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2012/01/20

原子炉監視システムの情報送信装置の非常用電源が外れたまま放置された問題  原子力安全基盤機構、工事の完了確認を怠る。 東電と保安院は説明に食い違いも

東日本大震災:福島第1原発事故 データ送信装置、非常電源外れ放置 基盤機構確認せず
 ◇東電に工事依頼
 東京電力福島第1原発で、国の原子炉監視システム(緊急時対策支援システム=ERSS)に原子炉の状況を送信する「メディアコンバーター」(MC)が非常用電源と接続しないまま放置された問題で、接続工事を東電に要請した原子力安全基盤機構が完了の確認を怠っていたことが分かった。経済産業省原子力安全・保安院と同機構が19日、明らかにした。

 同機構はERSSの運用主体。機構によると、事故前の10年11月、東電がMCを設置する場所を間違えたため、ケーブル類の長さが足りず接続できなくなった。機構が工事をやり直すよう要請したが東電は放置し、機構側も確認しないままそれに気付かなかったという。

 また、保安院は事故後の昨年8~9月、この経緯を知りながら発表しなかった。理由について森山善範原子力災害対策監は19日の記者会見で「担当レベルは公表まで思い至らなかった。関心が高い問題なので可能な限り公表すべきだった」と述べた。

 今回の問題を受け、保安院は全国の原発に原子炉データの送信装置に非常用電源を設置することや、送信経路の多重化を義務づけることを検討する。【岡田英】

毎日新聞 2012年1月20日 東京朝刊





非常用電源未接続で全原発点検へ
1月19日 18時52分
東京電力福島第一原子力発電所で、原子炉の状態などのデータを監視する国のシステムへ情報を送る装置に非常用電源が接続されていなかった問題で、原子力安全・保安院は、全国の原発に対して非常用電源の設置を徹底させるとともに、緊急時でも装置が稼働するよう改めて点検することにしています。

この問題は、福島第一原発で、原子炉の状態や周辺の放射線の情報を監視する「ERSS」という国のシステムに情報を送るための装置が非常用電源に接続されておらず、去年3月11日の地震直後に外部電源を失って以降、必要な情報を送れなかったものです。

東京電力は、事故の4か月前のおととし11月、この装置に予備の非常用電源を接続する工事を行おうとしましたが、ケーブルが短くて接続できず、そのまま放置していました。

原子力安全・保安院によりますと、この工事には装置を管理する独立行政法人の原子力安全基盤機構も立ち会い、接続できなかったことを確認していましたが、その後、点検しておらず原子力安全・保安院にも報告していなかったということです。

この問題を受けて、原子力安全・保安院は全国の原発に対して、非常用電源の設置を徹底させるとともに、緊急時でも装置が稼働するよう改めて点検することにしています。

今回の震災では、「ERSS」は地震のおよそ2時間後に故障して停止しましたが、それまで福島第一原発のデータを送れなかったことが、放射性物質の広がりを予測する「SPEEDI」と呼ばれるシステムの運用などに影響を与えたかどうかについては、森山善範原子力災害対策監は「何らかの形で予測に利用できた可能性はあるが、実際に予測に影響を与えたか今の時点では分からない」と話しています。
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120119/t10015397511000.html















東電と保安院で食い違う説明 責任押し付け合い 非常用電源未接続問題
2012.1.19 22:57
 全国の原発の原子炉データを把握・監視するERSS。そのシステムをないがしろにする“失態”をめぐり、当事者の東京電力と経済産業省原子力安全・保安院が19日、それぞれ会見を開いた。両者の説明はまったくかみ合わず、責任のなすりつけ合いの様相を呈した。(原子力取材班)

 東電は、ERSSへのデータ送信装置と非常用電源とが未接続だったため、データが送れなかったことは認めた。そのうえで、会見した松本純一原子力・立地本部長代理は「いつまでに(接続)工事をしなければならないのか、国と約束ができていなかった。緊急性が高い工事という認識はなかった」と述べた。

 地震の4カ月前から未接続のまま放置していたことについては、「接続工事をすると通常時のデータ送信が止まるため、ERSSを所管する保安院と調整していた」と説明。「作業をどうするか未調整のまま3月11日を迎えた」とした。

 一方、19日午後に緊急会見を開いた保安院の説明は、東電の見解とはまったく違う内容だった。

 「保安院としては、接続できていないことは(震災後の昨年)8月か9月ごろまで知らなかった」。保安院の森山善範原子力災害対策監はそう説明した。事実とすると東電が説明した「保安院との調整」はなかったことになる。

 森山氏によると、平成22年11月に東電が非常用電源を接続しようとした際、保安院が監視システムの管理を委託した原子力安全基盤機構が立ち会った。原子力保安検査官もいたが、保安院本院への報告はなかったという。

 保安院会見に同席した同機構の担当者は「東電には接続しておくように指示した」と証言し、東電説明とニュアンスが異なる。

 接続できなかった原因についても、東電と保安院の言い分は食い違う。東電は「事前に(ケーブルの長さを)確認して用意したが、情報が違っており、長さが足りなかった」と説明。保安院は「東電が(非常用電源の)設置場所を間違えたため届かなかった」。

 工事実施の経緯についても、東電は「自主的な取り組み」を強調したが、保安院は「機構が全国の原発に指示したもの」という。

 安全に関する大問題にもかかわらず、大きく食い違いう言い分。どちらが事実なのか。東電は「事実として把握しているのは説明した通り」と主張、保安院の担当者は「東電はなぜそんな説明をするのか…」と話している。