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2011/10/09

神奈川県の黒岩知事、太陽光発電「4年で200万戸」選挙公約を撤回

黒岩知事:太陽光発電「4年で200万戸」、選挙公約を撤回 /神奈川
 黒岩祐治知事は7日、太陽光発電のパネル設置について知事選の公約で掲げた「4年間で200万戸分」について「(エネルギー危機を乗り切るための)メッセージの役割を終えた」と述べ、全面的に撤回する考えを明らかにした。



 ◇「エネルギー革命」実現の支障、懸念
 県庁内から懸念の声が上がり、知事は先月公表した新構想の中で数値を事実上下方修正していた。「高すぎる目標」(県幹部)に固執して自身が掲げる「エネルギー革命」実現の支障となることを懸念し、公約撤回を明言した形だ。

 この日開かれた県議会の予算委員会後、記者団に語った。

 4月の黒岩知事就任以降、県内の太陽光発電の設置台数は約8000戸分(設置累計は4万8000戸分)にとどまっている。こうした事情もあり、県は9月に公表した「かながわスマートエネルギー構想」で、2020年度に県内消費電力量の20%以上を太陽光などの再生可能エネルギー(創エネ)や省エネでまかなう方針を示した。新構想の工程表では、太陽光発電分は4年間で約55万戸分(既設を含め59万戸分)とされ、事実上公約が修正されている。

 今後は14年度までに県内消費電力量に対する再生可能エネルギーの発電量を約6%に引き上げることを目指し、太陽光以外の再生可能エネルギーも含めた普及を図る。

 黒岩知事はこの日の予算委で「200万戸分は計画停電を起こさないために打ち出した数字。精査したものではない」と釈明。委員会後、記者団に「かながわスマートエネルギー構想を新たに出したことで、『4年間で200万戸分』は忘れてほしい。ただ、風力・水力・地熱などを合わせて、(200万戸分を)目指していく思いは変わらない」と話した。【北川仁士】
毎日新聞 2011年10月8日 地方版





神奈川県黒岩知事、選挙公約「忘れてほしい」 「太陽光で脱原発」トーンダウン
2011/10/ 8 17:31
神奈川県の黒岩祐治知事が選挙公約で掲げた「4年間で200万戸の太陽光パネル設置」の公約を「忘れてほしい」などと述べて、事実上撤回した。2011年10月7日の県議会予算委員会終了後に記者団の質問に答え、今後は数値目標にこだわらず、「かながわスマートエネルギー構想」を推進していくという。

黒岩知事は東日本大震災後の4月10日の統一地方選で太陽光発電の推進を呼びかけて当選。街頭演説ではソーラーパネルを持ち歩き、「太陽光で脱原発」を訴えていた。


新構想は「4年で55万戸分」
神奈川県に設置されている太陽光パネルは現在、黒岩知事就任後8月までの5か月間に約8200戸分、累計で約4万8000戸分になる。今年度は昨年を上回るペースで設置が進んでいるが、目標の「200万戸」にはほど遠い。

それもあって、黒岩知事の公約はすでにトーンダウンしていた。

9月に公表した「かながわスマートエネルギー構想」は、2020年度に県内の消費電力量の20%以上を、太陽光発電に風力などを含めた再生可能エネルギーでまかなう計画で、このうち太陽光発電分は「4年間で約55万戸分」、既設を含めても59万戸分とした。選挙公約時から「145万戸」も少ない、公約の修正だ。

9月12日の県議会本会議で、黒岩知事は「4年間で200万戸分」の公約を「リセット」したとし、今後新構想について理解を得るため、県民との意見交換会などで説明していくとした。


公約はメッセージ。「正確さよりもわかりやすさ」
黒岩知事は2011年10月7日の予算委員会で、新構想と公約との兼ね合いについて、「200万戸分は計画停電を起こさないために打ち出した数字で、精査したものではない」と釈明し、「(選挙中は)メッセージ性のために正確さよりもわかりやすさを考えた」という。

委員会後には記者団に、「かながわスマートエネルギー構想を新たに出したことで、『4年間で200万戸分』は忘れてほしい。ただ、風力や水力、地熱などを合わせて、(200万戸分を)目指していく思いは変わらない」と理解を求めた。

「4年200万戸」の目標は、短期決戦だった知事選直前の限られた時間でまとめた公約だけに無理があったことは否めない。太陽光発電への注目度こそ高まったものの、見通しは甘かったと言わざるを得ない。

また、選挙公約時には「自己負担なしで太陽光パネルを設置する」ことも掲げていたが、そのことには口をつぐんだまま。各家庭にとって200万円前後の負担がなくなるというのだから、この訴求効果は大きかったとみられる。

議会側は「修正はやむを得ず、現実的」との見方が強い。神奈川県の2009年度の消費電力量における再生可能エネルギーの割合は2.3%程度しかない。「14年度に6%、20年度に20%の目標も決して楽ではない」と寛大に受けとめている。

10月6日付の神奈川新聞の社説は「撤回し理解を求めては」と提案。「忘れてほしい」発言はその翌日のことだった。知事の口から「撤回」の言葉は聞かれないが、やはり事実上の公約撤回なのだろう。