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2011/03/17

自衛隊ヘリからの冷却水投下作戦: 数トンの水を一気に投下した際に原子炉でどういった反応が出るかは分からず、「水蒸気爆発が起きたらどうなるのか」と心配する声もあった。

「陸自ヘリ隊員どうか無事で、そして効果を」



 爆発や火災が相次ぐ福島第一原子力発電所で17日午前、自衛隊ヘリが上空から実施した冷却水の投下は、防衛省内部からも強い懸念の声が上がる中での任務だった。

 北沢防衛相は、3号機への海水投下後の午前11時過ぎ、防衛省内で記者会見を開き、「(3号機の状態は)今日が限度だと判断し、投下を実施した」と述べた。「(冷却水は)間違いなくかかった。我々の決行したミッションが成功に帰したと今の段階では期待している」とも語った。

 出動したのは、陸自第一ヘリ団(千葉県木更津市)に所属するヘリ。乗組員は防護服と防護マスクを着用し、機内には下方からの放射線を低減するためタングステン製のシートを床に敷いた。放射線量を計測する機器も載せ、数値を確認しながら投下を実施した。

 自衛隊ヘリによる同様の作業は山火事の消火活動でも実績があるが、広い面積に水をまくのと違い、今回はピンポイントで3号機のプールに命中させなければならない。あるパイロットは「正確に投下するため速度を落とす必要があるが、危険を避けるためには速やかに現場を離れなければならない。命中はかなり難しい」と話す。

 しかも、防護服を着用しながらの操作は、動きや視野が限られるので非常に難しい。また、数トンの水を一気に投下した際に原子炉でどういった反応が出るかは分からず、「水蒸気爆発が起きたらどうなるのか」と心配する声もあった。

 「何より隊員らが無事であってほしい。危険を冒すのだから、効果が上がることを祈っている」。防衛省幹部は、投下作業の様子を流すテレビを食い入るように見ながら語った。

 17日午後にも放水を開始する警視庁の高圧放水車の活動にも様々な困難が伴う。

 政府関係者によると、当初は消防車両の出動も検討されたが、30度の角度で20~30メートルしか届かないため、同角度で80メートル先の標的を狙える警視庁の高圧放水車が選ばれた。しかし、高圧放水車は本来、デモ隊や過激派などの制圧が目的で、高所への角度をつけた放水は想定していない。距離が離れるほど水の勢いが落ち、命中率も低くなる。同庁幹部は「風向きなど天候にも左右される。難しい現場になるだろう」と言う。

 機動隊員らは数人1組で車内から放水車を操作する。自衛隊員も立ち会い、現場の放射線量などを計測しながら作業に当たる。17日正午前に記者会見した中野国家公安委員長は「放射線について安全を図りながらも、限界に挑戦する。重大な任務を達成して国民の期待に応えたい」と話した。

(2011年3月17日13時15分 読売新聞)