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2011/02/08

愛知県新知事、大村秀彰氏の男性私設秘書が取締役を務めていた福祉サービス会社「ジョブスマイルサービス(JSS)」は上前をはねるビジネス

大村新知事の元秘書、「愛知県に圧力」かたり多額の集金
2011年2月8日3時1分





 愛知県知事に6日当選した大村秀章氏(50)の男性私設秘書(31)=6日に退職=が、障害者事業のフランチャイズ(FC)会社(同県安城市)の取締役として、「大村の力で特別に県の審査が通る」などとFCへの参加を事業所に働きかけ、同社が1千万円を超える加盟金の支払いを契約させていたことがわかった。複数の元傘下の事業所が取材に証言した。厚生労働省は「なぜ多額の金が必要なのか理解できない」としており、監督する愛知県はFCの実態調査を始めた。

 FC会社は大村氏が厚労副大臣だった2009年2月に設立された。元秘書は、FCに加盟した事業所に大村氏側へ1口5万円の献金や1枚2万円の政治資金パーティー券の購入を求め、一部が応じたという。FC本体も同年に同氏側に献金していた。

 このFCは障害者自立支援法の就労継続支援A型事業所を展開。契約書によると、FC本体は最大で加盟金1050万円と保証金200万円を事業所から取る。複数の事業所は、FC本体は障害者と接するノウハウの講習や障害者にもできる仕事のあっせんをするはずだったが、実際は事業所申請の書類を作っただけ、と主張している。書類のひな型は県などのホームページで手に入る。

 ある事業所は09年末ごろ、元秘書に「申請は自分が作った書式しか通らない。大村が愛知県に圧力をかける」と言われ、加盟を決めたと説明する。別の事業所はFC本体の社長(42)に「大村が自由にできる枠は50なので早くFC契約した方がいい」と促されたという。県によると、そうした枠は存在しない。

 元秘書は傘下事業所との打ち合わせに安城市の大村氏事務所を使い、FCの書類も同事務所のファクスで送っていた。県によると、昨年6月には同氏の別の元公設秘書がFC社長を連れて県庁を訪ね、社長が事業内容を説明。大村氏も昨年9月、FC本体や傘下事業所を視察している。

 大村氏は代表を務める地域政党「日本一愛知の会」のマニフェストで障害者福祉施策の充実を掲げ、「就労を支援する企業を掘り起こし、支援面での企業と地域のネットワーク強化」としている。

 大村氏は7日夕、取材に「視察したのはFC本体の社長と知り合いだったからだ。(加盟金や献金は)まったく知らない。この件については、私設秘書とも話していない。不適切なことには厳正に対処する」と話した。元私設秘書は「加盟を募る際、大村の名前を出したり、自分の書式しか通らないと言ったりしたことは一切ない。献金についても、FCだから献金を募ったのではなく、他企業と同じだ」としている。

 元私設秘書は大村氏の下で計約7年間勤めた。FC本体会社では取締役と顧問を歴任したが、昨年12月に退いたという。

 一方、FC本体社長は取材に、加盟金を取ったことは認めたが、「(対価に見合う)シミュレーションがある。(大村氏の)枠の話はしていない。枠があること自体問題だ」と話した。

 愛知県によると、県内のA型事業所は43カ所だが、FCは設立から2年で13カ所を展開。傘下事業者とのトラブルが相次ぎ、現在は本体も含めて5カ所になっている。

 元傘下の事業所は元私設秘書らについて、国などから給付金をだまし取った詐欺の疑いで、同県警に告発状を提出している。一方、FC本体も昨年9月、元傘下の2事業所を相手にFC脱退の違約金など計約1150万円の支払いを求める訴訟を名古屋地裁に起こしている。(神田大介、渡辺周)



■「貧困ビジネスのよう」

 「障害者の経済学」の著書がある中島隆信・慶応義塾大商学部教授の話

 約1千万円の加盟金は明らかに高すぎ、これまで障害者に関わった経験がない人たちを巧みに引き入れている印象を受ける。実際に作業所の様子を見たわけではないが、「貧困ビジネス」と同種のものを感じる。貧困ビジネスでは、業者の目当てはたとえばホームレスの生活保護費だった。障害者の能力を引き出し、生かすというのが障害者自立支援法の趣旨だが、この事業の目的は同法による給付金なのではないか。


     ◇

 〈就労継続支援A型〉従来の福祉工場や授産施設に代え、障害者の雇用機会の拡大などを目指す事業として、2006年施行の障害者自立支援法で定められた。指定を受けた事業所は障害者と雇用関係を結び、最低賃金を保障する。社会保険の加入も義務付けられる。事業形態に応じた給付金が支払われ、国が半分、都道府県と市町村が4分の1ずつ負担する。申請には事業計画や収支見込み、職員の配置や作業場の間取りなどの書類が必要。ほかに雇用関係を結ばないB型がある。












業者に月数十万円の手数料請求 大村氏元秘書関係の会社
2011年2月9日 10時00分
 愛知県知事選に当選した元衆院議員大村秀章氏(50)の男性私設秘書(31)=6日付で退職=が顧問や取締役を務めていた福祉サービス会社「ジョブスマイルサービス(JSS)」(同県高浜市)が、通所型の障害者雇用施設の設立・運営を指導する契約業者に、多額の加盟金支払いを求め訴訟となっている問題で、業者の多くが事務作業の代行手数料として加盟金以外に月20万~40万円の支払いも求められていることが分かった。同施設の指定権限を持つ県は「業者の経営を圧迫し、望ましくない」と疑問視している。

 JSSは、障害者雇用を促す厚生労働省の「就労継続支援A型」のノウハウを伝える業務をしている。県内10社ほどの業者と結んだ契約では、最多で1050万円の加盟金に加え、国からの訓練給付金の申請を代行する手数料を雇用する障害者の数に応じて支払うよう定めている。

 しかし、訓練給付金の申請用ソフトウエアは公的機関がインターネット上で無料提供しており、誰でも自由に使える。県障害福祉課の担当者は「業者にとって手数料は必ずしも必要ない」と話す。

 愛知県尾張地方のある業者は月30万円の手数料が経営の負担となり、「職員の給与を減らさざるをえない」と困惑。別の業者は自ら給付金を申請する形に切り替え、「JSSは上前をはねるビジネス」と契約解除を検討している。

 一方、大村氏の個人事務所担当者は、JSSから2009年に5万円の政治献金を受けたことを確認。「問題があれば献金を返す」と話している。

(中日新聞)