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2012/02/08

保安院、、関西電力大飯原子力発電所3、4号機のストレステストの結果は「妥当」

大飯原発の耐性「妥当」、保安院が審査書最終案
再稼働、地元同意がカギ
2012/2/8 20:51




 経済産業省原子力安全・保安院は8日、関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県)のストレステスト(耐性調査)の結果を「妥当」とする審査書の最終案を専門家の意見聴取会に提示した。保安院は来週にも国の原子力安全委員会に審査書を提出、内容のチェックを受ける。これで安全確認の手続きは完了し、焦点は野田佳彦首相と関係閣僚がどのように地元の同意を取り付け、再稼働を決めるかに移る。

 ストレステストは東京電力福島第1原発の事故を受けて導入。実施は再稼働の前提条件となっている。大飯原発3、4号機はストレステストの結果を国が評価する初の原発となる。

 保安院が出した審査書の最終案は「福島のような地震や津波が大飯原発を襲っても同原発のような事故に至らない対策が講じられている」と評価。そのうえで、国際原子力機関(IAEA)の勧告や専門家の指摘を踏まえ、免震事務棟設置の前倒しや非常用発電装置の分散配置などの安全性向上策を関電に求めた。

 8日の意見聴取会では専門家から「ストレステストだけで原発の再稼働の是非を判断すべきではない」「安全性確保への通過点にすぎない」などの意見も出た。地元の福井県の西川一誠知事は同日、「再稼働は福島の事故の知見を反映した安全基準を示すことが大前提」とのコメントを発表した。24日開会の福井県議会でも再稼働の是非が議論される見通し。

 保安院は事故原因や老朽化、地震・津波の影響など複数の意見聴取会を開き、それぞれ中間報告の作成を進めている。8日には事故原因の意見聴取会で、電気設備の浸水対策や水素爆発の防止、非常事態の訓練など30項目の安全対策を示した。これらの中間報告で福井県の疑問や要望に応えられるとみている。

 原子力安全委が保安院の審査書を妥当と確認後に、枝野幸男経産相や細野豪志原発事故担当相らが西川知事らに再稼働を要請するとみられる。ただ枝野経産相は「いつまでにという期限を切るつもりは全くない」としており、政治判断のタイミングは不透明だ。

 ストレステストは大飯3、4号機を含む16基で実施済みで安全性を満たすとの結果が出ている。保安院は大飯3、4号機と原子炉の型が同じで、ストレステストの結果の提出が早かった四国電力伊方3号機などの審査結果を順次、出していく。






大飯原発:再稼働なお不透明 1次評価は「妥当」

 経済産業省の原子力安全・保安院が、大飯原発3、4号機のストレステストの1次評価を「妥当」と判断し、議論は国の原子力安全委員会に移るが、電力関係者は「いつ再稼働できるか全く不明」とため息をつく。

 枝野幸男経産相は7日の閣議後会見で、再稼働について「期限を切ってやるつもりはない」と強調した。慎重姿勢には、従来の原子力政策への批判に加えて、「震災・原発事故後1年の3月11日ごろに『再稼働』といえば有権者から反発が強まる」(与党議員)ことへの警戒もあるようだ。野田政権が消費税増税など国民に負担を求める政策を進める中で、世論の動向には敏感にならざるを得ない。

 また、地元から再稼働に対する理解を得ることも簡単ではない。福井県の西川一誠知事は国に、福島第1原発事故を踏まえた新たな安全基準を策定するよう要望している。今後、再稼働がなければ4月末にも稼働中の原発はゼロになる。枝野経産相は「原発ゼロを想定した節電対策」を指示しているが、「現時点で乗り切れるという数字的根拠はない」(経産省幹部)。

 政府内には「一つでも再稼働ができれば、他の原発への再稼働の呼び水になる」(資源エネルギー庁幹部)との思惑もあり、「4月末までに再稼働を目指す」との意見は根強い。ただ、肝心の枝野経産相は4月再稼働を目指すとした一部報道について「私にそんな気はない」と否定。再稼働の時期は見通せない状況が続いている。【野原大輔】

毎日新聞 2012年2月8日 21時24分(最終更新 2月9日 2時17分)






原発依存度高い西日本、火力頼みに危うさも
2012/2/8 21:13
 関西電力は8日、「原子力安全委員会の今後の手続きに真摯に対応していく」との見解を表明した。ストレステストの結果を妥当とした審査書案がまとまったことを受け、関電は福井県で商工団体や自治体議員らとの面談を繰り返し、原発の安全性を訴える方針だ。

 関電が大飯原発の再稼働を急ぐ背景には西日本の原発依存度の高さがある。今夏の電力需給予測によると、原発がすべて止まると、関電管内で19.3%、九州電力管内では12.3%の電力不足が生じる。計画停電や電力使用制限の恐れが高まる。

 関電の発電量に占める原発依存度は2010年度実績で4割超。東電の約2割に比べて高い。関電は1月に約60万キロワットの火力を増強する方針を発表したが、3日の九電新大分火力発電所のトラブルで火力頼みの危うさも浮き彫りになった。

 九電はこのトラブルを東電や中部電力から約240万キロワットの電力融通を受けて乗り切った。だが「原発ゼロ」の場合、日本全体で9.2%の電力供給不足に陥る今夏はこうした大規模な融通は望めそうにない。また、原発1基を停止すると1日あたり数億円の営業損失を生むという代替の火力用燃料費も負担になる。

 火力には1960~70年代に建設された老朽施設が多い。当面の電力供給の綱渡りを避けるため、電力各社には原発再稼働が最も現実的な選択肢になっている。







飯原発:安全評価意見聴取会 「結論ありき、茶番」市民団体は厳しく批判 /福井
 大飯原発3、4号機(おおい町)の安全評価(ストレステスト)について議論する国の意見聴取会が8日、終わった。原発再稼働に向けた国の手続きが一歩進んだことになり、県内で脱原発を主張する市民団体のメンバーからは厳しい声が相次いだ。

 市民団体「原発設置反対小浜市民の会」の会員で、小浜市・明通寺の中嶌哲演住職は「原子力安全・保安院や原子力安全委員会がそれぞれチェックし、ゴーサインを出すという、まず結論ありきの形で進んでいる現在の流れは茶番と言わざるを得ない。頑として認めることはできない」と切り捨てた。「福島の原発事故以来、保安院のずさんな対応は今や国民の信頼を失っている。4月に設置されるという原子力規制庁も、政府から完全に独立した機関とはほど遠く、過大評価はできない」と話した。

 脱原発を訴える市民団体「森と暮らすどんぐり倶楽部」の松下照幸代表も「福島第1原発事故の検証は、まだ終わっていない。国が福島の事故をまったく反省していないことをよく表している」と批判した。市民団体「サヨナラ原発福井ネットワーク」の山崎隆敏代表は、審議する委員の一部が原子力関連業者から寄付金を受けていたとの報道を挙げ、「“原子力ムラ”の人が、福島の事故後もそのまま残っている。そういう人たちは本来、大手を振って歩けないはずだがよみがえっている。国会などで問題にしないのか」と語気を強めた。【松野和生、安藤大介、柳楽未来】

毎日新聞 2012年2月9日 地方版