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2011/11/17

政府、コメの出荷停止を指示‥コメの出荷停止措置は初

政府、初のコメ出荷停止指示 福島市の大波地区
 福島市大波地区の農家のコメから国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題で、政府は17日、福島県に対し、この地区でことし収穫されたコメについて、原子力災害対策特別措置法に基づき、出荷停止を指示した。コメを対象とした出荷停止措置は初めて。

 大波地区では、農家1戸がJAに持ち込んで行った自主検査で基準値を超え、県の検査でもこの農家のコシヒカリの玄米から基準値を超える1キログラム当たり630ベクレルが検出された。

2011/11/17 18:39 【共同通信】




放射性セシウム:福島市のコメから規制値超630ベクレル
◇政府が出荷停止検討
 福島県は16日、福島市大波地区産のコシヒカリ(玄米)から国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウム630ベクレルを検出したと発表した。コメの暫定規制値超過は全国で初めて。政府は同地区のコメを出荷停止にする検討を始めた。【清水勝、佐々木洋】

 県は同日、大波地区の稲作農家154戸に出荷自粛を要請。厚生労働省は県に対し、同地区や周辺で収穫したコメのサンプル検査の強化と、既に流通したコメの追跡調査を要請した。

 県や市によると、今月14日、地区内の一農家が自宅で消費するために保管していたコメの安全性を確かめようとJAに持ち込み、簡易測定器で測定。高い数値が出たためJAが福島市に連絡し、県で詳しく検査した結果、玄米で630ベクレル、白米で300ベクレルを検出した。農家はこのコメの出荷も予定していたが、まだ市場には出回っていないという。

 大波地区は東京電力福島第1原発から約60キロ離れた中山間地で、154戸の稲作農家がある。原発事故による放射線量が比較的高く、福島市は10月18日から地区の全世帯を対象に、本格的な除染作業を進めている。この農家の水田はくぼ地にあり、沢水を使っているといい、周囲の放射性物質が蓄積された可能性があるとみられる。コメは収穫後に天日干ししていたが、市は「セシウムの濃度が高かったこととは関係がない」としている。

 原発事故を受け、政府は17都県を対象に収獲前の予備検査と収獲期の本検査を実施。大波地区では9~10月に予備検査を1地点、本検査を2地点で行い、検出値は28~136ベクレルだった。県内すべての検査が終了し、佐藤雄平知事は10月12日、県産米の「安全宣言」をしていた。

 厚労省監視安全課は「予備検査と本検査で何カ所も調べ、すべて規制値以下だったのに、なぜ今ごろ規制値を超えるコメが出るのか。消費者の信頼を得るには、いったん出荷停止とし原因を究明する必要がある」と話している。

毎日新聞 2011年11月16日 21時58分(最終更新 11月16日 23時49分)





福島県 コメ出荷見合わせ要請
11月17日 4時53分
 福島市大波地区の水田で収穫されたコメから、国の暫定基準値を超える1キログラム当たり630ベクレルの放射性セシウムが検出されました。
原発事故のあとコメから国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたのは初めてで、福島県は、この地区のコメの出荷を見合わせるよう要請するとともに、地区のすべての農家のコメを詳しく調査することにしました。

 福島県によりますと、今月14日、福島市大波地区の農家が1か所の水田で収穫したコメについて、農協に検査を依頼したところ、簡易検査で国の暫定基準値の500ベクレルを超える放射性セシウムが検出されました。
このため福島県が改めて検査した結果、玄米から1キログラム当たり630ベクレルの放射性セシウムが検出されたということです。
この農家が、ことし収穫したコメは自分で消費する分も含めておよそ840キロありますが、すべて農協の倉庫などに保管され、市場には流通していないということです。
原発事故のあと、コメから国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたのは初めてで、検査結果を受け、福島県は大波地区のことしのコメの出荷を見合わせるよう要請しました。

大波地区では、先月福島県による放射性物質の「本検査」が2か所で行われましたが、国の暫定基準値を大幅に下回ったため県がコメの出荷を認めていました。福島県は、大波地区のすべての農家154戸のコメについて詳しい調査を行うことにしています。

一方、政府は、出荷停止の指示が必要かどうか検討を始めました。
記者会見した福島県農林水産部の宍戸多加志技監は「県としては、厳しい独自の基準を用いて検査し、やることはやったと考えていたので、今回の結果はとてもショックだ。周辺の農家のコメの流通状況を把握したうえで、なぜ高い数値が出たのか原因を究明し、消費者に対する安全性を確保していきたい」と述べました。

また、国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された農家が所属するJA新ふくしまの吾妻雄二組合長は、記者会見で、「県の本検査で『OK』だった地域から、放射性セシウムが検出されたことは深刻に受け止めなければならない。今後は、検査の網を細かくして放射線量が高いおそれがあるところは、一つ一つ検査していきたい」と述べました。





東日本大震災:福島市コメ高線量 「国の検査、何だった」 農家に動揺広がる
 「国の検査は一体何だったのか」。暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超えるコメの放射性セシウム汚染が初めて福島市で判明した16日、産地に動揺が広がった。農林水産省は収穫前後のダブルチェックで「汚染米は出さない」と自信を見せてきたが、検査態勢が十分だったのか改めて問われそうだ。

 汚染米が見つかった福島市大波地区。70代の農業の女性は、70袋(1袋30キロ)の新米を収穫したばかり。毎年、新米を全量20~30人の知人に売ってきたが、今年は買いたいという知人はおらず、すべて農協に出すつもりだったという。「コメが売れなくなって本当に困る。何度もサンプル調査に協力してきたのに」と、農水省への不信感をあらわにした。

 夫(61)と一緒に収穫を終えた兼業農家の女性(54)は「今年は約100袋出荷した。この時期が年に一度の勝負どころなのに、今後出荷できなくなると大変困る」と不安を口にし、「春先に大丈夫と言われて作付けし、検査でも出荷していいと言われて安心していた。来年に影響するし、もし出荷できないとなると生活にも大きく響く」と訴えた。

 農水省は、情報が入った16日夕から事実関係の確認に追われた。630ベクレルという高い数値について、担当者は「これから調査が行われるだろうから断定はできないが、ホットスポット的な現象かもしれない」とし、予備検査で規制値と同じ500ベクレルを検出した福島県二本松市小浜地区のケースと類似する可能性を指摘している。

 今年産のコメについて政府は4月、警戒区域などを対象に作付け制限を実施。さらに、収穫前後の2段階の検査で汚染米の出荷を水際で食い止める態勢を敷いていた。県による2段階の検査はいずれも終了し、暫定規制値を超えるセシウムは検出されなかった。

 県によると、JA全農福島や各JAは県の検査で放射性セシウムが検出された場合、規制値を超えなくても旧市町村単位で出荷を見合わせる措置を徹底しているという。大波地区の農家は154戸、コメの作付面積は42ヘクタール、生産量は192トン。今年の新米について86戸を調べたところ、JA新ふくしまに57・6トンが出荷されたほか、地元米穀店などに4戸が計1トンを販売。このほか自家保有36トン、知人などに送る縁故米8トン--となっている。

 専門家によると、玄米のセシウムは精米すると約6割が除去される。厚生労働省は「食べても直ちに健康に影響はない」としている。【川上晃弘、長田舞子、曽田拓】

毎日新聞 2011年11月17日 東京朝刊