◇専門兵450人待機
【ワシントン古本陽荘】福島第1原発の事故への対応が難航していることを受け、米軍の情報収集活動が活発化してきた。日本側から要請があった場合の対処に備えた準備が始まったものとみられるが、同時に日本側発表の事故情報への不信感が背景にあることも浮き彫りになってきた。
米NBCテレビなどによると、北朝鮮の核実験の際に放射能を観測した空軍の大気収集機「コンスタントフェニックス」が派遣された。飛行しながら放射能データを地上に送る航空機で、米軍にも2機しかない。無人機グローバルホーク、U2偵察機、情報収集衛星などを複合的に運用し、現場の撮影も開始した。
大規模災害に備えた部隊を持つ北方軍司令部(コロラド州)からは核知識のある先遣隊9人が日本に派遣された。先遣隊の調査報告をもとに専門職種の米兵が必要に応じて派遣される見通しで、すでに450人に待機命令が出された。
これら米軍の活動は日本側との調整を経たもので「自衛隊との情報共有は極めてスムーズ」(ウィラード太平洋軍司令官)という。だが、米ウォールストリート・ジャーナル紙は「日本政府からの情報の質への懸念が米政府で急速に高まっている」と報道。ニューヨーク・タイムズ紙も「東京電力は危機を過小評価してきた」と報じ、日本側への不信感が情報収集強化につながったと指摘した。
毎日新聞 2011年3月20日 東京朝刊
2011年3月18日20時29分
原発事故対応に450人派遣準備要請 米太平洋軍司令官
【ワシントン=望月洋嗣】米太平洋軍のウィラード司令官は17日電話会見し、福島第一原子力発電所の事故で事態収拾のめどが立たないことを受け、放射能汚染に対処できる要員450人に対し、日本への派遣に備えるよう求めたと明らかにした。米軍はすでに9人の専門家を日本に派遣しているが、状況次第で支援を拡大する方針を示した。
同司令官は東日本大震災について、地震、津波、原発事故の三つが重なった特異性を指摘。原発事故をめぐる情報の混乱について「こうした複雑な事態では、正確な情報を整然と流し続けることは困難だ」と述べた。また、自衛隊と連携しての災害支援では「言葉の壁」が課題だとの認識も示した。