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2011/09/16

3月15日に2号機で原子炉格納容器圧力抑制プールが損傷して大量に放出された放射性物質が、その日のうちに長野市の上空に到達し、遅くとも1週間程度で土壌に移行

3月15日、福島第1原発2号機損傷の放射性物質 当日、長野に飛来
09月16日(金)





 東京電力福島第1原発事故で、3月15日に2号機で原子炉格納容器圧力抑制プールが損傷して大量に放出された放射性物質が、その日のうちに長野市の上空に到達し、遅くとも1週間程度で土壌に移行したことが、信大教育学部(長野市)の村松久和教授(核・放射化学)の研究室による観測、分析で分かった。原発事故後の放射性物質の動きがあらためて確認された。

 村松教授は福島原発1号機で水素爆発があった3月12日から、長野市西長野の同学部敷地内で大気浮遊微粒子(エアロゾール)の観測を開始した。14日にも水素爆発があったが、同日まで放射性物質は不検出で、2号機の原子炉格納容器圧力抑制プール損傷があった15日に初めて放射性ヨウ素を1立方メートル当たり16ミリベクレル検出した。

 15日に降った雨も調べたところ、放射性ヨウ素を1リットル当たり2865ベクレル、放射性セシウムを同259ベクレル検出。その後も大気中と雨から検出が続いた。

 さらに23日に同学部のグラウンドの土壌を検査した結果、放射性ヨウ素を1キロ当たり477ベクレル、放射性セシウムを同646ベクレル検出。28日には半減期が8日と短い放射性ヨウ素は同392ベクレルに減ったものの、放射性セシウムは同916ベクレルに濃度が上昇した。

 一方、福島第1原発周辺の放射線量の公表されているデータを調べたところ、1、3号機爆発時の放射性物質の放出量はそれほど多くなかった。が、2号機の原子炉格納容器圧力抑制プールの損傷時には外部に大量の放射性物質が放出されており、その日のうちに長野市に到達したと結論づけた。

 原発事故から1カ月ほどで大気中の放射性物質は大幅に減り、2カ月半近く過ぎると、雨水に含まれる放射性セシウムも1リットル当たり1ベクレルを下回るようになったという。最近は検出されない日もあり、検出されても微量という。

 村松教授は「今後は原発事故の影響がどのくらい残っているか、土壌検査を継続的に行っていく必要がある」としている。

 研究成果は、20日から22日まで長野市若里市民文化ホールで開く日本放射化学会年会・放射化学討論会で公表する。21日午前10時から一般向けの特別シンポジウム(無料)も開催。福島原発事故の経緯と現状、放射性物質の飲食物への影響、内部被ばくについて専門家の講演がある。