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2011/10/14

発端となったのは、スペイン・マドリード中心部のプエルタ・デル・ソル広場で5月15日に始まった抗議集会だ

経済危機に「怒れる者たち」、15日に世界同時抗議へ
2011年10月14日 14:37 発信地:マドリード/スペイン




【10月14日 AFP】強烈な経済危機に憤り、責任は政治家や銀行家にあると非難する「怒れる人々」が15日に世界同時抗議行動を呼び掛けており、その動きは71か国・719都市に広まっている。

■「われわれはモノではない」、ネットで拡散

 発端となったのは、スペイン・マドリード(Madrid)中心部のプエルタ・デル・ソル(Puerta del Sol)広場で5月15日に始まった抗議集会だ。スペイン全土に広がり、さらに他国へと飛び火した運動の力が今週末、世界規模で初めて示されようとしている。

 一連の抗議運動は、巨額の公的債務削減を目指す各国政府が福祉関連支出を大幅に切り込む中でうねりを増してきた。世界中で予定されている行動をまとめたネットワーク「15october.net」のウェブサイトでは、次のような主張を掲げている。「声を1つにして宣言し、政治家や彼らが仕えている金融エリートたちに知らせよう。未来を決定するのは、われわれ民衆であることを。わたしたちは、わたしたちを代表していない政治家や銀行家の良いようにされる『モノ』ではない」

 呼び掛けには、フェースブック(Facebook)やツイッター(Twitter)が大きく活用されている。現在、15日に街頭抗議が予定されているのは、欧州、北米、南米、アジア、アフリカの71か国、719都市に上る。


■スペインから世界へ飛び火

 火付け役となったスペインでは、失業率が全体で20.89%に上り、16~24歳に限ると46.1%と約半数が失業状態だ。テントを張って泊まり込む「広場占拠」による抗議行動は5月、プエルタ・デル・ソルを始めとするスペイン全土で展開され、続いて欧州に拡大して、ギリシャなど金融危機で大きな打撃を受けている国々で強力に支持された。9月には、グローバル資本主義の中心地である米ニューヨークの金融街、ウォール街(Wall Street)に到達

 ウォール街の小さな広場に9月17日、数百人がテントを張って始まった抗議行動「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」は、米国のメディアや政治家らに大きな衝撃を与えている。ニューヨークでは15日、午後5時(日本時間16日午前6時)にタイムズスクエア(Times Square)での集会が呼び掛けられている。


■特定の代表不在、「アノニマス」の運動

 失業に対する怒りと経済エリートへの反発が、ともすれば全く異なる世界各地の運動を結んでいる共通のテーマだ。しかし、スペインの抗議運動が非常に具体的に、労働時間の短縮と65歳定年制導入による失業対策を要求しているのに対し、その他各国での抗議の矛先はさまざまで、「怒れる者たち」の運動の方向性は明確ではない。

 市場による支配に替わる政策を模索する社会運動体「ATTAC(アタック)」の共同代表を務めるフランスの経済学者、トーマス・クトロ(Thomas Coutrot)氏は「怒れる者たちの運動」について、特定の人物やグループが代表する運動に対して良い意味で「アレルギー」を持っていると評価する。その上で「もちろん、代表を置かずにひとつの運動を築き上げていくことは容易ではない」と語っている。(c)AFP/Elodie Cuzin







【ウォール街デモ】就職難が火種 夢失った米中間層「SOS」
2011.10.13 21:34
【ニューヨーク=松浦肇】米ニューヨークで発生した反経済格差デモ「ウォール街を占拠せよ」が全米の大都市に広がり、米国の社会現象として定着し始めた。参加者の中心は白人男性の学生や失業者ら。デモの拡散と長期化は、これまで経済成長を支えてきた中間層の社会離反を示唆しており、草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」に対抗するリベラル運動にも発展しそうな勢いだ。

 ウォール街から徒歩1分、世界同時多発テロの舞台となったグラウンドゼロの東側。小さなサッカー場ほどの広さのズコッティ公園はデモの発火点となった9月半ばから数百人が寝泊まりし、マンハッタンの新しい観光名所になった。

 普段はサラリーマンや観光客の憩いの場なのだが、中央には寝袋が地面に敷かれ、調理場、IT(情報技術)センターから図書館まで備えた、仮設のキャンプ場に変身した。

 寝食を共にするデモ参加者は交代で「金融機関や経営者の強欲を許すな」「中東の民主化運動を見習え」といったプラカードを掲げて公園に接する歩道でデモを繰り返す。午後7時から全体会議が開かれ、広報体制から衛生問題まで議論し、秩序は保たれている。

 発起人はカナダの反企業活動団体「アドバスターズ」。その後に米環境保護団体「タイムズアップ」、コンピューター・ハッカー集団の「アノニマス」などが加わり、先週からは米サービス従業員国際労組(SEIU)といった代表的な労働組合も協力し始めた。

 参加者には、高等教育を受けた20~30代の白人男性が目立つ。本来なら米経済を支える中間層予備軍だが、デモに参加した理由を聞くと、就職難など将来の生活への不安を口にする。

 「大学を出ても仕事がないし、学費が値上がりして学生ローンを返せるか分からない」と大学生のジョナサン・ヘルナンデスさん。「経済格差など米国は問題ばかり」と無職のマイルズ・ウォルシュさんも嘆く。

 「ウォール街を占拠せよ」と並ぶスローガンは「99%」。国民の1%を占める超富裕層以外の一般市民を代弁する意味を込めた。70~80年代初頭にかけて「99%」の一般市民は、米国の富の70%台後半を保有していたが、住宅価格低迷や高失業率で今や60%台前半に落ち込んでいる。財務面で見る限り、米国の中間層は崩壊が始まった。

 一方、富の3分の1を抑える超富裕層が支払う税率は所得の31%程度で、国民の6割を占める中間層の25%前後とそう変わらない。しかも、一連の金融緩和による株高の恩恵を受けたのは、株式など金融証券の6割を保有する超富裕層だ。

 11日には、企業の最高経営責任者(CEO)が住む高級住宅地で知られるパーク街で数百人規模のデモが繰り広げられた。CEOの所得が一般労働者の300倍を超え、納税回避のテクニックばかりが重宝される。そんな大企業の体質にも矛先が向いている。

 「主義主張は完全符合するわけではないが、雪だるま式に参加者が増えている」とイスラエルからの移民男性は話す。デモは保守派に対抗した単なるリベラル運動ではなく、均等に与えられた機会と自らの努力によって成功と富をつかむというアメリカン・ドリームを見失った中間層とその予備軍の「SOS」なのだ。