東京電力福島第一原子力発電所2号機で、15日朝に確認された大きな爆発音。
原子力の最後の安全を確保する仕組みに重大な損傷が起きたのか。放射性物質が外部に大量に漏れ出す可能性もある。専門家の様々な見方をまとめた。
原発で最も大事なのは、放射性物質の封じ込めだ。
今回の爆発では、原子炉の格納容器に何らかの損傷が起きたのでは、という指摘が専門家から出ている。
京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)は「圧力抑制室の圧力が大気圧と同じまで下がったというのは破損がそれだけ大きく、放射性物質が外部へかなり漏れ出たとみえる。格納容器とつながっているため、まさに『格納容器の部分破壊』とでも言える深刻な事態だ」と語る。
元原子力安全委員の住田健二・大阪大名誉教授も「格納容器が健全であることを前提にしてきたこれまでの考え方とは異なる状況になった」と話す。
爆発音に関しては水素爆発の可能性を指摘する専門家もいる。近畿大原子力研究所の伊藤哲夫所長は「圧力抑制室は蒸気を水に戻す機能も持つ。ここで爆発が起きたとすると、原子炉圧力容器から漏れ出た水素の一部が蒸気に混じり、水素爆発を起こしたとも考えられる。元々格納容器は窒素で満たされ酸素がない。水素が爆発するために必要な酸素は、格納容器の圧力を逃がす作業の中で入り込んだ可能性もある」と話す。
また、同研究所の渥美寿雄教授(原子力材料学)も「東電は、格納容器に流れ出た大量の水素を、圧力抑制室から建屋に逃がそうとしている可能性がある。そのため、圧力抑制室の蒸気に水素が混じり込み、そこで爆発したのではないか。蒸気中に水素が4%混じり、酸素があると爆発する恐れが生じる。水素の濃度が低ければ爆発も小規模になる」と指摘する。
渥美教授によると、圧力抑制室は格納容器と配管でつながってはいるが、別の空間との見方もできる。そのため、今回は抑制室だけで水素爆発がとどまったと考えられるという。
一方で、藤家洋一・元原子力委員会委員長は「圧力抑制室の圧力が低下したことは、放射能を含んだ水が漏れだしていることを意味する。原子力の安全を確保する三本柱のうち最後の『閉じこめる』に問題が生じ、深刻だ。水素は空気よりも軽いため、格納容器の下部にある圧力抑制室にたまって爆発することは考えにくい」とみている。
(2011年3月15日11時08分 読売新聞)
2011/03/15
2号機の爆発音について専門家の意見
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