったが、今回、本紙が保安院に対して行った情報公開請求で分かった。


 調査報告書によると、1号機中央制御室にいた東電の現場社員らは、三月十一日、地震発生後に自動起動したICを、原子炉の温度が急速に下がりすぎるとしていったん手動で停止。午後六時すぎ、一時的にバッテリーが復活したのを受け再起動させたが、「IC内の水が不足し、原子炉蒸気が通る配管が破断する恐れがある」と考え直し、その七分後に停止させた。

 ICの設計書から水は十分あると判断し起動したのは、その後三時間たってから。中央制御室の「ICの表示ランプが弱々しくなりこのタイミングを逃すと二度と弁が開けられない」と追い詰められての判断だった。

 しかし、所長らが詰めていた免震重要棟にある緊急対策本部と、1号機中央制御室との間は、地震後にPHSやトランシーバーなどが使えず、固定電話一回線しか通じないため、なかなか連絡がつかない状況だった。

 原子炉の水位計の情報も間違っていたため、所長らは、実際には弁の開閉を繰り返し、多くの時間でICが停止していたのに、ずっと起動して冷却が続いていると認識していたという。

 また、全電源喪失という事態を受け、緊急対策本部が電源車を集めることが必要と判断したのは、大津波襲来から二時間以上たった午後六時ごろだったことも判明した。早く判断し、手配できていれば、事故対応が違った可能性もある。






「非常用復水器」すぐ稼働なら炉心溶融なかった 原子力安全基盤機構調査
2011.12.9 19:14 [放射能漏れ]
 原子力安全基盤機構(JNES)は9日、東京電力福島第1原発1号機で、非常時に原子炉の圧力を下げて冷却する「非常用復水器(IC)」が津波から45分以内に稼働していれば、炉心溶融に至らなかったとする解析結果を公表した。

 ICは今回の事故でも地震直後に自動起動したが、10分後に原子炉温度が急激に下がり、運転員が手動停止。再起動させたのは津波から約3時間後の3月11日午後6時18分だった。この時点で、すでに燃料は溶融し始めていた可能性が指摘されている。

 JNESは津波襲来から約45分後の同日午後4時15分にICを再稼働させたと仮定したシミュレーションを実施。その結果、原子炉の水位は維持され、燃料の溶融が防げたという。

 ICは電源を失った際に唯一稼働可能な冷却装置で、今回の事故でも稼働状況が適正だったかが、事故検証における重要な争点の一つとなっている。

 再起動が遅れたことについて、東電は保安院に対し「津波直後の数時間はプラント全体の状況把握に取り組むのが精いっぱいで、ICに集中して対応できる