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2011/04/27

今回のアクションは、1月の格下げ後も抜本的な政策が打ち出されない政治に対する警鐘との意味合いもあるのだろう。

S&P、日本国債格付け見通し下げ 震災復興が財政負担に
2011/4/27 12:35
 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は27日、日本国債の格付け見通しを現行の「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更したと発表した。東日本大震災の復旧・復興費用が20兆~50兆円程度に膨らむ結果、財政赤字が拡大すると予想。財政再建策が打ち出されない場合は、格下げの可能性があるとしている。

 格付けは上から4番目の「ダブルAマイナス」に据え置いた。東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて日本の財政見通しを下方修正、同時に格付け見通しを変更した。増税などの措置が取られなければ、国と地方をあわせた一般政府の債務残高は国内総生産(GDP)比で2013年度に145%と、従来予想の137%から悪化するとみている。


 S&Pは今後の見通しについては「政府のリーダーシップと財政再建策に関する政治的コンセンサスに大きく左右される」と指摘。「今後2年間に財政が現在の見通し以上に悪化した場合は、格下げとなる可能性がある」とした。

 日本国債の格付けをめぐっては、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが2月に見通しを安定的からネガティブに変更している。

 S&Pの格付け見通し変更について、野田佳彦財務相は27日、記者団に対して「復興・復旧と財政健全化を両立させるのが大事だ」と語った。また枝野幸男官房長官は27日午前の記者会見で「震災、原発事故の影響で財政措置も含めた様々な対応が必要となっているが、日本国債の信認を維持しながら進めていく」と述べた。





日本のアウトルック「ネガティブ」に変更:識者はこうみる
2011年 04月 27日 13:01 JST
 [東京 27日 ロイター] スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は27日、日本の長期ソブリン格付けのアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。長期ソブリン格付け「AA─」と短期ソブリン格付け「A─1+」はそれぞれ据え置いた。
 市場関係者のコメントは以下の通り。

●為替への影響は一時的、ドル安地合いも上値抑える

 <バークレイズ銀行 チーフFXストラテジスト 山本雅文氏>

 為替相場への影響は一時的にとどまるだろう。過去のCDSスプレッドとドル/円相場の関係を見ても、スプレッド拡大と円高が一緒に起きており、海外投資家の日本のソブリンに対する懸念というのは、必ずしも持続的な円安に結びつかない。海外投資家が5%しか日本国債を保有していないので、どんなに頑張って売っても限界がある。為替への影響は、日本の経常黒字が維持される限りは大きく出てこない。

 全体的なドル安傾向もあって、ドル/円は上値を抑えられる。財政問題は日本がフロントランナーではあるが、米国も懸念を抱えており、日本が突出して悪いわけではない。


●財政再建促す意図あるのでは

 <大和証券 投資情報部次長 西村由美氏>

 アウトルックは「ネガティブ」に変更されたが、格付けは変更しておらず、若干円安に進んだことで日本株への影響は相殺されている。震災の影響で財政赤字の拡大は避けられず国と地方の債務もさらに増加することが予想されるが、ここ1─2年で日本国債が暴落するようなことは想定されていない。米国債の格付け見通しが「ネガティブ」に引き下げられたときと同じく、スタンダード&プアーズ(S&P)としては財政再建を促す意図があるのではないか。


●円安進行も材料視されず、FOMC待ち続く

 <岡三証券 日本株情報グループ長 石黒英之氏>

 スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本の長期ソブリン格付けのアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。ただ2月のムーディーズによるアウトルック引き下げに続くもので日本株への影響は限定的とみている。外為市場で為替がやや円安に振れているが、円安進行は一時的とみており特段材料視はされないだろう。市場関係者は今晩のFOMC(米連邦公開市場委員会)に注目している。前場の日経平均は先物主導で9700円水準まで回復したが、商いは少なく後場は同水準でもみ合うとみている。


●円債市場への影響はない

 <ドイツ証券 チーフ金利ストラテジスト 山下周氏>

 スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本の長期ソブリン格付けのアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。円債市場への影響はないと思われる。S&Pが変更理由にしていることは、新しく発見することではなく、すでに分かっていることでマーケットにはサプライズではない。

 ただ、復興税の話が、今後、「格下げ」になるかどうかのポイントになると思われる。この点では格付け機関が見ているポイントと、日本国債の市場参加者が見ているポイントと一致してくるとみている。


●統一地方選で復興財源としての増税一段と不透明に
 <伊藤忠商事チーフエコノミスト、中島精也氏>

 日本の財政については、積み上がった政府債務に加えて復興財源が新たな課題になっており、消費税引き上げへの道筋をつけられるかがポイントだ。ただ、議論は紛糾している。統一地方選を経て民主党の退潮が明らかになり、政局も不透明になったことで、ますます税への道筋がみえにくくなっている。復興財源を増税でまかなうというという方針で政治がまとまっていれば、格付け見通しの引き下げはなかったのではないか。

 日米欧が財政悪化に苦しむ中、S&Pは米国の格付け見通しも引き下げており、バランスのうえから日本の格付け見通し引き下げはしかたのないところか。OECDが対日審査で日本の財政の悪さに懸念を示したタイミングでもある。

 ただ、円へのインパクトは限定的だ。日本国債は現在のところ国内で消化できてしまうためで、海外勢は円の売り仕掛けに飽きている。


●政治への警鐘、震災で財政に危機感

 <ニッセイ基礎研究所・上席主任研究員 徳島勝幸氏>

 S&Pは1月に日本の長期ソブリン格付けをAA─に引き下げた後、アウトルックを「安定的」にしていた。3月11日に発生した東日本大震災に伴う歳出拡大圧力、東京電力の原発事故に伴う補償問題、社会保障の一体改革のとりまとめなどの課題を抱える中で、日本財政に対して危機感を持つS&Pがアウトルックを変更してきたことは予想通りだ。統一地方選の結果が判明したタイミングを待って発表してきたのだろう。

 現政権が財政赤字を明確に減らす方向に政策の舵(かじ)を切らない限り、格下げ圧力が続くことになるだろう。今回のアクションは、1月の格下げ後も抜本的な政策が打ち出されない政治に対する警鐘との意味合いもあるのだろう。S&Pと同じロジックで、他の格付け機関が格下げ方向に動く場合には、マーケットに大きな影響が出る可能性も否定できない。