2011/3/31 20:40
菅直人首相は31日、首相官邸でフランスのサルコジ大統領と会談し、5月に仏ドービルで開く主要8カ国(G8)首脳会議で福島第1原子力発電所の事故を議題にすることで一致した。大統領は国際原子力機関(IAEA)を通じて年末までに国際的な安全基準を策定する考えも示した。東日本大震災後、外国首脳が日本を訪問するのは初めて。
会談後の共同記者会見で、首相は今後のエネルギー政策について「なぜ大きな事故につながったのかの検証がまず必要だ。そのうえで原子力の利用のあり方を議論していく」と述べた。同時に「事故が収束した中で今後の電力会社のあり方や存続の可能性も含めて議論が必要だ」と、原発事故の収束に一定のメドがついた段階で、東京電力の経営形態や責任問題が焦点になるとの認識を示した。
首脳会談に先立ち、大統領は日本に在留するフランス人を対象に講演し、G20の原子力当局による緊急会合を5月に開く考えも示した。
日仏共同記者会見要旨
2011.4.1 00:58
【日仏首脳会談】
菅直人首相 私から、東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の状況を説明した。
大統領は、G8(主要国首脳会議)で原発事故を取り上げたいと提案し、私もそうしていただきたいと返事した。大統領は、5月のG20(20カ国・地域首脳会議)でも原子力の安全について話し合う会を設け、6月のIAEA(国際原子力機関)でも世界的な安全基準について協議したいと提起した。フランスの知識や機材の提供の申し出があり、今後もお願いしたいと申し上げた。
「雨の日にやってきていただける友人は本当の友人だ」と、大統領に来日への感謝を申し上げた。
サルコジ大統領 G8の冒頭に首相に発言を頂きたい。原子力に関するコミュニケを発信したい。年内に世界共通の原子力に関する安全基準を定めたい。
【エネルギー政策】
首相 今回の事故の検証を踏まえた中で、どういうエネルギー政策を推進するか、原子力の利用も含めて議論の必要がある。
大統領 われわれはCO2削減を世界の約束としている。そのためには原子力エネルギーに頼るしかない。日本に申し上げたいのは、原子力の安全の基準を高める必要があるのであって、原子力エネルギーを導入するか否かではない。
【復興対策】
首相 被災者支援から復興への道筋を描かなければならない。4月にはがれき処理などを含めた補正予算が必要だ。同時に、復興に向けて、専門的な知識を持つ皆さんの提言をいただくような委員会か会議の設置を現在検討している。
【東京電力の経営】
首相 事故が収束した後で、今後の電力会社のあり方について、存続の可能性も含め、どういった形になるのか議論が必要になろう。
“原発事故 サミット議題に”
3月31日 19時29分
菅総理大臣は、来日したフランスのサルコジ大統領と会談し、5月にフランスで行われるサミット=主要国首脳会議で、福島第一原子力発電所の事故を主要な議題としたうえで、年末までに原子力発電所に関する国際的な安全基準の策定を目指すことで一致しました。
菅総理大臣とサルコジ大統領の会談は総理大臣官邸でおよそ50分にわたって行われ、会談の終了後、両首脳はそろって記者会見しました。この中で菅総理大臣は「原子力の先進国として、フランスの持っている知識や機材の提供の申し出があり、今後とも協議をお願いしたいと申し上げた」と述べました。
また、サルコジ大統領は「菅総理大臣からは、福島の原発事故について非常に明晰な分析をいただき、明確な説明をいただいた。フランスからは、日本に対して汚染地域で活動できるロボットを提案したい。原子炉の解体や放射線の測定などの専門的な知識を持っている私たちのチームも協力していく」と述べ、両首脳は、日本と世界第2位の原発保有国であるフランスが、緊密に連携しながら福島第一原子力発電所の事故の対応に当たっていく方針を確認しました。
そのうえで両首脳は、ことし5月にフランスで行われるサミットで、福島第一原子力発電所の事故を議題とすることで一致し、サミットの冒頭、菅総理大臣が今回の事故について発言することになりました。
そして、菅総理大臣は「今回の原子力事故の経験は、日本にとって大変厳しいものだが、再発しないために、世界の国々に経験を正確に伝えるのが義務だ。そうした議論の中から、世界的な安全基準が協議されることを歓迎したい」と述べました。
これに対し、サルコジ大統領は「原発に関して国際的な安全の基準がないことが問題で、それを改善したいと思っている。年末までには、国際的な安全基準を決めていきたいという志を持っている」と述べ、年末までにIAEA=国際原子力機関などで原子力発電所に関する国際的な安全基準の策定を目指すことで一致しました。