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2011/05/25

福島第一原発3号機、ECCS(緊急炉心冷却装置)が地震で破損していた可能性がある

福島3号機、地震で配管破損か 1、2号は格納容器に穴





 東京電力福島第1原発3号機で、緊急時に原子炉を冷却するシステムの配管が地震で破損していた可能性があることが東電の解析結果から25日、明らかになった。1、2号機では原子炉格納容器に7~10センチ相当の穴が開くなどの破損があり、高濃度の汚染水が漏れ出た可能性の高いことも判明した。

 地震の影響について東電は同日午前「配管に漏れがあるという(前提で)解析をすると実際に合う。可能性は否定できない」とした。3号機では、一部で耐震指針の想定(基準値)を超える揺れを検出。地震で重要な配管が傷んだとすれば、全国の原発の耐震設計の見直しにも影響する事態となる。

 同原発では1号機でも3月11日の地震発生当夜に原子炉建屋内で極めて高い放射線量が計測され、揺れによる機器や配管の破損が疑われた。東電はこれまで、津波の到達まで主蒸気配管の破断など重大な損傷はなかったとの見解を示していた。

 3号機で破損が疑われるのは原子炉の水位を保つための緊急炉心冷却システム(ECCS)の一つ「高圧注水系」。原子炉から出る蒸気の圧力を利用してポンプを動かし、原子炉に注水する仕組みで、配管は安全上最も重要な設備に区分され、津波の被害を直接受けない建屋の中にある。

 3号機では、3月12日午後0時半ごろ起動されたが、その直後から圧力容器と格納容器の圧力が低下。配管から蒸気が漏れた可能性が高い。東電によると、計器の異常の可能性も残るが、配管から蒸気が漏れると仮定して解析すると、実際の圧力変化とおおむね一致するという。

 一方、1号機では、地震から18時間後に直径約3センチ相当の穴が開き蒸気の漏れが発生、50時間後に約7センチに広がったと想定。2号機でも、地震から21時間後に高温などにより約10センチ相当の穴が開いたと想定すると、実際のデータによく合うことが確かめられた。気密を保つ部品が高温で壊れた可能性があるという。

2011/05/25 13:12 【共同通信】







3号機 重要配管損傷の可能性
5月25日 19時29分
東京電力福島第一原子力発電所3号機で、事故直後の原子炉の状態を解析した結果、緊急時に原子炉の水位を保つ非常用の冷却装置の配管が損傷した可能性があることが分かりました。東京電力は、今のところ地震で重要な配管が損傷した形跡はないとしていますが、地震が引き金となって破損した可能性がないか、徹底した検証が求められます。

福島第一原発3号機では、3月13日に冷却機能をすべて失ったあと、翌14日までに燃料の大半が溶け落ちるメルトダウンが起きたと考えられることが、東京電力の解析で明らかになっています。この解析は、地震のあとに実際に計測された圧力や温度などのデータを基に行われ、この中で、緊急時に原子炉の水位を保つ「高圧注水系」と呼ばれる非常用の冷却装置の配管が損傷していた可能性があることが分かりました。

具体的には、地震翌日の12日正午すぎに「高圧注水系」が自動的に動き出したあと、原子炉の圧力が75気圧ほどから、6時間で10気圧ほどまで急激に低下しています。このため東京電力は何らかの異常があった可能性があるとみて、「高圧注水系」の配管が損傷していたと仮定して解析すると、圧力の変化が実際の測定値とほぼ一致したということです。

この配管は、安全上最も重要な設備に分類され、本来破損が起きてはならない配管の1つです。東京電力は、地震で重要な配管が損傷した形跡はないとしていますが、地震が引き金となって破損した可能性がないか、徹底した検証が求められます。

これについて経済産業省原子力安全・保安院の西山審議官は、「実際に蒸気の漏えいは確認された事実はないが、圧力の低下の要因はポンプからの漏えいの可能性もあり、解析して明らかにする必要がある」と話しています。

 








2011年5月26日(木)「しんぶん赤旗」


解説
福島第1原発事故解析
耐震設計問われる事態か
 
これまで東電は、福島第1原発事故原因について“想定を超える津波”を理由にしてきました。今回の解析結果からは、原子炉が冷却できなくなった原因として、地震の揺れそのもので冷却装置が破損していたことも、疑われる事態となっています。

 ECCS(緊急炉心冷却装置)は、緊急時に炉心を冷却するための“最後の綱”ともいうべき存在で、国の耐震設計指針では安全上最も重要な施設と位置づけられています。

 今回の地震で3号機は、想定した基準地震動を約15%上回る揺れも観測されており、想定の甘さが問題になっています。それにくわえて、想定を少し上回る程度の揺れで最も重要な施設が壊れるようであれば、耐震設計のあり方の抜本的な見直しが必要です。 (中村秀生)



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 高圧注水系 
原子炉水位が異常に低下したときに、原子炉内に水を補給する装置。原子炉で発生した蒸気でタービンを回すことで駆動しますが、弁の開閉には電源を使います。