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2011/03/17

スマトラ沖地震のGPSデータは「かなり良い」、チリ地震のデータは「さらにずっと良い」ものだった。そして東日本大地震のデータは、機器の位置と種類から「信じられないほど良質」なのだという。

地震で地殻大変動、地球の自転速まる…NASA
【ワシントン=山田哲朗】東日本巨大地震の発生で、地球が1回の自転に要する時間が、1000万分の16秒だけ短くなったとみられることがわかった。米航空宇宙局(NASA)のリチャード・グロス博士(地球物理学)が計算した。

 大地震で地殻が大きく動くと、地軸がわずかにずれる。コマの形が変わると回転が変化するように、地震で地球の自転が影響を受け、回転が速まったと考えられる。

(2011年3月12日10時13分 読売新聞)





大地震で1日が短縮、軸の振動も変化
Josie Garthwaite
for National Geographic News
March 17, 2011

 専門家によると、2011年3月11日に日本を襲ったマグニチュード9.0の地震によって、地球は1日が1.8マイクロ秒短くなり、軸の振動が17センチ大きくなったという。


 地震の衝撃によって自転の回転軸である南北の軸線が動いたという話ではない。南北の軸線から約10メートルずれた位置にある「形状軸」という質量バランスの仮想線が地震で移動したのだ。

 地球の自転には普段から微小な振動がある。氷河の溶解や海流の移動など、表面の物質移動によってバランスが動くためだ。

 高精度のGPS機器から得られたデータによると、今回の地震でプレートの断層が動き、日本は一部で4メートルも移動したという。このデータを基に、地球全体の質量分布の変化と、振動への影響が計算されている。

 カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)の地球物理学者リチャード・グロス氏によると、質量の移動は自転の速度にも影響したという。グロス氏はこれをフィギュアスケートのスピンに例えて説明する。腕を胴体にしっかり巻き付けると、スピンのスピードが速くなる。

 地球は巨大なため影響は小さい。1マイクロ秒は1秒の100万分の1であり、ほとんどの人にとって「実際の影響はない」とグロス氏は話す。

 しかし研究者にはそれ以上の関心がある。地球の振動の変化は、将来的の宇宙ミッションに影響する可能性がある。また大きな地震に至るまでの小さな地震に関するデータは、地震予知に役立つかもしれない。

 地球の質量分布の変化については、2004年のスマトラ沖地震や2010年のチリ地震で得られたGPSのデータでも計算されている。スマトラ沖地震では、1日の時間の変化が6.8マイクロ秒と今回より大きかった。

 ただ、今回の東日本大地震では、震動の変化がスマトラ沖地震やチリ地震で算定されたものの2倍以上あった。

 これは興味深いことだとグロス氏は言う。地球の傾きの微小な変化に目を向けることで、計算ではなく、実際に測定できるかもしれない振動の規模なのだという。

 とはいえ、質量分布を変化させる要因は大気や水などほかにもあるため、震動のランダムな変化に地震の影響が隠れる可能性はある。

 東日本大地震に関するGPSデータは、もっと興味深いことに活用できるとする地球物理学者もいる。

 例えば、アメリカ地質調査所(USGS)パサデナ事務所の地球物理学ケン・ハドナット氏は、日本にあるGPS機器やひずみ計、地震計が、大きな地震に至るまでの小さな地震をいくつも記録したと話す。今後、大きな地震の前震にあたると見られる先行の地震に通常と異なる点がなかったか、専門家によるデータの精査が行なわれる。

 ハドナット氏によると、スマトラ沖地震のGPSデータは「かなり良い」、チリ地震のデータは「さらにずっと良い」ものだった。そして東日本大地震のデータは、機器の位置と種類から「信じられないほど良質」なのだという。

「適切な装置を適切な場所に置き自然現象を記録することが、科学者がなすことの大部分であり、それができればより多くのことが理解できる。前震に関連して前兆のようなものがあれば、それは一連の機器に現れるはずだ」。

 一方、NASAのグロス氏によると、震動の計算は地震予知の追求には関係しないものの、単なる好奇心でもない。地球の自転を理解することは、宇宙への打ち上げにおいて重要なのだ。

「宇宙船を操作して移動車を火星に降ろす際、目的のポイントに正確に着地させる(宇宙船を打ち上げる)ためには、地球の自転の変化を把握しておく必要がある」とグロス氏は説明している。「さもないと、火星に到達できない可能性さえある」。