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2011/01/13

【目黒老夫妻殺傷事件】 犯行後に路地裏を使って迷うことなく最寄り駅の東急東横線中目黒駅方向に逃走

犯人は現場に土地勘? 迷わず路地裏抜け駅方向
2011.1.13 00:44




 東京都目黒区上目黒の元会社役員、大原道夫さん(87)夫妻が男に襲われ死傷した事件で、犯行後に男が路地裏を使って迷うことなく最寄り駅の東急東横線中目黒駅方向に逃走していたことが12日、捜査関係者への取材で分かった。駅の防犯カメラに男の姿は写っていなかった。警視庁目黒署捜査本部は、男が現場付近に土地勘があり、人込みに紛れるため人通りの少ない路地を選んで駅方向に向かったとみて調べている。

 捜査関係者によると、男は大原さん方を出た後、すぐ脇の路地から逃走。妻(81)の悲鳴を聞いた近隣住民が追跡したが約70メートル先の角で見失った。現場から約130メートル先の階段に血痕のようなものが複数残っており、男はこの階段を下りたとみられる。

 事件発生から約5分後の10日午後4時45分ごろには、階段からすぐ先のビルの防犯カメラに犯人とよく似た男の姿が写っていた。ビルオーナーによると、男はバッグを両手で胸付近に抱え、後ろを振り返りながら歩いていたという。

 さらに中目黒駅付近の商店街では同午後5時ごろまでに、犯人とみられる40代後半から60代前半で身長160センチの小太りの男を複数の通行人が目撃。濃い色のボストンバッグを重そうに持っていた。だが、駅の防犯カメラに男の姿はなく、電車を使わずに逃走したとみられる。

 逃走経路に血痕が残っていたことから、男は手にけがをしている可能性が高い。凶器の果物ナイフは事件前に購入したとみられ、大手百貨店の宅配を装って訪問するなど、捜査本部は計画的犯行とみている。






犯行時間、逃走経路、バッグ持参…犯人の行動の「謎」
2011.1.13 22:43
 東京都目黒区の元会社役員、大原道夫さん(87)夫妻が殺傷された事件で、妻(81)が「男がナイフを持って夫に馬乗りになり、夫は鎌を持っていた」と説明していることが13日、警視庁目黒署捜査本部への取材で分かった。大原さんが玄関にあった鎌で抵抗したとみられる。犯行の詳細が明らかになる一方、犯人の不可解な行動も浮かぶ。夕暮れ前という犯行時間、逃走経路、バッグ持参で犯行に及んだ理由…。謎の多い行動の見方は分かれる。

 ■視線気にせず?

 男が大原さん方を訪れたのは、日没前でまだ明るい10日午後4時40分ごろ。現場は東急東横線中目黒駅まで直線で約400メートルの住宅街で、「日中は、車や人通りがそれなりにある場所」(近隣住民)だ。

 通行人に顔を見られる恐れもある時間帯。犯人は顔を隠さず大原さんを襲い、妻の悲鳴で駆けつけた住民が大原さんから引き離しても、「殺すぞ」と再び馬乗りになり切りつけた。

 東工大教授(犯罪精神病理学)で精神科医の影山任佐氏は「もう少し暗い方が犯行をやりやすい。周囲の視線への無関心を感じる」と分析する。

 付近では、住民ら2人が大原さん方から数十メートルの緑道沿いに立つ不審な男を目撃。男は小太りで40代後半から60代前半。黒のハーフジャンパーにボストンバッグを持っていた。

 元警視庁捜査1課長の田宮栄一氏は「現場の家は石段を登らないと玄関にたどり着かない。目につきにくく、そうした状況を下見をした上で犯行に及んだ可能性もある」と指摘する。

 ■矛盾見え隠れ

 男は犯行後、大原さん方脇の路地を逃走。急な坂道を上り、曲がり角で住民らを振り切った。さらに、細い路地に続く階段を下り、駅方向へ姿を消したとみられている。現場から直線で約180メートルのビルの防犯カメラに映った犯人とみられる男は、周囲を気にする様子だったが、ゆっくりとした足取りだったという。

 田宮氏は「人目に付かない通りへ逃げ込みたい犯人心理がある。人通りの少ない路地を熟知していたかもしれない」と話す。これに対し、影山氏は「人目の付かない場所を通った後、あえて人通りの多い方へ向かった。人混みに紛れたかったのかもしれないが、矛盾も感じる」と指摘する。

 訪問時に大手百貨店の配達を装い、凶器を事件直前に購入するなど、入念に下準備をした様子もうかがえる。だが、多数の目撃者に見られたうえ、住民に取り押さえられかねない状況でもあった。影山氏は「計画性の中にずさんさも感じる」と首をひねる。

 ■なぜバッグ持参?

 捜査本部が注目しているのが、男が犯行時に持っていたボストンバッグだ。「人を殺すのに、逃走の邪魔になる荷物を持つことは考えにくい」。捜査幹部は現場までバッグを持ってきた理由を図りかねている。

 捜査本部によると、バッグは長さ約50センチで幅数センチ、高さ約40センチ。黒や緑、茶など、目撃情報にはばらつきがあるが、濃い色合いだったとみられている。

 男は大原さん夫妻を襲撃後、ナイフで駆け付けた住民を威嚇。玄関から緑道に繋がる石段を数歩下りたところで、突然、玄関へ戻り、わざわざバッグを取ってから逃走した。防犯カメラの映像には、両手でバッグを抱える男が映っており、中には荷物が詰まっていたとみられる。

 影山氏は「身元に繋がる荷物が入っていたのではないか」とし、田宮氏も「逃走するための身の回りの品など、本人にとって当面必要なものが詰まっていたのではないか」とみている。