東京電力の勝俣恒久会長は17日、福島第一原子力発電所の事故収束に向けた工程表を初めて発表した。
原子炉の本格的な冷却システムを復旧させ、放射性物質の放出を大幅に低減して安定した状態を取り戻すまでの期間を6~9か月と設定した。発表を受けて海江田経済産業相は同日、周辺住民の避難生活の長期化は避けられないとの見通しを示した。
工程表では、放射線量を着実に減らす「ステップ1」と、放射線量をさらに大幅に抑える「ステップ2」の2期に分けた。「1」は今から約3か月後、「2」は6~9か月後の完了を目指す。当面は、発生した水素が激しく反応する「水素爆発」を避けることと、放射性物質を高濃度に含んだ汚染水を敷地外に出さないことに重点的に取り組む。
(2011年4月18日01時20分 読売新聞)
福島原発、6~9カ月で冷温停止 2号機は密閉
東電が事故収束工程表
2011/4/17
東京電力は17日、福島第1原子力発電所の事故収束に向けた作業を2段階で実施する工程表を発表した。6~9カ月後をメドに、原子炉を100度未満の安定した状態に保つ「冷温停止」にすることが柱。原子炉格納容器の大半を冷却水で満たす新たな対策も打ち出した。ただ原発の損傷度合いによっては作業が遅れる可能性もあり、目標の達成は予断を許さない。
東京電力は17日、福島第1原子力発電所の事故収束に向けた作業を2段階で実施する工程表を発表した。6~9カ月後をメドに、原子炉を100度未満の安定した状態に保つ「冷温停止」にすることが柱。原子炉格納容器の大半を冷却水で満たす新たな対策も打ち出した。ただ原発の損傷度合いによっては作業が遅れる可能性もあり、目標の達成は予断を許さない。
福島第1原発の1~4号機周辺は、放射性物質の飛散や汚染水の漏れが続き、復旧作業を困難にしている。こうした事態を早期に食い止めることが工程表実現のカギを握る。都内で記者会見した勝俣恒久会長は「収束についてはかなり成功すると思っている。100%絶対というものはないが、目標は何とか達成したい」と述べた。
冷却への具体策として、原子炉格納容器を水で満たす「水棺」を1、3号機でまず実施する。格納容器の一部である圧力抑制室が破損している2号機については、破損部分を特殊セメントで密閉したうえで、同様の措置をとる。併せて熱交換器を設置するなどして、より安定した冷却機能の回復を目指す。
1号機で実施している格納容器への窒素封入については2、3号機にも拡大し、水素爆発の危険を避ける。第2段階では放射性物質の放出を防ぐため、原子炉の建屋に換気やフィルター設備を備えたカバーを設置する。
コンクリートを使って本格的に建屋全体を覆うことや、燃料棒の取り出し、汚染水の処理施設や汚染土壌の洗浄などについては中期的な課題に掲げたが、具体的な時期は示さなかった。
今回打ち出した対策の費用について勝俣会長は「金融機関から2兆円強の資金を確保しており、それをベースに賄いたい」と述べた。避難住民らへの損害賠償もあり、東電の資金負担はさらに膨らむ可能性がある。
政府は福島第1原発の半径20キロメートル圏内を「避難区域」、同20~30キロ圏内を「屋内退避区域」に指定しており、東電は工程表実現に大きな責任を負う。勝俣会長は避難住民の帰宅の可否については言及を避け、「放射性物質の放出を低減することが当社の役割」と強調。「具体的な時期は政府が判断することで、そのためにできるかぎりデータを提供する」と語った。
工程表で示した目標と課題
原発事故収束へ向けた東電の工程表