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2008/01/21

現状では、他人に講義や試験を受けさせて、大卒資格を得ることも可能なため、文科省は「大学設置基準を満たしていない疑いがある」として指導に乗り出すことを決めた。

サイバー大学 本人確認せず単位
 すべての講義をインターネット上で実施している「サイバー大学」(昨年4月開校、吉村作治学長)が、在校生620人のうち約200人の本人確認をしていなかったとして、文部科学省は近く、改善指導に乗り出すことを決めた。

 この中には、大卒資格の取得に必要になる単位を得ていた学生も多く、同省は、講義を履修した学生だけに単位を付与するよう定めた「大学設置基準」に違反する疑いが強いと判断した。4月までに学生全員の本人確認を完了しなければ、学校教育法に基づく改善勧告も検討する。

 福岡市に本部を持つサイバー大は、パソコンを使えば、どこでもネット上の講義を受講できることや、一般の通信制大学のような「スクーリング(面接授業)」を一切しないことが特徴で、「一度も通学せずに大卒資格が取得できる」とPRしている。

 文科相の諮問機関「大学設置・学校法人審議会」では一昨年秋、大学の設置を認可するにあたって、「学生本人が、ネット上の講義を受講していることをどう把握するのか」などという問題点を指摘。〈1〉入学時や受講時、単位の認定や卒業判定の際には、何らかの方法で学生が本人かどうか確認する〈2〉少なくとも入学時は学生本人と対面する――など11項目の「留意事項」を伝え、大学側は、学生に与えたICカードがなければ、ネット上で講義を閲覧できないシステムを取るなどと回答していた。

 しかし、こうしたICカードのシステムはまだ実施されておらず、昨年4月から始まったネット上の講義は、学生に与えたIDとパスワードをパソコンの画面に打ち込めば閲覧可能で、大学側は2007年度前期の単位を、この閲覧履歴と、ネット上で実施する試験をもとに認定していた。

 文科省は、受講者が学生本人かどうかを、パソコンに取り付けるカメラで確認する方式の対面も認めていたが、大学側は、在校生のうち約200人は1回も対面やカメラで本人確認をしていなかった。現状では、他人に講義や試験を受けさせて、大卒資格を得ることも可能なため、文科省は「大学設置基準を満たしていない疑いがある」として指導に乗り出すことを決めた。

 サイバー大の渡辺開也・事務局長は「文科省の指摘があれば、真摯(しんし)に受け止める。本人確認については今年4月までに完了させたい」としている。



 サイバー大学 ソフトバンクが71%を出資した「日本サイバー教育研究所」(福岡市)が開校した4年制の通信制大学。IT総合学部と世界遺産学部がある。吉村作治学長はエジプト研究で知られる。卒業までに最低必要な授業料は約260万円。

(2008年1月21日 読売新聞)







2008/01/21 20:38
「本人確認せず単位付与」は事実誤認、サイバー大学の吉村学長が会見
読売新聞社には法的手段も検討

 サイバー大学は21日、同大学が学生の本人確認をせずに単位を認定していたと報じた読売新聞の記事に対して、単位認定の事実を否定した。同日に開かれた会見で学長の吉村作治氏は、本人確認が遅れている事実は認めたものの、「記事の内容は全くの事実誤認」と強調。記事による風評被害で入学者が減ることも想定されるとして、読売新聞社に法的手段を検討する考えを示した。

 サイバー大学は、すべての講義をインターネットによる通信教育で行なう4年制大学。PCとインターネットにつながる環境があれば、24時間どこでも授業を受けることが可能で、一度も通学せずに大卒資格を取得できることが特徴としている。

 21日付の読売新聞朝刊では、サイバー大学の在学生620人のうち約200人に本人確認をせず、この中には大卒資格の取得に必要な単位を与えていたと報じていた。また、他人に講義や試験を受けさせて、大卒資格を取ることも可能としており、文部科学省が改善指導に乗り出すことを決めたと記載されている。

 この記事に対してサイバー大学は21日付のプレスリリースで、在学生の本人確認を進めており、在学生620人のうち440人の本人確認が終了したと報告。さらに、本人確認が済んでいない生徒には単位を認定しておらず、現時点では、文部科学省からの改善指導も受けていないと反論した。

 また、本人確認が済んでいない180人に対しては、全国各地で開催している大学説明会のほか、Webカメラや携帯電話のカメラ機能で本人確認を行ない、2008年1月末までに本人確認を終了するとした。1月末までに確認できない学生に対しては大学職員が個別訪問し、2月末までに確認できない生徒には単位を与えず、その後も確認できない生徒には退学勧告を行なうという。サイバー大学の広報部によれば、本人確認の方法は、カメラで撮影した学生の動画と、その学生の入学願書の写真と照らし合わせ、目視で確認するとしている。

 なお、文部科学省の大学設置・学校法人審議会では2006年11月、サイバー大学の設置を認可するにあたり、学生の本人確認を厳密にすることなどを留意事項として挙げていた。文部科学省では2007年11月、当時210人しか本人確認が済んでいなかったサイバー大学に苦言を呈し、これを受けたサイバー大学は学生に対し、2007年12月から本人確認を済ませるようメールで通達していたという。



● 吉村学長が「怒りの会見」、本人確認の遅れを認めつつも読売新聞社を非難

 会見では、記者団からサイバー大学側が本人確認を怠っていたことが本質的な問題ではと指摘する声が相次いだ。これに対して吉村氏は、入学式や説明会での対面による本人確認を重視していたため、本人確認が進まなかったと釈明。「私の判断が甘かった」として対応の不備を認め、1月末までにはWebカメラや携帯電話のカメラ機能を用いて本人確認を終了したいと述べた。また、次年度に入学する学生に対しては、本人確認ができなければ入学を認めない方針を示した。

 なお、サイバー大学の授業では、入学時に付与されるIDとパスワードを入力して学生専用ページにログインする。授業の出欠は、教員が講義を行なう動画を閲覧することで、出席と見なされる。会見では、「替え玉の受講も可能では」という質問が寄せられたが、吉村氏は「通学制の大学でも代返はあるが、勉強しなければ答えられない試験を身代わりで受けるような酔狂な人はいない」と回答。Webカメラや指紋認証による授業毎の本人確認も検討するとしたが、「教育は相手を信じるもの」との持論を述べた。

 「怒りの会見と言っていただいて結構」と語気を強める吉村作治学長は、今回の記事が掲載された経緯は、読売新聞の記者が、事務局長である渡邊開也氏に取材したと説明。「責任を持たない人間に質問を投げかけ、都合のよい部分だけを書いている」と非難した。サイバー大学では近日中に読売新聞で広告を出す予定だが、「そのフォローの取材だと思っていた。詐欺にあったような気持ち。水戸黄門が欲しい」と憤りをあらわにした。

 「公正な監査を受けずに税金を逃れる大学法人や宗教法人がある中、株式会社立のサイバー大学では決算報告書を公開し、しかるべき利益が上がれば税金を納めるべきと考えている。このように大学改革を一生懸命やっている人間に対して、何の利益があってこのような記事を書くのか。我々には謝る理由はないので、法的対応も検討する。(経営に関与する)ソフトバンクには優秀な弁護士がいるので、読売新聞社は覚悟して欲しい。」(吉村氏)






平成20年1月22日大臣会見概要



記者)

 サイバー大学の学生の3割が本人確認できていなかったということで、高等教育機関としての信頼性というものも問われるのではないかと思いますが、大臣のお考えをお聞かせ下さい。

大臣)

 サイバー大学は特区でやっている株式会社立の大学ですが、本人確認については、入学、それから履修段階、卒業段階に、なりすましがないようにしっかりと行うということで、設置認可を与えているわけですが、それがしっかりやられていなかったと聞いております。このことに対して指導もしていますし、これをきちんとやられないようであれば、もっと厳しく対処していかなければいけない。これは特殊な形態ですから、これだけをもって今おっしゃったような高等教育機関全体に影響を与えるという判断はできないと思いますが、あってはいけませんので、しっかりと対応していきたいと考えております。

記者)

 今、高等教育機関への信頼というお話だったのですが、東京福祉大学の総長が逮捕されまして、大学側の会見を見ましても、きちんとまだ対応を決めていないようなのですが、一方で就職活動などを控えた学生もいるわけですし、何かしら対応ですとか、お考えがあればお聞かせ下さい。

大臣)

 今、実態把握に努めております。昨日の深夜近い報道で、大学側がこう言っている、また本人が覚えがないというようなことを言われているのを見ました。昨日までに分かっている状況では、大学側が今しっかりと状況を把握することに努めているということですが、逮捕されているわけですから、こういうことがあるということは、一言で言えば言語道断ということであろうと思います。しっかりと状況把握して、適切な指導をしていかなければいけないと思っております。特に学生に影響がないように、しっかりと考えていかなければいけないと思います。






非認定大学の博士号 吉村作治学長も取得 30万円支払う「うかつだった」12/30 07:02
 来年4月に開校する「サイバー大学」学長のエジプト考古学者、吉村作治氏(63)が、米国の非認定大学「パシフィック・ウエスタン大学(PWU)ハワイ」の博士号を取得していたことが29日、分かった。同大学は、米国で「学位の乱発」などと問題化した「ディプロマ・ミル」(DM)の一種とされ、吉村氏は「うかつだった」と話している。別のDMで博士号を取得したフリースクール校長も反省の意を示しており、教育界に「学位商法」の波紋が広がっている。(池田証志)
 吉村氏は、早大人間科学部の助教授だった平成6年、週刊誌の広告を見てPWUハワイの東京事務局を訪ね、「ハワイ州の認定を得ている」と説明されハワイにある校舎の写真を見せられた。30万円を支払い、考古学の論文を提出。7年に博士号を授与されたが、肩書として使ったことはないという。
 「同僚から博士号がないと教授になれないといわれた。早大で博士論文を書いていたが、自分の力が世界で通用するか試したかった。DMとは知らなかった」と説明している。
 吉村氏はその後の平成10年、早大人間科学部教授に就任し、11年に早大理工学部で博士号を取得した。今年3月に早大を退職し、現在は客員教授。初代学長となったサイバー大学は、すべての講義をインターネットで行う国内初の4年生大学。
 DM博士号について「学位に対価を払うこと自体に問題はないと思うが、お金だけでは買えないものだ。うかつだった。DMはよくないし、それを悪用するのもよくない。皆さんにも気を付けてほしい」と話した。
 ブログ「学歴汚染」でDM問題を追跡している静岡県立大の小島茂教授によると、PWUハワイは今年5月、最低25人の学生が州内にいない▽ハワイに事務所がない-などとして、ハワイ州法違反(学位不法授与)で裁判所から罰金納付と閉校を命じられた。学位の質を保証する米国の認定団体の認定を受けておらず、DM規制が厳しいオレゴン州では「DMの可能性が高い」とされたという。
 PWUハワイは現在、「アメリカン・パックウエスト国際大学」に名称変更。ホームページで「前経営陣の法的問題を解決するため努力している」と説明し、入学受け付けを停止している。PWU元教授によると「2年前に経営陣が交代、オンライン化を進めている」という。
 一方、「英語を子どもに教えるな」などの著書で知られる「東京コミュニティスクール」(東京都杉並区)の市川力校長は、平成15年にDMとされる「ハミルトン大学」の博士号を取得し、肩書に使っていた。
 市川校長は約80万円を払い、米国で学習塾を運営した経験を単位化、数十ページの論文を提出したという。「DMとは知らなかった。経験で学位が取れるならと思った」と話している。
 米国議会の調査部門「米会計検査院」は2004年の報告書で、PWUとハミルトン大など7校をDMと位置づけた。
 PWUカリフォルニアは「DMとされたのは前の経営者のプログラム。PWUハワイとは別組織」などと関与を否定している。ハミルトン大は事実上活動を停止しているもよう。29日までに取材への返答がなかった。
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【ディプロマ・ミル(学位工場)】
 実際に就学しなくても、代金を払えば博士号などの学位を授与する機関・団体のこと。海外に数百あるとされ、詐欺に利用されかねないとして米国で社会問題化している。学位取得までの期間が極端に短いケース、有名大学と似た名称だがキャンパスがないケース、などが典型例。

http://web.archive.org/web/20070224160429/www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/33338/