2011年3月23日 夕刊
【カイロ=清水俊郎】イタリアからの報道によると、一九八〇年代に全廃した原子力発電の再開を目指している同国のベルルスコーニ政権は二十三日、再開計画の一年間凍結を閣議決定する。
再開の是非を問う国民投票を六月に予定していたが、同国は二〇〇九年に三百人余が死亡した中部ラクイラ地震など欧州有数の地震国。東日本大震災による福島第一原発事故が自国民の心理に及ぼす影響が大きすぎると判断した。
ただロマーニ経済発展相は二十二日、原発再開計画を凍結する間も「原発用地の調査は始める」と説明。計画自体を断念する考えはないことを強調した。
イタリアは一九八六年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を受けて翌年に原発を全廃したが、ベルルスコーニ首相は二〇三〇年までにエネルギー需要の25%を原発で賄う構想を打ち出している。
欧州では、十四カ国で計百四十三基の原子炉が稼働。福島第一原発の事故後にすべての安全性検査を実施することが決まったほか、ドイツでは原発十七基の稼働延長が三カ月間凍結され、スイスでも原発の改修と新規建設が凍結された。