2011年4月8日3時34分
福島第一原発事故により土壌が汚染された影響で、原発から30キロ圏外の福島県飯舘村では爆発から3カ月後も、最高地点では平常時の約400倍の放射線が出続ける可能性のあることが、京都大や広島大などのチームによる現地調査で分かった。この3カ月間の放射線の積算量は、国が避難の目安として検討中の年間20ミリシーベルトを超える値だ。国などの測定でも、汚染は30キロ圏内外で確認されており、今回の調査で汚染地域が不規則に広がっている実態が改めて浮かび上がった。
今回の調査では、土壌に含まれる8種類の放射性物質の量を分析し、物質ごとの半減期を考慮して地表の放射線量の推移を求めた。2種類の物質しか公表していない文部科学省の調査より、実態に近い推計ができる。
京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)や広島大の遠藤暁准教授(放射線物理学)らは3月下旬に飯舘村を訪問。村内5カ所で深さ5センチの土を採取し、セシウム137などの濃度を分析した。調査地点は全て30キロ圏外で、道路沿いの集落を選んだ。
この結果、1平方メートルあたりセシウム137が約219万~59万ベクレルの高い濃度で確認された。1986年のチェルノブイリ原発事故の際は、セシウム137が55万5千ベクレルを超えた地域は「強制移住」の対象となった。飯舘村の最高の数値は4倍にあたる。
再び大量の放射性物質が放出された場合は、さらに上がりかねない。
また原発で爆発が起きた3月15日を基点に、地表1メートル地点の大気中の放射線量が3カ月後にどう変化するかを試算した。その結果、3カ月後でも毎時21~7マイクロシーベルトの放射線が土壌から大気中に出ることがわかった。3カ月間、屋外にいたとして単純計算すると、放射線の積算量は、約95~30ミリシーベルトに上る。
また土壌に付着したセシウムがそのまま残ると仮定すると、1年後の積算量は約220~70ミリシーベルトに上る可能性があった。
国は住民への避難指示の根拠として、年間の積算量20ミリシーベルトを目安とする基準を検討している。
半減期が30年のセシウム137も雨風などの影響で移動、流出して、1年後の数値は今回の試算値より下がる可能性はある。
文部科学省のモニタリング調査などによると、放射能による大地への汚染は爆発時の風向きなどにより、同心円状ではなく不規則に広がっている。文科省の土壌調査によると、土1キロあたりに含まれるセシウム137の濃度は、飯舘村のほか、原発から30キロ圏内外の大熊町や浪江町などでも、面積あたりに換算すると、最高値では京大などの調査より高い値になっている。
原子力安全委員会の緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)でも、原発から放射性ヨウ素が飛散する地域は、原発から北西と南の方向へ広がっている。
米エネルギー省も17~19日に毎時125マイクロシーベルトを超える放射線量の大気の帯が、浪江町や飯舘村付近を通ったと推定。高いレベルの放射性物質は、まだら状に降り注いでいる可能性を示している。(岡崎明子)