日本原子力研究開発機構が高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の運転を再開して6日で半年。本年度の「炉心確認試験」は7月に無事終えたが、8月に原子炉容器内に落下した装置の回収に戸惑っており、今後の運転は大幅に遅れる可能性もある。政府や地元から原子力機構の対応に批判が出ている。
「(落下装置を)引き抜いてみないと工程は出せません」。10月19日、敦賀市での記者会見。向和夫もんじゅ所長は「ヤマ場」としていた来年度の「40%出力試験」のめどが立たない現状を率直に認めた。早ければ来春の予定だった試験開始が7月以降にずれ込むのは確実で、今後の回収作業によってはさらに遅れる見通しだ。
落下したのは燃料を運ぶ重さ3・3トンの「炉内中継装置」。高さ2メートルまでつり上げた所で落ち、これまで2回の回収作業はいずれも警報が鳴動して中断した。落下の衝撃で装置の一部が変形した可能性が高く、不透明な金属ナトリウムで満たされた炉内からの回収作業は難航が予想される。
2010/11/05 17:29 【共同通信】
もんじゅ、装置回収また中断 ふたに引っ掛かる?
(2010年10月14日午前7時40分)
日本原子力研究開発機構は13日、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で、8月に原子炉容器内に落下した炉内中継装置の取り出し作業を再開したが、つり上げている途中で荷重が異常値を示して警報が鳴り、作業を再び中断したと発表した。円筒形の同装置の一部が、原子炉容器の上ぶた付近で引っ掛かるためとみられる。再開のめどは立っておらず、回収が長期化する可能性もある。
回収作業の中断は4日に続き2回目。4日には作業開始直後に荷重計にノイズが混入し、警報が鳴ったため中断。ノイズ対策を施していた。
原子力機構によると13日午前10時すぎ、回収作業を開始。グリッパー(つかみ具)で同装置を2・26メートルつり上げた午後1時ごろ、荷重計で「荷重超過」を示す警報が鳴り自動停止した。その後、警報が鳴る荷重の設定値を段階的に最大値まで上げ、6時間で計24回にわたり引き上げを試みたが引き抜けなかった。
作業を中断後、同装置は落下していた元の位置まで下ろした。
同装置は高さ12メートル、直径46センチの円筒状。2本の筒を8本のピンでつぎ合わせた構造で、下から5メートルの部分に接合部がある。
原子炉容器の上ぶたの最も狭い個所は直径46・5センチで、同装置の接合部付近がこの位置にくると警報が鳴るという。原子力機構は「内部で引っ掛かっている可能性が高い」としており、落下時の衝撃で接合部が変形した可能性もあるとみて詳しく調べる。これまで燃料交換の際に引っ掛かって警報が鳴った例はないという。
作業の再中断について県原子力安全対策課の岩永幹夫課長は「確認が困難な個所で装置がどういう状態になっているか分からない。同じ位置で警報が作動していることを考えれば、装置の構造に何か異常が生じている可能性を含めてしっかり分析した上で、今後の対策を検討する必要がある」と指摘。原子力機構の方針がまとまった段階で、対策が妥当か確認するとしている。
嶽勤治・敦賀市企画政策部長も「まずは、しっかりと原因を究明することが先決。トラブルが発生している場所が原子炉容器内だけに、作業はとにかく慎重に進めてほしい」と求めた。