東京電力福島第1原発事故で、東電は2日夜、2号機の原子炉格納容器から採取した気体を同日昼に再測定した結果、放射性物質のキセノンがほぼ同程度の濃度で検出されたと発表した。一方、経済産業省原子力安全・保安院は、日本原子力研究開発機構の分析に基づき、キセノンが検出されたことはほぼ間違いないと発表した。
キセノンの生成原因について、保安院の森山善範原子力災害対策監は2日夜の会見で、「臨界が局所的に生じた可能性は否定できない」と述べた。一方で、原子炉内にある核物質の量などから、プルトニウムなどが自然に核分裂を起こす「自発的核分裂」でキセノンが発生した可能性も高いと説明した。(2011/11/02-22:51)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011110200765
キセノン検出 局所的な臨界か
11月2日 23時43分
福島第一原子力発電所の2号機内の気体から、燃料のウランが核分裂したときにできる放射性物質のキセノンが検出され、東京電力は、核分裂反応が連続する臨界が、一時的に一部で起きた可能性もあるとみています。一方、経済産業省の原子力安全・保安院は、「局所的な臨界が起きた可能性はある」としたうえで、「別の放射性物質が、自然に核分裂した可能性も十分考えられる」と説明しました。
福島第一原発2号機では、先月28日から格納容器の中の気体を吸い出し、フィルターを通して放射性物質を取り除く装置の運転を始めていて、この装置の出口付近で、放射性物質の種類や濃度を測定して分析しています。
その結果、1日に採取した気体から燃料のウラン235が核分裂したときにできる放射性物質の、キセノン133とキセノン135が、1立方センチメートル当たり100万分の6ベクレルから十数ベクレルと、ごく微量検出されたということです。
また、2日に採取した気体からもキセノン135が検出されました。
放射性物質の量が半分になる半減期は、キセノン133が5日、キセノン135が9時間といずれも短いため、東京電力は、3月の事故直後ではなく、最近、核分裂反応が起き、臨界が一時的に一部の場所で継続した可能性もあるとみています。
ただ、原子炉の温度や圧力などに大きな変動はないことから、大規模で長時間の臨界は起きていないと判断しているということです。
一方、経済産業省の原子力安全・保安院は、2日夜に記者会見し、2号機で検出されたキセノンについて、「ウランが中性子によって核分裂し、局所的な臨界が起きて発生した可能性はある」と説明しました。
そのうえで、「別の放射性物質が『自発核分裂』によって、キセノンが発生した可能性も十分考えられる」としています。「自発核分裂」は、ウランではない別の放射性物質が、自然に核分裂する現象で、臨界は伴わないということです。東京電力と原子力安全・保安院は、2号機で採取した気体を専門機関で分析するなどして詳しく調べることにしています。
2号機で小規模臨界か 解説主幹に聞く
2011年11月2日 21:15
「臨界」、複雑な発生要件【Q&A】
福島第1原発2号機で、溶け落ちた核燃料が連鎖的に核分裂し臨界となった可能性があると東京電力が発表した。
Q 臨界とは。
A 原発の燃料のウランが核分裂し、放出される中性子が別のウランに当たって核分裂を起こす連鎖反応が続く状態のことだ。原発は臨界状態をうまくコントロールし、核分裂で生まれる大きな熱エネルギーを利用して発電している。
Q なぜ分かったのか。
A 原子炉格納容器内の気体から、核分裂でできるキセノンが検出された。キセノンは放射線を出す能力が弱まるのがとても早いため、3月の事故発生時にあったものが残っているとは考えにくい。ごく近い時期に核分裂が起きたとみられる。
Q 考えられる原因は。
A 臨界が起こるには、ウランが適度な大きさや形状になっていることと、水の存在が必要。通常の原発では、臨界が最も効率よく起こるように設計されており、福島第1原発のように燃料が溶け落ちると、このバランスが崩れて臨界は起こりにくくなると考えられていた。2号機の燃料の状態は不明だが、形状や水との関係で、臨界が起こる条件がそろってしまった可能性がある。
Q 危ないのか。
A 東京電力は中性子を吸収するホウ酸を含んだ水を原子炉に注入。これは通常時に原発を停止させる制御棒と同じ材料だ。原子炉の温度や圧力に変化はなく、大きな危険はないとみられる。
Q 影響は。
A 原子炉への循環注水冷却は継続しており、東電は事故収束にむけた作業に支障はないとしている。しかし政府と東電は1~3号機を安定的な「冷温停止」状態に達したと年内に判断する意向だったが、今後の動き次第では延期などの可能性もあり得る。
核分裂反応、なぜ今?(Q&A)
2011/11/2 20:44
Q 福島第1原発2号機の原子炉で一体、何が起きたのか。
A 今回見つかった放射性物質のキセノンは半減期(放射性物質の量が半分になる期間)が9時間~5日で、土壌への汚染が問題になっているセシウムなどに比べると、とても短い。微量とはいえ格納容器内に存在するということは、事故当初のものとは考えにくく、最近、核分裂反応が起きていた可能性がある。
Q そもそも核分裂反応とは?
A ウランやプルトニウムといった放射性物質の原子核に中性子があたって、2つ以上の物質の原子核に分かれる現象のこと。例えば核燃料となるウランだと、ヨウ素やセシウム、キセノンなど様々な放射性物質の原子核ができる。
Q 核分裂反応だとすれば、どうして今ごろ起きたのか。
A 事故から7カ月半経過したが、原子炉内の様子や核燃料の状態はきちんと把握できていない。核分裂反応は今起きたというより、これまでも断続的に起きていた可能性もある。ただ、毎日の注水によって原子炉の温度は下降傾向にあり、核分裂がドミノ倒しのように次々と連鎖する臨界に達した可能性は、否定はできないものの、低いというのが現状のようだ。
Q もし臨界だとどうなるの?
A 通常の原子力発電所で起きるような臨界になれば、原子炉の温度上昇が止まらなくなり、溶け落ちたものの冷却できているとされる核燃料が再び溶融し、爆発する危険性も出てくる。ただ、臨界に達するには様々な条件がそろわないと難しく、専門家は仮に臨界になったとしても一時的にとどまり、心配ないとみている。
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819595E2E0E2E0948DE2E0E3E3E0E2E3E39C9CEAE2E2E2;bm=96958A9C93819595E2E0E2E0968DE2E0E3E3E0E2E3E39C9CEAE2E2E2