日本原子力研究開発機構は9日、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の原子炉容器内に8月に落下した「炉内中継装置」内部が変形していることが分かり、これまで試みたつり上げによる回収は不可能になったと発表した。
今後の回収では、原子炉容器の上ぶたの一部撤去など大掛かりな作業の必要性が指摘され、来年7月にも始まるとみられた40%出力試験は大幅に遅れる可能性が高まった。関係者によると、少なくとも数カ月、長ければ1年程度の遅れが見込まれるという。原子力機構は「今後の日程を示せる状況ではない」としている。
装置内部で燃料を出し入れする筒状の「案内管」の接続部分が変形した。落下の際の衝撃が原因とみられる。原子力機構が装置回収に向けて9日に実施した調査で見つかった。装置は使えない状態になっていることも判明した。
装置外壁も外側に反り返ったような状態に変形した可能性があるという。外部からも装置を調べ、回収策を検討する。
原子力機構によると、原子炉容器上ぶたに固定された装置の導入部ごと引き抜く方法や、案内管を温めて管の内径を広げて取り出す方法などを検討しているという。
2010/11/09 20:11 【共同通信】
もんじゅ落下装置つり上げ不可能 回収、運転大幅遅れ濃厚
(2010年11月9日午後9時00分)
日本原子力研究開発機構は9日、高速増殖炉「もんじゅ」(敦賀市)で、8月に原子炉容器内に落下した炉内中継装置の内面を特殊な器具を使って調べた結果、装置に変形が確認されたと発表した。グリッパー(つかみ具)でつり上げての回収は不可能な状態。今後、回収方法を検討するが、大がかりな作業が必要とみられ、来年7月以降に行うとしていた40%出力試験は大幅遅れが濃厚となった。
原子力機構は同日、原子炉等規制法に基づく法令報告案件として経済産業省原子力安全・保安院に報告した。5月の運転再開後では初めて。
炉内中継装置は直径46センチ、高さ12メートルの円筒状。内部に燃料を通す案内管が外側と内側の二重になっていて、内側は5本の筒を縦に重ねた構造。外側は2本の筒をピンでつなぎ合わせている。
調査では、先端に鏡を付けた器具を案内管の中に入れて内面を観察。上から2番目と3番目のすき間が通常の約3倍の14・5ミリに広がっていた。すき間の大きさから分析すると、外側の上部の筒が落下の衝撃で変形し、つり上げる際に上ぶたの穴に引っ掛かると推定されるという。
原子力機構は「同装置は使用できる状態になく、グリッパー(つかみ具)を使用した方法で引き抜くことはできない」と判断している。
別の回収策としては、上ぶたの穴の外側にあるスリーブと呼ばれる部品を外し、同装置を引き抜く方法を中心に検討する。ただ、原子炉容器の上ぶたの部品を取り外すことになり、大規模な工事が必要となるという。今回の観察結果を分析した上で、遅くとも年内に回収方法を確定させたい考え。
原子力機構は現段階では今後の運転見通しは示さず「影響を最小限にするため調整していく」としているが、関係者には1年前後の遅れになるとの見方も出ている。
これに対し、県原子力安全対策課の岩永幹夫課長は「具体的な回収の方策を早期に検討し、(40%出力確認試験など)今後の工程を明らかにすべきだ」と指摘。河瀬一治敦賀市長は「炉内中継装置の引き抜き方法や引き抜き後の設備影響評価を慎重に検討し、万全を期すよう強く求める」とした。