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2012/01/29

南海トラフ沿いに東西約200キロメートルの巨大な海底活断層

連動型巨大地震:痕跡発見 紀伊半島沖の南海トラフで





 和歌山・紀伊半島沖の南海トラフ沿いで、「連動型巨大地震」を起こす断層を発見したと、東京大大気海洋研究所の朴進午・准教授(海洋地質学)らの研究チームが27日発表した。この断層は、東南海地震の震源域で見つかっている断層の西側に延び、総延長は200キロ以上に及ぶ。チームは東海・東南海・南海の3地震が同時発生したとされる1707年の宝永地震(マグニチュード=M=8.6)でこの断層が大きく動き、大津波を引き起こしたと推定している。

 南海トラフでは、古文書に記された被害の状況から連動型巨大地震が起きたと推測されてきたが、連動を裏付ける断層が見つかったのは初めて。

 チームは1997~2005年、紀伊半島沖で探査船から音波を出して海底下の地質構造を調査した。これまでに、潮岬東側で1944年の東南海地震(M7.9)を起こした断層と、断層が押し合って盛り上がった海底隆起を見つけた。集めたデータを再解析した結果、この海底隆起が潮岬西側の南海地震の震源域まで続いていると分かった。

 今後、この断層が大きくずれれば、海底隆起が形成される際に海面が押し上げられ、巨大津波が発生する恐れがある。隆起の地下の断層構造を詳しく分析することで、同トラフ沿いの地震や津波の被害をより具体的に想定でき、防災への活用が期待される。朴准教授は「南海トラフの地震の規模は最大でM9.0を想定しているが、発生のメカニズムは分かっていなかった。今回の発見は、津波想定の見直しなどに役立つだろう」と話す。【比嘉洋】

【ことば】宝永地震

 宝永4(1707)年10月に東海、東南海、南海の3地震が連動して起きたとされる巨大地震。東日本大震災までは国内史上最大の地震とみられていた。西日本を中心に津波が押し寄せ、2万人以上が死亡したとされる。

毎日新聞 2012年1月28日 11時06分(最終更新 1月28日 13時59分)





紀伊半島沖海底に「分岐断層」
1月29日 12時6分


東南海地震と南海地震が繰り返し起きている紀伊半島沖の海底に、2つの地震の震源域にまたがり、200キロ以上にわたって延びる崖のような地形があるのを、東京大学などの研究グループが見つけ、地震の際に津波を増幅させる「分岐断層」だと発表しました。2つの地震が連動して発生した場合に、大きな津波を引き起こすおそれがあると指摘しています。

発表によりますと、東京大学と海洋研究開発機構の研究グループは、東南海地震と南海地震が繰り返し起きている紀伊半島沖で、深海調査船を使って海底の地形を調査し、データを詳細に分析しました。

その結果、2つの地震の震源域にまたがり、東西200キロ以上にわたって延びる高さ500メートルから1キロほどの切り立った崖のような地形があるのを見つけました。さらに、地層の断面の構造を分析したところ、フィリピン海プレートという海側の岩盤が陸側の岩盤の下に沈み込む境目付近から枝分かれした「分岐断層」であることが分かったということです。


「分岐断層」は地震の際、海底で大きくずれ動いて津波を増幅させると考えられていて、東南海地震の震源域ではすでに見つかっていましたが、2つの震源域にまたがる形で見つかったのは初めてです。



分析に当たった東京大学大気海洋研究所のパク・ジンオ准教授は「東南海地震と南海地震が過去に連動して起きていた証拠であり、分岐断層が同時に活動すると大きな津波が発生する可能性がある。今後、地震や津波の計算の中に分岐断層の影響を取り入れ、防災対策に生かすべきだ」と話しています。





200キロの海底断層、東南海・南海震源域に 東大・海洋機構
2012/1/27 22:55
 東京大学大気海洋研究所の朴進午准教授と海洋研究開発機構は27日、和歌山県・紀伊半島沖の南海トラフで東西約200キロメートルの巨大な海底活断層を発見したと発表した。東南海地震と南海地震の震源域にまたがっている。想定される東南海、南海の連動地震の際にこの断層が動けば、大津波が発生する可能性があるとしている。

 超音波を使って潮岬沖の海底の地下構造や地形を調べ、巨大断層を見つけた。過去にこの断層の破壊が東西に連動して伝わり、形成された海底隆起も確認できた。東南海、南海地震の連動地震の際に「この断層がすべりを起こすと非常に大きな津波を発生させる」(朴准教授)。

 巨大断層は分岐断層と呼ばれ、海溝でプレート(岩板)がずれて起きる地震の際にプレート境界から上に向かって生じ、上部プレートを破壊する。1707年の宝永地震の際にこの断層の活動が巨大津波を引き起こした可能性もあるという。

 南海トラフでは過去の地震研究から5つの震源域が想定されている。これらが連動して起きる巨大地震では断層破壊が紀伊半島の潮岬沖から東西に伝わると推測されていたが、断層の確認はできていなかった。