福島第1原発事故で放出された放射能の影響で、避難区域などには指定されていない福島県伊達市の一部で自主避難の準備が始まった。1年間の積算被ばく線量が20ミリシーベルト以上に達すると推定されているためだ。市は市営住宅の無料提供など、避難を希望する住民への独自支援に乗り出した。南隣の飯舘村などに続いて伊達市でも6月中旬、子育て世代の家族を中心に避難が始まりそうだ。
◎16世帯52人が希望
「放射線を浴びると何が危ないのか、どうなるのか教えてほしい」
伊達市の霊山子どもの村児童館で5日、国が開いた放射線の説明会。避難せず、自宅に残ると決めた住民から質問が飛んだ。市が住民支援を決めた霊山町石田地区では、避難するかどうかにかかわらず、住民の不安が高まっている。
石田地区は計画的避難区域となった飯舘村に隣接し、44世帯153人が暮らす。市の調査では16世帯52人が避難を希望。うち乳幼児は10人、中学生が2人、高校生は1人。子どもとその親の若い世代が目立つ。
2歳と3歳の男の子を持つ大槻真由美さん(39)は市の調査に「避難希望」と回答した一人。「山菜や野菜などを近所からもらうことも多く(摂取による)内部被ばくを管理しきれない。子どもを守れないのなら避難しかないのかも」と言う。
大槻さんは夫とその両親、子どもの6人家族。両親は現在の家に残る。3世代同居は近く終わることになりそうだ。
◎地区高齢化の懸念
不安は中高年世代にも広がる。夫と2人暮らしの阿部トシ子さん(62)は避難後の盗難などが心配で、自宅に残ることを決めた。だが「同年代の人に避難の動きが出てくれば、どうするか。取り残されるかもと思うと怖い」とつぶやく。
自宅が被災していない場合は本来、仮設住宅などへの入居はできない。市は4月の文部科学省推計で、石田地区が年間積算線量20ミリシーベルト以上となったのを受け、住民支援策を打ち出した。
市の佐藤孝之市民生活部長は「小さな子どもたちに対する親の不安を取り除くための支援」と説明。6月3日発表の文科省推計で、年間積算線量が20ミリシーベルトを超えた霊山町上小国地区への支援も検討している。
佐藤部長は住民支援は「原発事故が収束するまでの一時的な措置」と位置付ける。だが子どもの被ばくへの親の不安が消えなければ、避難の長期化とともに高齢化の加速も懸念される状態だ。
国と福島県は11、12の両日、霊山町内の約600カ所で放射線量を調べる予定。汚染の広がりが明らかになれば、市内の自主避難の動きはさらに広がりそうだ。(菊地奈保子)
2011年06月06日月曜日
2011/06/06
福島県伊達市の一部でも子育て世代が自主避難の準備
子育て世帯、自主避難へ 避難区域に隣接の伊達市霊山町