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2011/11/15

ベルルスコーニ氏の退陣は一時代の終わりを意味する。それが新時代の始まりなのか、それともゆっくりとバラバラになって停滞していく過程の始まりなのか

ベルルスコーニ首相辞任で政界に地殻変動、メディア王の力は健在
2011年 11月 15日 18:42 JST
 [ローマ 14日 ロイター] 信用不安を機に辞任に追い込まれ、市民からは敵意に満ちたやじで見送られたイタリアのベルルスコーニ首相。その辞任劇は、ベルルスコーニ氏が首相の座を射止めた17年前の政変の再来を予感させている。
 ただ、「ピエロ」の大合唱を浴びせられたベルルスコーニ氏の辞任が、ターニングポイントになることに疑いの余地はないものの、この先の見通しは不透明なままだ。

 ボストン大学のビビアン・シュミット教授は「ベルルスコーニ氏の退陣は一時代の終わりを意味する。それが新時代の始まりなのか、それともゆっくりとバラバラになって停滞していく過程の始まりなのかが大きな問題だ」と指摘する。



 ベルルスコーニ氏は1994年、汚職スキャンダルを発端に大物政治家が相次いで失脚した後に首相に就任。カリスマ性やコミュニケーション能力の高さで支持を集め、メディア王と呼ばれるほどの富豪にもなった同氏は、それらの能力と政治力を駆使し絶大な権力を誇示してきた。

 その半面、性的スキャンダルや詐欺事件の渦中にもあるベルルスコーニ氏。別荘に若手女優を招いて乱交パーティーを開いたなどとされ、政治だけではなくイタリア社会全体の質を低下させたと非難されている。

 ベルルスコーニ氏の辞任は、同氏に匹敵する人物が見当たらないことから、それ自体が革命的とも言えるが、今回の衝撃的な辞任劇は、違う勢力が政治の図式を塗り替える準備が整ったとも言える。

 伊ボローニャのジョンズ・ホプキンス大学のエリク・ジョーンズ教授は「方向性が変わった。われわれは、違う性格を持ったイタリア政治を目の当たりにするだろう。ベルルスコーニ氏ほどのカリスマ性を持ち、政治の舞台を支配する人物はいない」と語る。

 次期内閣については、ナポリターノ大統領から次期首相に指名されたモンティ元欧州委員率いる新内閣発足で、旧体制を一変させる勢力が強まるとの見方が出ている。

 <辞任が与える社会的影響>
 イタリア人の生活に与えるベルルスコーニ氏辞任の影響は、まだ明確に見通せない部分が多い。しかし、ベルルスコーニ氏が国営放送の支配権を失ったとしても、同氏所有のテレビ局では、露出の多い女性が出演する華やかなバラエティー番組は継続されるとみられている。

 実際、ニュースチャンネルがモンティ氏指名のニュースを報じている最中にも、タイトなブラウスとスカートを着用した女性たちが飛び跳ねる番組が流れていた。

 アメリカン大学ローマ校のジェームズ・ウォルストン教授は、「ベルルスコーニ氏の社会的影響に関しては、彼が政治家になる前に影響がすでに出ていたため、変化が起こるまでには相当時間がかかる」とみている。

 また、ロンドン大学のジョン・フット教授は「性と権力の世界はテレビ業界に居続ける」と指摘。「ベルルスコーニ氏とテレビに出演して、関係を持つことが大臣や議員になる近道とも言われていた。そのようなことは、どんな社会にもあったが、イタリアでのレベルはとてもグロテスクだ」と話す。

 セルジオ・ロマーノ元駐モスクワ大使は、モンティ氏が政治的な障害を克服できれば、主な改革の実行が可能なほど長く首相を務め、イタリアの変革の基礎を築くことができると予想。

 その上でロマーノ氏は、モンティ氏の改革の実現は、現代化の妨げになっている煩雑なシステムの改善を可能にする憲法改正が行われるかどうかにかかっていると付け加えた。






ベルルスコーニ首相は退陣を、イタリアを救うため-ドイツ与党幹部
11月8日(ブルームバーグ):ドイツのメルケル首相率いる与党キリスト教民主同盟(CDU)の幹部、ミヒャエル・フックス氏は、イタリアのベルルスコーニ首相は辞任するべきだとの考えを示した。イタリアを現在の財政危機状態から脱却させることのできる指導者に道を譲るべきだと論じた。

  フックス氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、イタリアは豊かな国であり能力のある首相の下でならば問題を解決できるだろうとし、新政権の下で財政問題解決が進むと確信していると語った。

  同氏はイタリア国債利回り急上昇が「ベルルスコーニ首相退陣の必要性を示している」と指摘。ベルルスコーニ首相が「イタリアの危機を解決できないことは周知の事実だ」とも述べた。

  ベルルスコーニ首相はこの日の議会の採決で、過半数の保持を目指す。フランスのサルコジ大統領とメルケル独首相は欧州首脳を代表してベルルスコーニ首相に負債圧縮の加速を迫っている。

更新日時: 2011/11/08 22:18 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aBeuM2Pcv75c