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2010/02/17

暴力団関係者などの闇勢力を「共生者」として短期の資金移動や偽計、株価操縦、インサイダー取引など危険な取引を繰り返した。その結果、黒木容疑者らは共生者から調達した資金を別の共生者に返済する自転車操業に陥っていたという

闇勢力相手に危険なマネーゲーム、黒木容疑者の手口とは?
2010.02.17




 ジャスダック上場で経営再建中の情報通信関連会社「トランスデジタル」が経営破たんの直前、金融ブローカーの会社に資産を不正に流出させようとしたとして、警視庁は同社の実質的オーナー、黒木正博容疑者(44)と社長の後藤幸英容疑者(44)、金融ブローカーの野呂周介容疑者(70)ら6人を逮捕した。経営難の企業に資金調達の“助っ人”として乗り込み、その会社を食い物にしてきた黒木容疑者らの手口とは-。

 警視庁組織犯罪対策総務課などによると、民事再生法違反容疑で逮捕された黒木容疑者らは、トランス社が民事再生法の適用申請をする直前、他の債権者に優先してブローカーの野呂容疑者が経営する会社にだけ約1億6000万円分の資産を不正に流出させようとした疑い。

 関係者によると、トランス社は2007年に資金繰りが悪化。投資事業組合を引受先とする約20億円の第三者割当増資を行ったが、この原資を捻出して新株を取得し、同社のオーナーとなったのが黒木容疑者だった。

 黒木容疑者は慶大文学部卒。学生時代に大規模なイベントサークルを立ち上げるなど、やり手で知られていた。

 その後、実業界に転じ、00年には自らが代表取締役を務める「スーパーステージ」を筆頭株主とするベンチャー企業「リキッド・オーディオ・ジャパン」を東証マザーズに“第1号”として上場させ、巨額の利益を手にした。

 07年以降はトランス社に資金を投入。自衛隊の広報番組制作などを企画し、海上自衛隊出身の後藤容疑者を社長に就任させた。陸自と空自の出身者も取締役に据えるなど、意欲的に事業を展開する一方、トランス社を“ハコ”にしたマネーゲームも展開した。

 トランス社は黒木容疑者の指示により、数億円単位の第三者割当増資を繰り返し、増資や融資の引受先に対し、担保として約束手形や小切手を乱発。また、暴力団関係者などの闇勢力を「共生者」として短期の資金移動や偽計、株価操縦、インサイダー取引など危険な取引を繰り返した。その結果、黒木容疑者らは共生者から調達した資金を別の共生者に返済する自転車操業に陥っていたという。