2010.12.26 01:30
警視庁公安部外事3課が作成したとみられる国際テロ捜査資料が流出した事件で、警察当局が警視庁の青木五郎公安部長を更迭する方向で検討を始めたことが25日、警察関係者への取材で分かった。警視庁幹部の更迭は極めて異例。流出元は特定できていないが、警察当局は外事3課の不適切な情報管理を問題視。現場の最高責任者である公安部長の更迭が不可避との判断に達したもようだ。
警視庁の不祥事をめぐっては、警察庁長官銃撃事件で元巡査長が犯行を自供したことを警察庁に報告しなかったとして、平成8年に当時の公安部長が更迭されている。■テロ捜査資料流出事件 捜査協力者や捜査対象者の個人情報やFBI(米連邦捜査局)からの捜査要請などが記載された資料114件が、10月28日にファイル共有ソフト「ウィニー」上に公開。ルクセンブルクのサーバーを経由していることが確認されている。警視庁は何者かが意図的に流出させた疑いが強いとして、偽計業務妨害容疑で捜査。資料について警視庁は「調査中」としていたが、12月24日に内部資料であると事実上認めた。
警視庁によると、外事3課では、捜査資料を作成するのに、(1)警視庁の庁内LANに接続しているパソコン(2)ネットワークにつながっていないスタンドアローンのパソコン(3)外事3課独自のネットワークで結ばれていたパソコン-の3種類を使用していた。
このうち、(2)と(3)のパソコンで外部記憶媒体の使用履歴の管理が不十分だったものが一部存在したことが判明。警視庁は24日に公表した捜査の中間報告で、外事3課からの内部流出の可能性を示唆していた。
警察当局は、秘匿資料について公安部内で不適切な情報管理が常態化していた疑いがあるとみている。
一連の事件では、諸外国の関係機関からの通報内容も漏洩(ろうえい)するなど、インテリジェンス(情報活動)の重大なルール違反が生じた。このため、流出元を特定できていない段階でも、公安部長の責任を問う必要があると判断。海外の情報機関との関係修復を図るためにも更迭は不可避との見方に傾いたもようだ。
青木公安部長は昭和54年入庁。京都府警本部長などを経て、平成20年8月から現職。警察庁長官銃撃事件の時効を迎えた今年3月30日に、事件は「オウム真理教の信者らによる組織的なテロであった」との捜査報告書を発表している。