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2012/01/26

ここ最近、テレビCMなどでVoIPアプリが注目されたことで、一気に制御信号が増加。NTTドコモとしては、このトレンドを予測できていなかったようだ。

なぜ起きた? 信頼が揺らぎかねないドコモの通信障害【石川温氏による解説】
文●石川温 編集●山口ひろ美
NTTドコモは、1月25日に都内で発生した通信障害について、経緯説明を行った。冒頭、岩崎文夫常務執行役員が「お客さまにご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪した。


 1月25日午前8時26分から、都内の一部エリアにおいて、FOMAのパケット通信・音声通話が利用しづらい状況に陥った。当初、原因はJR東日本の一部電車のダイヤ乱れと言われていたが、実際は、24日深夜からNTTドコモで行われた新型パケット交換機への切り替え作業が影響を及ぼしていたという。NTTドコモでは、スマートフォンユーザーの急増に対し、処理能力の高いパケット交換機を1月20日より順次、導入していた。24日深夜に対象となるエリアを拡大したところ、予測を上回る大量の“制御信号”が処理しきれず輻輳(ネットワークが混雑すること)状態になり、FOMAの音声・パケット通信が利用しづらくなったという。25日10時56分ごろからパケット交換機を新型から現行機に戻すことで、ネットワークが回復したのだという。影響を受けたのは最大252万人のユーザーになる。

 スマートフォンはケータイと違い、常時ネットワークに接続した状態になっているのが一般的だ。そのため、NTTドコモでは、“同時接続数”を増やせるようにと、同時接続数を大幅に向上させた新型パケット交換機への切り替えを進めていた。しかし一方で、“制御信号”に対する予測が甘く、新型パケット交換機は現行パケット交換機に比べて制御信号を処理する能力が劣っていた。NTTドコモでは1時間あたり、1200万の制御信号と想定し、新型パケット交換機では1410万の信号を処理できるようにしていた。しかし、実際は1時間あたり1650万の制御信号が発生し、通信障害につながったという。

 制御信号が増える背景について、岩崎氏は「VoIPやチャットなどのアプリが制御信号を増加させている」と語る。ここ最近、テレビCMなどでVoIPアプリが注目されたことで、一気に制御信号が増加。NTTドコモとしては、このトレンドを予測できていなかったようだ

 全国のパケット交換機の処理能力を総点検するとともに、制御信号の増加に対応した設備増設を進めていくという。キャリア間のスマホ戦争が過熱する中、年末からのspモード障害など度重なるトラブルは同社への信頼性が揺らぎかねない事態。“スマホでもつながるドコモ”の信頼を回復するためにも早急な対策が必要だ。





[続報]ドコモが25日の通信トラブルで会見、原因は「信号量の見積もりミス」
2012/01/26
菊池 隆裕=ITpro
 NTTドコモは2012年1月26日、前日午前中に発生した通信トラブルに関する説明会見を開いた。25日未明から新型パケット交換機の本格運用を始めたことがきっかけだったことは、25日中に明らかになっていたが、その詳細を説明した(関連記事1、2)。

 同社の説明によると、今回のトラブルの原因は「新型交換機の設計における見積もりミス」。交換機の設計では、主に「端末の同時接続数」と「1時間あたりの信号量」に配慮する。利用時にネットワークへの接続と切断を繰り返すiモード機と異なり、スマートフォンではネットワークに同時接続する。スマートフォンへの移行が進むと同時接続数が増えることから、今回のトラブル対象地域では、従来の交換機では最大の同時接続数が88万だったのに対して、新型機では180万接続まで対応できるように設計していた。

 ここで盲点になったのが、1時間当たりの信号量だ。同社の見積もりでは1410万としていたところ、実際には1650万の信号があったとみられ、それにより輻輳が発生、大規模なトラブルを引き起こしたというわけである。

 信号数が見積もりよりも多かった原因は、VoIPやチャットなどリアルタイムでコミュニケーションするスマートフォン向けアプリケーションだという。サーバーが端末の状態を常に監視し、頻繁に通信トラフィックが発生するからだ。

 今後の対策として、同社では3点を挙げた。「交換機の処理能力の総点検」「信号の増加に対応した設備増設」「交換機の処理能力向上」である。2月以降、順次実施していく予定である。






ドコモの障害、原因は新型交換機の能力不足。チャットアプリの通信が急増中
Engadget 日本版 1月26日(木)11時0分配信

昨日25日午前に都心を襲った FOMA の通信障害について、ドコモが原因を説明しています。そもそもは前夜、よりによって「スマートフォン契約者の増加に対応するため」導入された新型パケット交換機が、制御信号を処理しきれず輻輳(≒混雑)が発生したのが問題のはじまり。午前8時26分から、午後1時8分まで、東京都下の最大252万人が音声・パケット通信の利用しづらい状況となりました。

ドコモの障害、原因はチャット / VoIP アプリ の普及

興味深いのは、問題の原因としてスマートフォンの人気拡大だけでなく「コミュニケーションアプリ」が挙げられていることです。スマートフォンの一部アプリは、端末を利用しない間も断続的に通信を行うため、パケット交換機側を逼迫する原因となります。特に Skype や Line のようなチャット / VoIP アプリは、はげしくリソースは食うわ、音声通話や SMS のビジネスモデルを破壊するわ、キャリアにとっては頭の痛い存在。ドコモはさらなる設備増設を進める予定ですが、パケット定額の廃止や、アプリ単位課金のようなネットワーク中立性の議論がまた盛り上がってきそうです。

ちなみにドコモの大規模障害は年始のspモードメールトラブル、年末のspモードメール置き換わりトラブルとあわせて、ここ一月ほどで三回目。このままでは iPhone はないけど安定のキャリアだったはずが、iPhone もなくて不安定なキャリアと言われかねません。

追記:
総務省が去年ぶんからまとめてドコモに「指導」を発表しました。ドコモには再発防止の成果を3月30日までに報告することが求められています。詳細は別記事で。







ドコモ、障害で会見「スマホ信号量の見極め甘かった。ユーザーの信頼損ねた」
2012/1/26 13:48
 NTTドコモは26日、東京都内で25日に発生した同社携帯電話の通信障害の原因と対策について記者会見した。同社の岩崎文夫取締役常務執行役員は、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の契約数増加に伴い、端末からネットワークに接続する際の信号量の増大に対する見極めの甘さがあったことを認め謝罪した。会見での主なやりとりは以下の通り。

 ――新型のパケット交換機に切り替えたのに、1時間あたりに処理できる制御信号量が減ったというのはどういうことか。

 「交換機の能力は2つあり、『同時にどれだけの数の端末を接続できるか』と『1時間当たりの信号量』がある。スマートフォンはネットに常時接続しているため、新型交換機では同時接続数の能力を引き上げたが、逆に1時間当たりに処理できる信号量が減ってしまった」

 「見積もりに甘さがあった。これまではiモードでの利用を想定した旧型(パケット交換)機の数を増やして対応してきた。新型交換機はユーザーが端末を操作しなくても何度も接続を繰り返すスマホの利用を想定して同時接続数の能力を高めたが、予想以上に信号量が多かった」


 ――iモードとスマホではどのくらい信号量に差があるのか。

 「iモードの場合は操作時のみ制御信号が出る。スマホでアプリを使っている場合は、1台あたりその10倍はあると考えている」



――現時点で信号量の増加を誘発しやすいアプリは特定できているのか。アプリ開発者に個別に対策を依頼する考えはあるか。

 「限られたアプリではあるが、いくつかでは信号量が多くなる。(流通している)アプリの数は多く、すべてを分析できてはいないが、(パケット通信を使って音声通話する)VoIPやチャットなどの影響があるとみている」

 「各通信事業者にとって共通の問題なので、情報交換を含めて調査を進めていきたい。我々の対策としては、設備増設やパケット交換機の処理能力向上などできることからまず取り組む」


 ――アプリの利用に関してサービス面で何らかの制限をかける考えはあるか。

 「自由に便利に使って頂くのがスマホの特性。制限はしたくない」



 ――トラブルの周知についてホームページへの掲載に時間がかかった。周知体制に問題はないのか。

 「ホームページへの掲載は午前11時半。当初ネットワークの混雑が落ち着けば正常に戻ると認識していた。関連部署との調整に時間がかかってしまった側面もある。今回の記者会見も翌日になった。大変申し訳ない」

 「ツイッターはパケット通信のためつながらない。緊急地震速報などで使うエリアメールは地震発生と誤認される可能性もあり、通信障害時の利用は難しい。障害が起きた時に広く周知する良い方法を考えていきたい」


 ――カード決済など業務で端末を使っている法人ユーザーへの影響は。

 「法人ユーザーへの影響の把握はまだだ。料金変更などの対象にはならないと現在は認識しているが、影響について真摯(しんし)に承って、対応していきたい」


 ――「つながりやすいドコモ」というブランドイメージを損ねたのでは。

「私どもも信頼を損ねたという危惧を強く持っている。度重なるトラブルへの全社的な検討をしているさなかの問題で、対策を急ぎたい」


 ――山手線の事故の影響があったのではないか。

 「今回は鉄道事故の前から問題が発生しており、事故で更に設備への負荷が重くなって問題が長期化した。普段でも鉄道沿線での通信量は多い。首都圏の鉄道トラブルで利用が増える事態もこれまでも起きていた。あくまで我々の見積もりが甘かったのが原因だ」


――今後の対策は。

 「まず全国のパケット交換機約200台に信号量を測定する機能を搭載し、2月中旬までに総点検。その結果に基づいて、速やかに設備増設を行う。それに加えてパケット交換機の処理能力を可能な限り高めていく。8月までに対策を完了したい」


 ――交換機増設などのコストは。

 「早急に点検を行い、それに応じて設備投資の規模を早急に見極めたい」


 ――設備設計に必要な現在の信号量は推定で算出しているが、実測していないのか。

 「実測できる新しいソフトウエアを、今回に先立つ20日の新型機切り替えからまさに展開しはじめたところだった。20日以降に実測したデータはまだ集計している最中。もっと早く見積もれたのではと反省している」

(電子報道部 宮坂正太郎)