政府、住民に呼びかけ
2011/4/11 19:59
政府は11日、東京電力福島第1原子力発電所から半径20キロメートル以上で、積算の放射線量が高い地域を「計画的避難区域」に設定することを決めた。1カ月後までに住民に避難を求める。原発事故で生じた経済的被害への賠償問題などの担当相に海江田万里経済産業相を任命した。
福島第1原発の事故を受けた避難区域の見直しでは、事故発生から1年内に積算ベースで放射線量が20ミリシーベルトに達する恐れのある地域を新たに計画的避難区域とした。国際原子力機関(IAEA)など国際機関の基準値を考慮した。
対象となるのは福島県の葛尾村、浪江町、飯舘村と、川俣町の一部、南相馬市の一部。従来は半径20キロメートル圏内のみを避難区域としていた。避難の具体的な時期や方法、詳しい地域は政府と各自治体が協議して決める。
避難は地域の実情に合わせて段階的に実施。1カ月後をめどに全地域で避難を終わらせたい考え。枝野幸男官房長官は「今の段階で行動せず(政府や自治体の)指示を待ってほしい」と対象住民に呼びかけた。計画的避難区域は、避難指示や屋内退避と同様、強制力はない。
原発から20~30キロメートル圏内にあり、計画的避難区域にはならなかった地域は「緊急時避難準備区域」に設定した。原発事故が悪化した場合に備え、常に屋内退避や避難が可能な準備をすることが必要となる。枝野長官は子どもや妊婦、要介護者、入院患者は同区域に入らないよう要請したほか、引き続き自主的避難も促した。
今回の原発事故で生じる経済被害に対処するため全閣僚でつくる「経済被害対応本部」を設置する。本部長に「原子力経済被害担当相」として海江田氏を充てた。東電の損害賠償や被災者への支援などを検討する。
これに関連し政府は11日、原子力損害賠償法(原賠法)に基づく「原子力損害賠償紛争審査会」を文部科学省に設置することも決定した。損害賠償の金額や対象範囲についての指針を策定する。
一連の対策は11日、持ち回りの閣議で決定し、枝野長官が記者会見で発表した。菅直人首相は11日夕に記者会見する予定だったが、同日、福島県や茨城県を中心に起きた強い地震に対応するため、12日に延期した。