30キロ圏外でも被曝量が非常に高い地域がある
被ばく量、30km圏外で高い地域も
福島第一原発から半径20~30キロ・メートル圏内の自治体に対し、政府が住民の自主避難を促すよう求めた背景には、原子力安全委員会が23日に公表した放射性物質の拡散予測結果がある。
「SPEEDI(スピーディ)」と呼ばれる予測システムはずっと屋外にいた場合を想定。同じ福島第一原発の30キロ・メートル圏内でも、地域によって被曝(ひばく)量が大きく異なり、30キロ・メートル圏外でも非常に高い地域があることを示した。放射性物質の広がりは地形や風向きに大きく左右される。安全委の班目(まだらめ)春樹委員長は23日の記者会見で、「スピーディの予測結果から、ある程度、放射性物質の拡散の傾向が見て取れる。同心円状に避難範囲を決めているが、そろそろきめ細かく設定し直す時期に来ている」と語った。
実際、福島県が観測した大気中の放射線量の結果から、15日から24日午後4時までずっと屋外にいた場合の被曝量を計算すると、同原発から北に約24キロ・メートル離れた南相馬市では620マイクロ・シーベルトなのに、北西約40キロ・メートルの飯舘村では4000マイクロ・シーベルトで、1年間に日本人が自然から受ける1500マイクロ・シーベルトを大きく上回る。こうした結果は、スピーディの予測とも一致する。
東京女子大の広瀬弘忠教授(災害・リスク心理学)によると、放射線量が特定の観測地点だけ高くなる現象は、チェルノブイリ原発事故の際もみられた。広瀬教授は「政府は予測結果をもっと早く公表し、避難区域の設定に生かすべきだった。避難の範囲を同心円で設定し、徐々に広げていったのは科学的な根拠に乏しい」と語る。
(2011年3月25日23時27分 読売新聞)