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2012/02/01

【原子炉等規制法改正案】 延長の可否を判断する基準は改正案が成立後に決まる見通しで、どうやって「40年」を守るのか、まだ明確ではない

延長規定と矛盾 原発相発言、混乱拍車も
2012/2/1 1:37




 細野豪志環境・原発事故担当相は31日、運転再開を目指して準備してきた40年超の原発2基について再稼働はないとの考えを示した。同日に閣議決定した原子力規制関連法の改正案で、原子力発電所の運転期間が原則40年になったからだ。ただ、改正案では延長の例外規定を設けることにもなっている。2基だけからその適用の可能性を奪う理由について、説得力のある説明はなかった。環境相の唐突な発言に、事業者や地元には困惑が広がっている。

 「すでに40年を超えている原発が再稼働することはあり得ない」。原子力規制庁の設置など、一連の原発安全規制強化を発表する場となった31日夕の記者会見で、細野環境相は「40年廃炉」の原則を徹底する点を強調した。現在、運転42年目となる日本原子力発電敦賀1号機と関西電力美浜1号機は廃炉に追い込まれる公算が大きくなった。

 細野環境相は原発の「寿命」について「客観的、科学的に判断されなければならない」と述べたが、40年超の2基が再稼働できなくなった理由は明確に示さなかった。東京電力福島第1原子力発電所の事故後、ストレステスト(耐性調査)で安全性を確認して再稼働を認めるとしてきたこれまでの政府方針とも矛盾は否めない。

 ある電力会社幹部は「国から指示を受けて準備を進めているにもかかわらず、再稼働させないといわれると、ストレステストそのものを否定することになる」と困惑する。電力会社の私有財産である発電所に対し、科学的根拠もなく運営を禁じるのは妥当ではないとの指摘もある。

 改正案には例外的に1回に限り最長20年の延長を認めることもあり得る方針も盛り込まれた。原発の寿命は40年なのか、60年なのか。閣議決定を前に与党内でも批判が出たのは、この例外規定の運用次第によっては運転期間に「ダブルスタンダード」ができてしまうからだ。

 延長は安全基準への適合を前提に判断し、最終的には環境相が決定することになったが、肝心の基準や評価方法はこれから作るという。

 「原則、40年廃炉」は、米国の規制をモデルにしたとされる。ただ、専門家らの徹底した議論の結果ではなく、原発の寿命をここで線引きする裏付けも乏しい。フランスや英国では運転期間に制限はない。日本原子力学会元会長の岡芳明早稲田大特任教授は「40年に科学的根拠はない。福島第1原発は古いから事故が起きたのではなく、必要な安全対策を怠っていたからだ」と指摘する。





【Q&A/原発の運転期間】初めて“寿命”を規定 原則40年、抜け道に懸念
 東京電力福島第1原発事故を受けて政府は原子力規制行政を見直し、原発の運転期間を原則40年に制限する原子炉等規制法改正案を国会に提出した。


 Q これまでとの違いは何か。

 A 原発の“寿命”に関し法律には定めがなく、運転期間に関する初の規定になる。ただ、基準を満たした原発は「20年を超えない期間、1回に限り延長を認可することができる」と例外を認める規定があり、最長60年の運転が可能と受け取れる。


 Q なぜ原則40年なのか。

 A もともと原発は30~40年の運転を想定しているとされ、政府は米国の制度などを参考にしたと説明している。


 Q 40年たった原発は危険なのか。

 A 蒸気発生器や炉心隔壁といった相当大きな設備を新品と交換した原発もあり、電力会社は十分な管理をすれば60年の運転は可能と主張してきた。ただ燃料の核分裂で発生する中性子が原子炉圧力容器に当たると容器は劣化していくなど、長期間の運転によって安全性は保たれなくなると指摘する声も強い。


 Q 日本には古い原発が多いのか。

 A 福島第1原発を除く48基のうち、30年以上は13基、うち2基は40年を超えている。福島第1は6基とも30年以上で、1号機は40年だった。


 Q 例外を認めると、原発延命への「抜け道」になるのではないか。

 A 細野豪志原発事故担当相(環境相)は「基本的に40年以上は稼働できない」と説明し、延長を認めるのは例外中の例外と強調している。ただ延長の可否を判断する基準は改正案が成立後に決まる見通しで、どうやって「40年」を守るのか、まだ明確ではない。


 Q 判断するのは誰か。

 A 環境省の外局として4月に発足予定の原子力規制庁の長官。環境相から大幅な権限委任を受ける。細野氏は、初代長官は官僚ではなく、民間出身者にするとしている。


 Q 既に40年以上経過している原発はどうなるのか。

 A 来年1月と想定される法施行時に37年を超えている原発には、3年間の運転を認める「猶予期間」が設けられる。この間に基準を満たし、認可を受ければ延長できる。だが細野氏は、既に40年を超えている原発は「再稼働はあり得ない」との認識を示している。


 Q 古い原発の安全対策はどうなるか。

 A 最新の知見を技術基準に取り入れ、既存の原発にも適合を義務付ける「バックフィット」制度が導入される。基準を満たすことができない原発には政府が使用停止を命じることができる。

 (2012年2月1日、共同通信)

2012/02/01 20:28







原発:40年超「再稼働せず」 敦賀、美浜の2基対象--細野担当相
 細野豪志環境・原発事故担当相は31日記者会見し、現在定期検査で運転を停止している原発の中で、運転開始から40年を超えているものについて「再稼働は難しい」との見解を示した。同日閣議決定した原子炉等規制法改正案では、原発の運転期間を原則40年としながら、基準を満たせば延長を可能とする例外規定が設けられ「抜け道」との批判を受けている。発言はこうした状況を受けたものとみられるが、細野氏は原発再稼働の可否を判断する4閣僚の一人でもあり、再稼働に影響しそうだ。

 既に40年を超えているのは▽日本原電敦賀原発1号機(福井県)▽関西電力美浜原発1号機(同)▽東京電力福島第1原発1号機(福島県)の3基。事故により廃炉が決まっている福島1号機以外は定期検査中で、やがて再稼働の判断時期を迎える。

 政府は再稼働の条件として、想定以上の地震や津波への余裕度を調べる安全評価(ストレステスト)を課している。電力会社のテスト結果を経済産業省原子力安全・保安院が審査し、内閣府原子力安全委員会が確認。野田佳彦首相と藤村修官房長官、枝野幸男経産相、細野担当相の4閣僚が地元合意を前提に判断する仕組みだ。

 細野氏は31日の会見で「ストレステストに基づいて再稼働が議論されているが、そういう状況の中で、既に40年を超えているものが再稼働できるということはあり得ないと思う」と話した。

 政府が31日閣議決定したのは、原発の運転期間制限や、環境省の外局として発足する「原子力規制庁」設置など、新体制のための「原子力組織制度改革法案」と「原子力安全調査委員会設置法案」の関連2法案。細野氏は会見で、規制庁長官には民間人を登用することや、外国人の専門家をアドバイザーに迎える意向を明らかにした。【藤野基文、江口一】

毎日新聞 2012年2月1日 東京朝刊