ヌッツィ氏、「法王と(バチカンの政府にあたる)国務省の間には距離があった」
ローマ法王:16世退位表明は内紛背景か 伊記者語る
毎日新聞 2013年02月24日 09時40分
【ローマ福島良典】バチカン(ローマ法王庁)の内情に精通するイタリア人ジャーナリストのジャンルイージ・ヌッツィ記者(43)が毎日新聞のインタビューに応じ、法王ベネディクト16世の退位表明(11日)の背景に、バチカン秘密文書漏えい事件として噴出した法王庁の内紛があったとの見方を示した。
昨年前半に表面化した漏えい事件は「バチリークス」と呼ばれ、バチカンを揺るがすスキャンダルに発展した。腐敗や内部対立を告発するバチカン高官の法王あて私信などを法王の元執事が持ち出してヌッツィ氏に手渡し明るみに。元執事は有罪判決を受けたが、法王から恩赦を受けた。
ヌッツィ氏は「(法王の決断には)文書が漏えいしたこと自体よりも、文書の内容が影響した」と指摘、法王庁の内紛が退位の背景にあったとの見方を示した。漏えい事件が起きたのは「法王庁の現状に(元執事だけでなく)何人かの聖職者が懸念を深めていたことの表れだ」と述べた。
法王は公式の退位理由として高齢や体力の衰えを挙げているが、13日のミサでは教会内部の「自己中心主義や内部対立」や「権力志向」をいさめた。ヌッツィ氏は発言に関して「法王庁に巣くう根深い問題として注意を向けた」と分析した。
バチカンで法王の置かれていた状況についてヌッツィ氏は「法王と(バチカンの政府にあたる)国務省の間には距離があった」と述べ、法王が孤立感を深めていたと語った。