食品中の放射性物質が健康に与える影響について協議している食品安全委員会のワーキンググループ(WG)は26日、東京都内で会合を開き、「外部被ばくと内部被ばくを合わせた生涯の累積線量が100ミリシーベルトを超えると健康への悪影響があることを踏まえてリスク管理するべきだ」との見解をまとめた。
福島第1原発事故後に策定された食品の暫定基準値は、内部被ばくの線量を年間で一定の数値以下に抑えるよう算定されている。生涯の累積線量や外部被ばくは考慮されておらず、厚生労働省は食安委の答申を受けて見直しに向けた検討を始める方針。
2011/07/26 12:20 【共同通信】
生涯累積線量、百ミリ・シーベルト未満に…答申
食品の放射性物質の影響について検討している内閣府食品安全委員会の作業部会は26日、「自然からの放射線量を除き、生涯に受ける累積線量は1人当たり100ミリ・シーベルト未満に抑えるべきだ」とする厚生労働省への答申案をまとめ、発表した。
子どもについては、甲状腺がんや白血病など、大人よりも影響を受けやすい可能性があることを指摘した。
同委員会は、国民に意見を求める「パブリックコメント」を実施したうえで、厚労省に答申する。同省は答申を基に、暫定的に設けられている食品衛生法上の規制値を見直し、正式な規制値を定める方針だが、「政府全体で生涯100ミリ・シーベルトという基準を内部被曝(ひばく)と外部被曝に振り分けるなどの作業が必要になる。すぐに食品の規制値見直しに取りかかるのは困難」としている。
(2011年7月26日12時49分 読売新聞)
食安委 生涯被ばく線量100ミリシーベルト
2011年7月26日 夕刊
食品から摂取する放射性物質による内部被ばくの健康影響を議論している内閣府・食品安全委員会の作業部会(山添康座長)は二十六日、健康に影響が出る放射線量について、外部被ばくを含め生涯の累積被ばく線量を一〇〇ミリシーベルトとする評価結果をまとめた。山添座長は「平時、緊急時を問わない評価」とした。日本で年平均一・五ミリシーベルトとされる自然被ばくや、医療被ばくは別としている。
一〇〇ミリシーベルト未満については「現在の知見では言及できない」とした。子どもは「成人より影響を受けやすい可能性がある」とし、規制の値に留意する必要性を指摘した。厚生労働省は近く同委から答申を受け、あらためて検討することになる。
同部会は放射性ヨウ素やセシウムなど物質ごとの内部被ばくの健康影響について、規制値の基となった国際放射線防護委員会(ICRP)の論文など、国際的な文献をもとに議論してきた。
しかし、「低線量被ばくの影響に関する知見は極めて少なく評価できない」とし、外部被ばくを含む疫学データを用いて健康影響を検討し、今回の評価結果をとりまとめた。
同部会は「一〇〇ミリシーベルト」の根拠として、甲状腺にたまりやすいヨウ素は一〇〇ミリシーベルトを超えると健康に影響が出るとする報告があることや、広島、長崎県の被爆者の疫学データを挙げた。小児については、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で、甲状腺がんや白血病のリスクが増加したとの文献があることに触れた。
暫定規制値は、ヨウ素が年間二ミリシーベルト、セシウムが年間五ミリシーベルトなど物質ごとに上限を設定。食品全体では年間計一七ミリシーベルトで設定されている。
2011年7月22日1時25分
「生涯被曝100ミリ基準」 食品安全委の事務局案
放射性物質が人体に与える影響を検討していた食品安全委員会の作業部会で21日、「発がん影響が明らかになるのは、生涯の累積線量で100ミリシーベルト以上」とする事務局案が示された。食品だけでなく、外部環境からの被曝(ひばく)を含む。平時から浴びている自然由来の放射線量は除いた。この案を軸に来週にも最終結論を出し、厚生労働省に答申する。ただ厚労省からは「基準づくりは難航しそうだ」と、戸惑いの声があがっている。
東京電力福島第一原発事故を受け、厚労省は3月17日に食品衛生法に基づき、放射性物質に汚染された食品の流通を規制する暫定基準を設定。この基準の科学的根拠を得るため、食品からの被曝による健康影響評価を同委に諮問していた。
同委は当初、食品だけからの被曝レベルを検討。国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の元になった論文を含め、様々な国際的な研究を精査した。だが食品とその他の被曝を分けて論じた論文は少なく、「健康影響を内部と外部の被曝に分けては示せない」と判断。外部被曝も含め、生涯受ける放射線の総量を示す方向を打ち出した。宇宙からの放射線など平時から浴びている自然放射線量(日本で平均、年間約1.5ミリシーベルト)は除く。
生涯の累積線量を目安に考えるということは、例えば、緊急時に一時的に20ミリシーベルトを浴びたら、残りの生涯で被曝を80ミリシーベルト以下に抑えるのが望ましいとするものだ。
また、子どもや胎児については成人より影響を受けやすいという研究があり、事務局案では「留意が必要」としている。