ページ

2011/07/20

吸収した放射性物質はヒマワリに蓄積され、いずれ処分しなければならない。ただ、焼却すれば放射性物質が飛散する恐れがあり、種まきの際に土を耕すと地表の放射性物質が土壌深くに混ざってしまう。

ヒマワリ作戦「慎重に」…専門家「間違えれば汚染拡大も」
「放射性廃棄物」の処理法まだ

 東京電力福島第一原発事故による周辺土壌の汚染を解消しようと、放射性物質を吸収するとされるヒマワリの種まきが、福島県内で進められていることに対し、「方法を間違えると汚染拡大の恐れもある」と、専門家から慎重な対応を求める声が起きている。



 放射性物質を吸収したヒマワリは、放射性廃棄物としての処理が必要だが、処理方法が確立されていないからだ。石川県内からも現地に種を送る動きが活発化する中、専門家らは事前の情報収集の必要性を指摘している。

 ヒマワリなどキク科やアカザ科の植物は、放射性セシウムを吸収するとされる。農林水産省は、同原発周辺の土壌から放射性物質を吸収するのにヒマワリなどがどの程度効果があるか、5月から福島県飯舘村で実験を行っており、8月に刈り取って吸収量などを分析する。ヒマワリに吸収効果があるという結果が出た場合は、原発周辺で植え付けを検討しており、「燃やしても放射性物質が外に出ないような焼却施設を開発する」として、専用処分場の建設も視野に入れる。

 だが、現時点で処分場所も種まきに際してのマニュアルもなく、同省は「(緊急時避難準備区域の)30キロ圏内などでは、実験結果が出るまで行わない方が良いのでは」としている。

 新潟大の野中昌法教授(土壌環境学)によると、吸収した放射性物質はヒマワリに蓄積され、いずれ処分しなければならない。ただ、焼却すれば放射性物質が飛散する恐れがあり、種まきの際に土を耕すと地表の放射性物質が土壌深くに混ざってしまう。汚染を拡散させる危険性があり、「種まきは将来的な処理方法を考えた上で、正しい知識を持って行う必要がある」と指摘する。

 福島県では現在、農地が荒れるのを防いだり、被災者を花で元気づけたりする狙いで、複数の団体がヒマワリの種をまく活動を始めており、こうした団体に石川県のグループが種を送る例も増えている。これらの大半は30キロ圏外での活動とみられ、放射線濃度が高くなければ問題はない。

 だが、中には原発30キロ圏内で行うケースも出てきている。南相馬市の農家らの団体は先月、「作付けできない土地をせめて花で飾りたい」と、30キロ圏内の約7ヘクタールで種まきを行ったが、栽培方法についての専門家の指導はなく、処理方法も決まっていないという。同市農林水産課も「種まきを行う団体や場所は把握していない」としており、歯止めのないまま広がっているのが実態だ。

 宇宙での農業を研究し、「ひまわり計画」と題して被災地への植栽を計画する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山下雅道教授は、4月末頃から主宰団体のホームぺージに「種まきは控えてください」と掲載した。▽安全に作業するための手段やマニュアルがない▽刈り取った後の処理施設がない――などが理由で、「方法が確立するまでは、植える地点の放射線量を把握するなど、慎重に取り組んだ方がいい」と呼びかけている。

(2011年7月19日 読売新聞)








福島でホットスポットにヒマワリ 1万本の種まき
 放射線量が局地的に高い「ホットスポット」を放射性物質を吸着するとされるヒマワリで埋め尽くそうと、福島市水道局は20日、市民に開放していた約6千平方メートルの広場(同市小倉寺大平山)に約1万本分の種をまいた。

 広場は県庁から約1キロ先の山の中腹に位置。地上1メートルの線量は先月の測定で最高毎時4・43マイクロシーベルトだったが、重機が入れないため大掛かりな表土除去ができず、利用制限するしかなかった。

 水道局では事前に耕運機で広場の芝生をしま模様に刈り取り、職員約30人がこの日、3人一組に分かれ、手作業で50センチおきに種2~3個をまいていった。

2011/07/20 12:00 【共同通信】





ヒマワリで土地浄化 NPO法人「39アース」 福島に種送る活動
2011年6月23日
市内の畑に植え付け 支援の輪他県にも
 福島第1原発事故の影響で汚染された土地の浄化につなげようと、金沢市の環境NPO法人・39アースが、土壌中の放射性物質を吸収するとされるヒマワリの種を福島へ送る活動を始めた。福島で栽培してもらう試みで、メンバーは「身近な活動で支援できる」と協力を呼び掛けている。(押川恵理子)

 一九八六年のチェルノブイリ原発事故後、ヒマワリは土壌中の放射性セシウムを吸収することが国内外の研究で報告されている。正確な吸収効果を明らかにしようと、農林水産省と福島県は五月末から同県飯舘村で実験に着手。使ったヒマワリの処分が課題となるため、放射性物質の空中放出を防ぐ焼却炉の開発も進めている。

 ヒマワリを送る活動は、福島県で野菜農家の男性が政府が野菜出荷制限の指示を出した翌日、将来を悲観して自殺したことを知った39アース理事長の山本久司さん(64)が「自分たちにもできることがある」と仲間に提案して始まった。

 十九日には、39アースのメンバーや家族ら十五人が金沢市新保町の畑十二アールにヒマワリの種一リットル入り約二袋分を植え付けた。汗ばむ日差しの中、参加した同市額小学校五年の飯野すずさん(10)は「足が土まみれで大変だったけど、役立てたらうれしい」と話した。周辺の畑三十アールにも植えた。

 支援の輪は他県にも広がっている。山本さんの知人で福井県鯖江市立待小教諭の岩堀美雪さんと教え子の三年生児童がヒマワリを植え、種二万五千粒を協力者に配っている。採れた種は、山本さんを通じて福島県でヒマワリ栽培に取り組む団体「福島ひまわり里親プロジェクト」に送る。

 山本さんらは二十五日、金沢市の県立音楽堂邦楽ホールで開かれる「地球の愛に包まれてコンサート」で活動を紹介する。問い合わせは、山本さん=電090(9447)9057=へ。