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2011/03/30

勝俣会長、「原子力損害賠償法はスキームがはっきりしていない法律。政府がどういう制度を制定することによるところが大きい」

投げ売り状態続く東電株 「紙くず」になる恐れあるのか
2011/3/30 19:15


東京電力株の暴落が止まらない。6日続落、しかも3日連続のストップ安となった2011年3月30日は、終値で前日比100円安の466円だった。

前日は福島第一原子力発電所のプルトニウム漏れや、一部の報道で「国有化」が伝えられたこともあって「投げ売り」状態だったが、それが続いた。東電株の500円割れは1962年12月28日以来、48年3か月ぶり。時価総額も7500億円を割り込む水準にまで落ち込んだ。


3日連続ストップ安、震災前より81.4%も下落
東電株は3月30日朝から「売り」が続き、70円安の496円で寄りついたが、さらに売られて前場でストップ安を付けた。東北関東大震災前の10日の東電株は2153円。そこから13営業日で、1687円(81.4%)も下落したことになる。3兆4600億円あった時価総額が、2兆7100億円も吹っ飛んだ計算だ。

東電株が暴落する要因は、「国有化」説が現実味を帯びてきたことだ。福島原発事故の補償問題は、避難地域が広範囲に拡大したことや周辺住民だけではなく、農家や企業の被害に対する賠償も含まれ、数兆円規模にのぼるとみられている。政府が原子力損害賠償法を適用して一部を負担する方向だが、すでに賄えない規模になっているとの指摘もある。

さらに、東電には今後の電力供給力を確保するために火力発電所の増設が必要だ。また、原子炉を廃炉とする場合にかかる解体費用や放射性廃棄物の処理費用の負担ものしかかる。

しかし、現状ではこうした賠償や「再建」のための費用を捻出する力が東電にはなく、電力事業の継続にも不安を残す。そのため、「政府による支援は避けて通れない」との見方は支配的だ。

そこに、玄葉光一郎国家戦略担当相の「東電のあり方はさまざまな議論があり得る」と、国有化をほのめかすような発言があったことで「投げ売り」に拍車がかかったようだ。


「株主や債権者の負担は回避される可能性が高い」
東電の国有化については枝野幸男官房長官が3月29日のうちにこれを否定したが、政府の支援、つまり公的資金の注入は免れないと見る向きは多い。

シティグループ証券は、東電「国有化」の4つのシナリオを示している。

シナリオ1 債務超過を前提とした一時国有化(1998年の旧日本長期信用銀行型)
シナリオ2 資産超過を前提とした実質国有化(2003年のりそな銀行型)
シナリオ3 法的整理後の一時国有化(2010年の日本航空型)
シナリオ4 ゴーイングコンサーン(会社が将来にわたって事業を継続していくことを前提に存続)

シナリオ1と3の場合は、株主責任が問われるので保有している東電株の価値がなくなる。

 東電株の持ち株比率は、政府が3.11%、銀行や生命保険などが34.13%、外国人投資家17.37%。個人株主は37.87%を占めている。震災前まで、東電株は超優良銘柄として多くの投資信託に組み込まれていたし、個人投資家も比較的「安心して」投資していた銘柄だ。しかも、高齢者が保有しているケースが少なくない。東電株の価値がゼロになる影響は、かなり大きい。

 シティグループ証券は「東電の公共性や公益性、そして代替の可能性が限定されることを踏まえれば、株主や債権者の負担は回避される可能性が高い。いまは『国有化』という言葉に過剰反応している」という。













1─4号機は廃炉不可避、経営形態は民営で努力=東電会長
2011年 03月 30日 19:55 JST

 [東京 30日 ロイター] 東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)の勝俣恒久会長は30日午後、同社本店で記者会見し、深刻な状況が続く福島第1原子力発電所1─4号機について、「客観的に考えて廃炉にせざるを得ない」と述べた。同社が廃炉は不可避との認識を示すのは初めて。
 国内最悪の原発事故を受けて同社の国有化の可能性も取りざたされているが、勝俣会長は「民営で最大限、努力したい」と語った。

 廃炉費用について勝俣会長は「試算する状況ではない」と指摘。同原発の状況について「1─6号機まで一応の安定をみることができたが、1─4号機は残留熱除去など最終冷却を実現できていない。原子炉、格納容器、燃料棒の状況を正確に把握するのは難しい。最終的な安定にはかなり時間がかかる」などと説明した。

 <損害賠償では国の援助も>

 同会長は、「放射性物質の大気や水質への拡散、農作物や飲料水への影響の拡大など大変な迷惑をかけており、心からお詫びする」と謝罪した上で、「国の支援をいただきながら原子力損害賠償制度に基づき誠意をもった賠償の準備を進めている」と述べた。

 同制度における損害賠償額は、商業原発では1200億円が上限(1事業所当たり)で、この賠償額を超える損害が発生し補償の残額を電力会社が賄いきれない場合に、国が電力会社に必要な援助を行うことが可能になっている。勝俣会長は会見で、「原子力損害賠償法はスキームがはっきりしていない法律。政府がどういう制度を制定することによるところが大きい」と指摘した。

 会見では、民間会社としての存続を目指す意向を示した勝俣会長だが、債務超過に陥る可能性については「1─4号機(の事故が)どう収束するのか、原子力損害賠償法で当社がどの程度救済されるのかなど重要な要素が未知だが、大変厳しい状況だ」と話した。手元流動性については、三井住友銀行など主力銀行から総額2兆円の融資を受けたが、勝俣会長は「LNGなど燃料費や復旧費がかかり、いくらあっても足りない状況。政府と協議しながら資金不足に陥らないよう努力したい」と述べた。

 <夏場の計画停電回避に全力>

 東電は7月末の電力供給力を4650万キロワットと見込む一方で、節電効果を織り込んで最大電力を5500万キロワットと想定している。今後の供給力の上積みは「新しいガスタービンをかき集めるとか、故障している発電所の復旧を検討しているが、最大限確保したい。いろいろな手段を通じて節電をお願いしており、何とか夏場には計画停電しないよう全力を尽くす」と強調した。 
 <清水社長の体調悪化に驚き>

 勝俣会長は、同社の清水正孝社長が昨日入院したことについて、「急に体調が悪くなったと聞いてびっくりした。それまでの心労、疲労がたまって血圧が高くなったりして医師の診断を仰いだ」と説明。同社長の復帰について勝俣会長は、「そんなにかからないで戻り、指揮を執ることができる」と述べた。

 自身を含む経営陣の責任問題については、「当面は今の事態をいかに安定させるのかが大事。そこに全力を投入することが私の最大の責務」と述べるにとどめた。

(ロイターニュース 浜田健太郎;編集 田中志保)