2011年5月16日13時54分
東日本大震災で被災した東京電力福島第一原発で、3号機の圧力容器の温度が上昇、4月下旬以降、不安定な状況が続いている。東電は12日に新たな場所からの注水を開始、量も増やした。また、3号機では水素爆発を防ぐ窒素ガス注入が遅れている。東電は15日、核反応を抑えるホウ酸を混ぜた水を注入する作業を3号機で始めた。
東電は圧力容器の温度上昇について、注水用の配管から水が漏れている可能性があるとみて、別の経路で注入を始めた。圧力容器上部の胴フランジと呼ばれる部分では15日午前8時現在で297.5度まで上昇したが、16日午前5時は269度まで下がった。
やや下の給水ノズルの部分は15日午前5時に139.8度だったのが、一時157.7度まで上がり、16日午前5時は141.3度。東電は「上昇傾向はおさまって徐々に低下している」としながらも、今後の推移を注意深く見ることにしている。
窒素注入は、1号機で4月7日から始まったが、2、3号機はともに注入口が津波で損傷しており、現在も注入方法を検討中だ。
ホウ酸水の注入は、原子炉内で核反応が連鎖的に起こる臨界を防ぐ効果がある。臨界のおそれは高くないというが、以前入れた分が、その後も続いた注水によって薄まっているとみられ、念のため足すことにしたという。1、2号機でも実施の準備を進めている。
以前に注入した海水に含まれていた塩分にも臨界を防ぐ効果があるが、すでに淡水に切り替わっている。
原発の燃料には低濃縮のウランが使われ、事故後の溶融で圧力容器下部にたまっているとみられる。臨界には燃料と燃料の間に一定の距離が必要で、東電は臨界にはなりにくい状態とみている。
また、東電は3号機のタービン建屋の放射能汚染水の移送を17日から始める計画を明らかにした。
1号機の圧力容器は、注水量を増やした結果、15日深夜から各温度計とも100度を切る状態が続いている。(佐々木英輔)