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2011/06/14

「投資家にとって、もし浜岡再開ができなかった場合、配当にどう影響するのかが最大の関心事だろう。国のエネルギー戦略が見通せない中、一転して“読めない株”になってしまった」

【浜岡原発停止】中電、株主の理解焦点 全面停止から1カ月
2011年6月14日
 中部電力浜岡原発の全面運転停止から14日で1カ月。停止の判断、安定供給に向けた休止火力の立ち上げ、資金面での手当てと、中電には重い経営課題が次々と突きつけられている。28日に迫った株主総会でも、浜岡原発の再開をめぐる議論が大きな焦点となるのは確実だ。

 「公的事業を営む私どもにとって、今回の要請は事実上、命令と同義。株主の皆さんには(浜岡原発が停止する)2~3年は無理をお願いするが、再開の確約を得ており、長期的には安心を得て利益につながるとご理解いただきたい」。中電の水野明久社長は先月23日の記者会見で、株主に向けたメッセージを披露した。

 電力株は安定性や配当を重視する投資家から、長期保有の対象として人気を集めてきた。しかし3月の東日本大震災と福島第1原発事故で状況は一変。原発を保有する潜在的リスクが表面化した。



 浜岡原発停止の判断について、企業のリスク管理に詳しい名城大コンプライアンス研究センター長の郷原信郎弁護士は「短期間で重大な決定を求められる厳しい状況だったが、安定供給や将来の企業価値をトータルで考えると中電の判断は適切だった」と評価する。

 ただ原発への信頼が大きく揺らいだ状況下で、水野社長が「政府の確約を得た」という2~3年後の浜岡再開が可能なのか、投資家が厳しい目を向けているのは事実。その懸念は中電自体の経営にも直結する。

 浜岡原発の停止で火力発電を増やすため、発電コストは年間2500億円程度増える見込み。しかし中電は1株当たりの年間配当60円は継続するとともに、原発停止を理由にした電気料金の値上げはしない方針。内部留保を吐き出して、この2~3年を乗り切る考えを示している。

 東海東京調査センターの加藤守シニアアナリストは「投資家にとって、もし浜岡再開ができなかった場合、配当にどう影響するのかが最大の関心事だろう。国のエネルギー戦略が見通せない中、一転して“読めない株”になってしまった」と話す。

 総会では93人の株主が、原発からの撤退を求める定款変更を議案として提出。これに対し、中電は取締役会の意見として「原発は安全の確保と地域の信頼を最優先に推進する」と反対を表明している。

 “脱原発”の社会的なうねりも大きい中で、今後の経営戦略をどう描いていくのか。株主との質疑では、浜岡原発再開の可否を含め、厳しいやりとりが繰り広げられることになりそうだ。

 (斉場保伸、大森準)



【メモ】 株主総会の招集通知によると、中部電力の株主は3月末時点で34万3452人。大株主には日本マスタートラスト信託銀行や明治安田生命保険、日本生命保険などの機関投資家や自社株投資会などが名前を連ねる。市場関係者によると「年金基金の運用を目的とした投資先にもなっている。ここ数年は個人株主が増える傾向にあった」という。