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2011/03/12

福島第一原発、原子炉に海水を注入し炉心冷却

海水注入で炉心冷却開始 東電、1号機廃炉も視野
福島第1原発、史上最悪の事故に
2011/3/12 21:53



 東日本巨大地震で被災した東京電力福島第1原子力発電所1号機について、経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後、「炉心溶融でしか考えられないことが起きている」と発表した。東電は同日、原子炉に海水を注入し、炉心を冷やす作業を始めた。海水注入でさびやすくなることから、廃炉も視野に安全対策を進めた。燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素を原発周辺から検出。ほぼ半世紀になる日本の原発史上で、最悪の原子力事故になった。

 これに先立つ午後3時半ごろ、1号機周辺から爆発音が聞こえ、10分後に白い煙が噴き出した。この爆発で東電の社員2人と協力会社の作業員2人がけがをし、病院に搬送された。福島県に入った情報では原子炉がある建屋などの天井が崩落した。

 枝野幸男官房長官は同日夜の記者会見で「建屋の壁が崩壊したものであり、中の格納容器が爆発したわけではない」としたうえ「放射性物質が大量に漏れ出すものではない」と主張した。

 福島県に入った情報によると、午後4時すぎ、敷地内の放射線量が1時間に1015マイクロシーベルトを示した。一般人が年間に受ける放射線量の限度(1000マイクロシーベルト)に相当する値まで上がっている。

 原発は万一の事故に備え、「5重の壁」と呼ばれる構造で放射性物質を閉じ込める。今回の爆発では一番外側にあたる原子炉建屋が壊れたことが映像で確認された。内側の防壁の状況は分かっていない。

 建屋崩壊時は原子炉格納容器の圧力が高まっており、壊れる可能性があったため内部の空気を出す作業を進めていた。爆発が起きた原因は調査中だが、原子炉格納容器の圧力が何らかの理由で高まり過ぎて爆発したとすれば、最悪の場合は内部の防壁も壊れ、放射性物質が外に出た可能性がある。

 1号機は東日本巨大地震の発生で自動停止はしたものの、緊急炉心冷却装置(ECCS)を動かすことができなくなり、炉を十分に冷やせなくなっていた。

 東電は同日午後、原子炉内の水位低下が進んでいると発表した。午前9時に燃料の上部50センチメートルが露出していたのが、10時30分には90センチメートル、午後1時には1.5メートルに拡大。午後3時半ごろに1.7メートルになった。燃料の長さは4メートルで全体のほぼ半分が露出していたことになる。






東日本大震災:原子炉内の圧力抑えるため「禁じ手」重ね
 巨大地震に見舞われ、復旧に手間取っていた福島第1原発1号機について東京電力は、原子炉内の圧力を抑えるため、弁を開いて放射性物質を大気中へ放出したほか、炉心溶融を止めるために原子炉内に海水を注入して冷却するという「禁じ手」を重ね、事態の収拾を図ることになった。

 長沢啓行・大阪府立大名誉教授(生産管理システム学)は「今回のトラブルは、原発の耐震性への備えがすべて役立たず、かなり深刻な状態だったといえるだろう。海水を炉内へ入れるのは、炉を二度と使わない覚悟が必要だ。もし燃料棒が溶融していれば、使えなくなる可能性が高くなる。1号機は運転開始から40年超えた。とうとう役割を終える時期がきたということではないか」と話す。

 京都大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)によると、ホウ素は、ウランが吸収しようとする中性子をより多く吸収してしまうため、ホウ素入りの海水で炉心を冷やすことは効果的だという。しかし、「海水を入れるためのポンプを動かす電源が確保できないということで、今までやらなかったのではなかったのか。できるならすぐに実行すべきだった。なぜ今までやらなかったのか分からない」と対応の遅さを指摘する。
また、今回は地震の規模が想定以上で、発電施設に不具合が生じたことについて、「日本は世界一の地震国で、原子力発電をやるなら『想定していない地震』なんてそもそもあってはならない」と指摘した。【永山悦子、藤野基文】
毎日新聞 2011年3月12日 22時51分




党首会談中に福島原発で爆発 首相、野党に伝えず
2011/3/12 23:12
 菅直人首相が12日午後の与野党党首会談の席で、福島第1原子力発電所1号機の被災状況に関し「大丈夫」と野党側に説明していたことが分かった。実際には1号機は会談の最中に爆発したが、首相は報告しなかった。

 出席者によると、会談で、みんなの党の渡辺喜美代表は「炉心溶融(メルトダウン)が起きているのではないか」とただしたが、首相は「メルトダウンとは考えていない」と否定した。共産党の志位和夫委員長は1号機の圧力容器の水位低下を指摘したうえで「危険だ。万全な対応をしてほしい」と要請。志位氏によると首相は「大丈夫。上がってきている」との認識を示した。

 志位氏は会談中に爆発の事実の報告が無かったことなど一連の政府の対応について、加藤公一首相補佐官に電話で「無責任で怠慢な姿勢だ」と抗議した。社民党の福島瑞穂党首は「最悪の場合に備えて情報開示をしっかりし、10キロにこだわらず避難すべきだ」と主張。国民新党の亀井静香代表は会談で「いたずらに不安を醸し出すようなことをしては意味がない」と指摘した。







炉心溶融(メルトダウン)
 原子炉に装荷された核燃料が、冷却水の喪失などが原因で高温となり、燃料自体を溶かしてしまう現象。最悪の場合、原子炉圧力容器や格納容器、原子炉建屋といった構造物も破壊し、外部に放射性物質を大量に放出する恐れもある。海外では、1979年3月に起きた米スリーマイル島原発事故が有名で、機器故障や操作ミスなどが重なり、冷却水が流出。炉心溶融から周辺環境に放射能を放出する事故となった。(2011/03/12-18:36)
http://www.jiji.com/jc/c?g=tha_30&k=2011031200566