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2011/03/12

地震を起こしたプレートの範囲は北は三陸沖中部、南は福島県沖までの南北400キロメートル、幅200キロメートル

4つの想定震源域が連動 「地震研究の限界」
過去に事例なく、予測できず
2011/3/12 2:05



 東日本巨大地震は、宮城県から茨城県沖で予想されていた4つの大地震の想定震源域が連動して動いて巨大地震につながった。国の地震調査委員会の阿部勝征委員長(東京大学名誉教授)は12日未明、同委員会の終了後に記者会見を開き、「4つの想定域が連動するとは想定できなかった。地震研究の限界だ」と述べた。想定を超える地震の発生が大きな被害をもたらした。

 今回連動して動いたとされるのは宮城県沖、宮城県沖東部、福島県沖、茨城県沖の4つの想定域。気象庁によれば、地震を起こしたプレートの範囲は北は三陸沖中部、南は福島県沖までの南北400キロメートル、幅200キロメートルに達するという。4つの震源域が同時に動いたのか、間隔をおいて連続して動いたのかは不明という。

 これまで同委員会は、宮城県から茨城県沖にかけて想定される地震の最大規模はマグニチュード(M)8.2と公表していた。宮城県沖はM7.5の地震が30年内に99%発生すると公表、東部域と連動してM8.0としていた。福島県沖はM7.4、茨城県沖はM6.7~7.2だった。宮城県沖よりも沖合の三陸沖から房総沖の想定域で8.2としていた。いずれの想定も今回の地震規模であるM8.8を下回っていた。

 連動を予測できなかった理由について、阿部委員長は「過去の地震活動にはっきりとした事例がみられなかったため」と話した。ただ、今回の会合の開催は過去にない巨大地震であることから発生から、震源域の確定もままならないなど分析に必要な情報量は不十分だったという。

 複数のプレートに囲まれる日本周辺では連動型地震が発生するとの指摘はあった。静岡県沖を震源とする「東海地震」と、中部地方の沖合を震源とする「東南海地震」、四国沖の「南海地震」の3つが連動する可能性があるとみられていた。これらが連動して発生すると、M8を超える巨大地震になるといわれている。









東北沖大地震:「阪神」の180倍規模 岩板400キロずれる
◇専門家「1000年に1度」
 東北沖大地震は、記録が残る中で国内最大の規模(マグニチュード=M)8・8を記録した。1995年に起きた阪神大震災(M7・3)の約180倍という、とてつもない巨大地震。気象庁によると、太平洋沖の岩手県から茨城県まで、複数の震源域が連動して動き、巨大地震になったとみられる。専門家は「死者1000人を出した貞観(じょうがん)地震(869年)に匹敵する」と指摘する。

 M8・8という規模は、どれほどのインパクトを持っているのだろうか。

 地球の表面を覆う岩板(プレート)の境界では「プレート境界型」と呼ばれる巨大地震が起きやすい。大きな被害をもたらした過去の東海地震、東南海地震、南海地震などはいずれもプレート境界型。気象庁は、今回の東北沖大地震も海側の太平洋プレートが陸側の北米プレートの下にもぐり込むプレート境界で起きた地震と分析する。

 これだけの規模になったのは、プレートのずれが大きかったからだ。気象庁によると、今回、岩手県から茨城県までの南北約400キロ、東西約200キロがずれたとみられる。地震は、ほぼ南と北方向から圧力がかかる逆断層型で、ずれる面(断層面)に水平に押し合う力が働き、上側の部分が断層面に沿ってずり上がった。太平洋で起きるプレート境界型地震の典型的なパターンだ。最初の地震後に、茨城県沖や福島県沖などで起きている地震は余震と考えられる。

 筑波大の八木勇治准教授(地震学)は「少なくとも長さ500キロ、幅100キロ以上の断層が動いた。ずれ幅は最大で8メートル前後。福島県沖に大きなひずみがたまっているところもあり、複数の領域が一度に動いたと考えられる」と話す。

 古村孝志・東京大地震研究所教授(地震学)は「日本で起きる最大級の地震が起きた。2005年8月に発生した宮城沖の地震(M7・2)のあと、震源域にずれ残った部分があり、そこが地震のきっかけになった可能性がある」と指摘する。

 今回の震源の近くに、過去に繰り返し起きてきた「宮城県沖地震」の想定震源域がある。「今後30年の発生確率が99%」と予想されていた同地震の規模は「M7・5~8程度」で、今回のM8・8はその約90倍にもなった。気象庁は、「宮城県沖地震の想定震源域も破壊された可能性はあるが、想定を大幅に上回る範囲で破壊が起きた」と分析する。このように、広域で連動して起きた巨大地震は、チリ地震(1960年)、スマトラ沖地震(2004年)がある。

 東北地方の地震に詳しい大竹政和・東北大名誉教授(地震学)は「これに匹敵する地震としては、大津波を引き起こし2万人を超える死者・行方不明者を出した1896年の明治三陸沖地震。余震は長く続くが、だんだん間遠になり、規模も小さくなっていく。震源域が広範囲なため、各地に影響が残るだろう」と話す。

 今回の地震との類似性が指摘される貞観地震は、869(貞観11)年7月に発生した。産業技術総合研究所の最近の解析によると、貞観地震の震源域は宮城県沖~福島県南部沖の長さ200キロ、幅100キロ、地震の規模はM8・4と推定される。政府の地震調査委員会の阿部勝征委員長は「今回の地震はすごい地震で言葉も出ない。貞観地震の再来かもしれない。過去1000年に1回起きるかという巨大地震だ。最近は、東海地震や東南海地震、南海地震に注目が集まっていたが、東北地方の地震の見直しをしているところだった」と話す。

 さらに古村教授は、「この地震をきっかけに大きな内陸地震が起きる可能性がある」と指摘する。過去には、1944年に東南海地震(M7・9)、46年に南海地震(M8・0)が続けて起きたが、その間にあたる45年に内陸で三河地震(M6・8)が起きている。

毎日新聞 2011年3月12日 東京朝刊 







想定外の大きさ、連動地震の可能性
 極めて大きな被害をもたらした今回の地震は、マグニチュード(M)8・8と巨大地震に分類される。

 高い確率で発生が想定された宮城県沖地震では予測規模がM7・5で、今回の地震はその約90倍とされる。

 東京大地震研究所の古村孝志教授(強震動)は「宮城から茨城にかけての海域では想定外の大きさだ」と驚く。この海域では、日本列島をのせた陸のプレート(岩板)の下に、海のプレートが沈み込む「日本海溝」がある。沈み込みに伴いひずみが蓄積し地震が発生。日本海溝に沿って4つ以上の複数の震源域があるとされる。

 M8・8という地震の規模から、古村教授は「太平洋の三陸沖中部から福島県沖の海底下にある複数の震源域が連動し、南北方向に長さ200~300キロ、東西100~150キロに及ぶ広い範囲で、岩石が破壊したのでは」と推定している。

(2011年3月11日20時39分 読売新聞)