7月30日 9時19分
昭和59年から翌年にかけて食品会社が次々と脅迫され、現金を要求された「グリコ森永事件」。27年たった今、明らかになった新事実です。現金受け渡しの際に、「キツネ目の男」と呼ばれた犯人グループの1人とみられる男を、大阪府警と滋賀県警の捜査員が相次いで目撃していましたが、情報が共有されず、逮捕につなげられなかったことが当時の捜査員の証言で明らかになりました。事件が未解決になった背景に、警察どうしの連携の不備があったことが改めて浮かび上がりました。
グリコ森永事件は、昭和59年から60年にかけて「かい人21面相」と名乗るグループが江崎グリコや森永製菓などの食品会社に脅迫状を次々と送りつけたうえ、青酸ソーダの入った菓子をスーパーの店頭などにばらまいて多額の現金を要求したもので、11年前に時効が成立しました。
一連の事件では、「キツネ目の男」と呼ばれた犯人グループの1人とみられる人物を、大阪府警の捜査員が現金受け渡しの現場で2度目撃し、似顔絵が公開されました。
このうち、昭和59年11月にハウス食品が現金1億円を要求された事件では、犯人グループの指示を受けて、現金を積んだ車が高速道路上を移動するという緊迫の場面がありました。
このときの対応について、警察は「大阪府警が単独で捜査にあたる」とあらかじめ決めていましたが、NHKが入手した内部資料によりますと、滋賀県警も不測の事態に備えて極秘に捜査員を配置していたことが分かりました。さらに、捜査員の1人が名神高速道路の大津サービスエリアで、「キツネ目の男」を目撃していたことを初めて証言しました。
元捜査員によりますと、「キツネ目の男」は当初、サービスエリアのレストランで窓越しに駐車場の様子をうかがっていて、レストランを出たあとは、尾行を警戒するようなそぶりを見せていたほか、ベンチの裏側にメモを貼り付けるような不審な行動もとっていたということです。
しかし、極秘の捜査体制だったため、滋賀県警の幹部の判断で、この目撃情報は大阪府警に伝えられず、「キツネ目の男」はその後、大阪府警の捜査員の尾行もかわして逃走していました。犯人逮捕の事実上、最後のチャンスを逃した大阪府警と滋賀県警。事件が未解決になった背景として、警察どうしの連携の不備が改めて浮かび上がりました。