3月17日 9時53分
福島第一原子力発電所では、3号機と4号機の使用済み燃料を保管したプールが冷却できない状態になっていて、このままの状態が続くと放射性物質が大量に外部に漏れ出すおそれがあることから、政府の対策本部は、自衛隊と警察に冷却作業を行うよう要請し、このうち3号機については17日午前10時、前自衛隊が上空のヘリコプターによる水の投下を始めました。
福島第一原子力発電所の3号機では、使用済み燃料を保管しているプールが冷却できない状態になり、水が蒸発しているとみられています。
また、4号機は15日から16日にかけて火災が相次いで発生したほか核燃料を入れていた保管用のプールの温度が上がっていることが分かっており、3号機と4号機ともに、この状態が続けば燃料が溶けて放射性物質が大量に外部に漏れ出すおそれがあるということです。このため政府の対策本部では、自衛隊と警察庁に対して冷却作業を行うよう要請していました。
冷却に向けた作業は建物が大きく壊れている3号機を優先して行われることになり、自衛隊は17日、ヘリコプターからの水の投下を行うため陸上自衛隊のUH60ヘリコプターを向かわせて、上空の放射線量を測る「モニタリング」を行ったうえで、午前10時前からCH47ヘリコプターを使って水の投下を始めました。
7.5トンの水を投下できる容器を装備したヘリコプター2機ずつが、近くの海上から海水をくみ上げて、断続的に3号機の上に投下しています。
また、3号機に対しては4号機の冷却作業を行う予定だった警視庁の機動隊が保有する高圧放水車による放水作業もあわせて行うことになりました。
機動隊員は自衛隊から借りた防護服を身に着け、放射線量を計測しながら安全な距離をとったうえで作業に当たるということです。
高圧放水車は、すでに近くに待機しており、警察では自衛隊による3号機への投下作業が終わりしだい、安全を確認したうえで地上からの放水を始めることにしています。また、警察では4号機についても放水作業を行うことにしています。
「熱取る効果」「疑問だ」=水投下に専門家
陸上自衛隊が17日、大型ヘリコプターを使って開始した東京電力福島第1原発3号機への水投下作戦。放射性物質の放出防止に効果はあるのか。専門家の見解は分かれている。
竹田敏一・福井大付属国際原子力工学研究所長(原子炉物理学)は、3号機の使用済み燃料プール内にある燃料集合体約500体のうち、半年前に使用を終えたばかりの百数体が最も熱を持っており、これらを冷やすことができればいいと指摘。「水がプールに入れば水蒸気になり、その際に熱を取ることができる」と話した。
一方、懐疑的な見方を示すのは吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉安全工学)。「きょうは風も強く、かなりの高さから水を落としているので、実際にプールの中にどの程度入るかは疑問。水が入っても蒸発するため、何回も行わなければならない」と指摘する。
その上で「プールに入った水を循環させないと安全なレベルまで冷却できない。そのためには発電機を復旧させ、ポンプを動かす必要がある」と述べた。(2011/03/17-12:22)