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2010/11/27

中国、「EEZ内でも公海上ならば自由に軍事演習ができる」とする米国をけん制

毎日新聞 2010年11月27日
米韓軍事演習:中国、容認を迫られ「EEZ」で抵抗

 韓国・延坪島を砲撃した北朝鮮をけん制する狙いで28日から始まる米韓合同軍事演習について、中国は「容認」を迫られた格好だ。これまで米空母の黄海入りに反発してきた中国だが、「EEZ内での反対」を改めて表明した背景には、北朝鮮を簡単には擁護できない今回の状況の中で、将来的に中国近海で演習が続くことに歯止めをかける狙いがある。「EEZ内でも公海上ならば自由に軍事演習ができる」とする米国をけん制する戦略だ。【北京・浦松丈二、ソウル大澤文護】





 「黄海のEEZに関する米国のスタンスが(演習開始の28日までの)48時間以内に判明するだろう」。中国のネット上には、米国側に「踏み絵」を突きつけたと評価する意見があふれた。

 中国が主張するEEZは、韓国が主張する「中間線」に基づくEEZよりも韓国寄りとみられるが、具体的には明示していない。一方、米韓も演習海域を詳細には予告しておらず、予定海域が中国主張のEEZ内か外かを判断することは困難だ。

 中国が黄海での「無許可演習」に反対したのは、韓国との境界画定交渉を有利に運ぶためではなく、「中国は黄海での演習実施は避けられないと判断し、(将来的な演習に歯止めをかけるなどの)次善の策を米側に突きつけた」(西側軍事筋)との見方がある。

 米国は北朝鮮に影響力を持つ中国の協力を求めている。演習に中国が反発する事態を避けるならば、事前協議も選択肢に入ってくる。黄海での演習を認めるか否か、米国から「踏み絵」を迫られた中国が切り返した形だ。

 中国近海では、米軍の偵察活動を中国が妨害して衝突や摩擦を繰り返してきた。

 01年4月に中国・海南島付近のEEZ上空で発生した米中軍用機衝突事件で、中国側は米側が沿岸国の管轄権に対する「妥当な配慮」を欠いたと批判。公海上では飛行の自由があるとする米側と真っ向対立した。

 また、昨年5月には、米国防総省報道官が米音響測定艦「ビクトリアス」が黄海で活動中に中国漁船の妨害を受けたと非難。中国外務省報道官が「米音響測定艦は中国のEEZ内で許可なく活動した」と反論していた。

 黄海での米韓合同軍事演習は、中国近海で米国が軍事活動を活発化させ、中国が反発する構図の中で実施される。演習は北朝鮮への軍事威嚇だけでなく、米空母の航跡次第では「海の管轄権」を巡る米中両国の対立も再燃させそうだ。

 一方、演習海域を管轄する韓国の泰安海洋警察は、「EEZの境界線から離れている」と強調。聯合ニュースは、「訓練水域は(韓国が黄海上の南北境界線と定めた)北方限界線(NLL)付近までは拡大されない」と軍関係者の発言を報道。韓国側は演習には問題ないとの立場だ。


 ◇中韓の排他的経済水域(EEZ)◇
 94年発効の国連海洋法条約は、自国沿岸から最大200カイリ(約370キロ)までの水域を定め、水産・鉱物資源の探査や開発の主権的権利を有すると規定。EEZが重なり合う場合などの境界画定は、当事国間で合意するよう求めた。しかし黄海の場合、韓国は互いの沿岸からの「中間線」での画定を主張。中国は異議を唱え、両国間に合意はない。

毎日新聞 2010年11月27日 21時24分(最終更新 11月27日 23時43分)