福島原発「ベント」周知せず着手 作業員、被ばくの危険に
東京電力福島第1原発事故の際、1号機の原子炉格納容器の弁を開けて放射性物質を含む蒸気を排出した緊急措置「ベント」が、敷地内で働く一部の作業員に知らされないまま始まり進められていたことが1日分かった。現場にいた東電社員が共同通信に証言した。
ベントは格納容器の内圧を低下させて破損を防ぐことなどが目的だが、周辺の放射線量を一時的に急上昇させることが確実で、作業員らは最も重要な情報を与えられないまま、大量被ばくの危険にさらされていた。
現場の線量管理をめぐっては、東電の女性社員2人が国の線量限度を超え被ばくしていたことも相次いで判明、ずさんさが明らかになっている。
最初のベント着手は3月12日午前9時ごろ。当時、放射性物質の漏えいにより敷地内の線量は既に上昇を始めていたが、証言によると、ベントに着手する方針や着手の時期、作業の進行状況などについて、これ以前も以後も、この社員や同僚には一切の情報が伝えられていなかった。
情報は免震重要棟2階の対策本部や、中央制御室でベントに当たった要員に限定されていたとみられ、実施の事実さえ「うわさ」として事後に別の社員から知らされただけだったという。
政府や東電が明らかにした経過によると、格納容器内の圧力の異常上昇は12日未明に判明。政府は午前3時ごろベント実施を発表して東電との協議に入り、事態が深刻な1号機で午前9時すぎ、二つの弁のうち、最初の弁の開放作業が始まった。
二つ目の弁の開放着手は午前10時すぎだったが、実際に蒸気の排出が確認されたのは午後2時すぎ。データによると、午後2時20分の線量は通常の約180倍で、午後2時の線量から2倍以上に跳ね上がっていた。
一方、正門での東電のモニタリングによると、線量は午前4時40分の計測で初めて上昇し、約2時間後には通常の70倍以上に。線量の急上昇に気付いた作業員が建物に避難する騒ぎも起こっていた。
ベントをめぐっては、決定から実施まで時間がかかり、事態が深刻化したとして国と東電が批判を浴びた。東電は「当時の詳細な状況は確認中で、今後整理された段階で説明させていただきたい」としている。
2011/05/01 19:34 【共同通信】