5月27日(ブルームバーグ):東京電力は放射性物質の放出量公表を怠ったほか、汚染水について「重大な問題」を抱えている-。国際原子力機関(IAEA)の調査団が27日、福島第一原子力発電所を視察する中、専門家らはこう指摘している。
東電は3月11日の東日本大震災後にメルトダウン(炉心溶融)があった福島第一原発1-3号機に冷却水を注入してきた。東電の推定によると、タービン建屋地下などにたまった汚染水は今月18日時点で10万トン近くに上る。汚染水の総量は年内に倍増するとみられる。
名古屋大学の井口哲夫教授(量子工学)は電話で、汚染水は増加傾向にあり、これは重大な問題だと指摘。汚染水の貯留先を確保する必要があり、それが土壌に漏れないことを保証しなければならないと述べた。
経済産業省原子力安全・保安院は4月、今回の事故で放出された放射性物質の量は、1986年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の1割程度との見解を示した。一方、東電関係者は当時、最終的にその規模を上回ることがあり得ると指摘している。
オランダのデルフト工科大学で学んだ放射能安全の専門家、ヤン・ファンデプッテ氏は26日に東京で、「東電は原発から漏れ出ている放射性物質の量について公表しているよりも多くのことを把握している」とし、「完全な情報開示が必要だ。これまでに放出された放射性物質の総量を開示することだと」と強調した。
米議会でも議論
福島第一原発の放射能漏れは、今週開かれた米上院環境公共事業委員会の公聴会でも取り上げられた。米原子力規制委員会(NRC)のウィリアム・オステンドルフ委員は、今回の事故を受けて米国の規制見直しが必要かもしれないと訴えた。
環境保護団体グリーンピース・インターナショナルのアドバイザーも務めるファンデプッテ氏は、汚染水による海の被害を解明するため、原発から漏れ出た放射性物質の総量を政府が調査する必要があると指摘する。
グリーンピースは今月3-9日に福島県沖で実施した調査で、海藻・魚介類に暫定規制値1キログラム当たり2000ベクレルの50倍余りに相当する「ヨウ素131」を検出した。福島第一原発から漏れ出た放射性物質の総量を突き止めることは可能だとファンデプッテ氏は言う。
井口教授は、政府は恐らく事故の詳細を分析した後にこうした問題に言及するだろうと指摘。原発で記録した時系列データからはじき出すことができるとし、知らなければならない最も重要なことは、燃料棒が炉心にどの程度残っているかだと強調した。
更新日時: 2011/05/27 12:34 JST
2011/05/27
汚染水は増加傾向にあり、これは重大な問題だと指摘。汚染水の貯留先を確保する必要があり、それが土壌に漏れないことを保証しなければならない
東電:福島原発の汚染水で「重大な問題」、情報開示も怠る-専門家