中国・習近平副主席、尖閣「国有化は茶番」と強硬姿勢続ける方針
反日デモの嵐から一夜、中国政府は規制に乗り出し、中国国内のデモは鎮静化している。一方、尖閣周辺では、19日も多数の中国の監視船が巡視活動を続けた。こうした中、中国の次期トップに内定している習近平副主席は、「国有化は茶番だ」と述べ、強硬姿勢を続ける方針を示した。
19日午前、中国の習近平副主席は、アメリカのパネッタ国防長官と会談した。
中国の次期トップに内定している習氏は、日本の尖閣国有化について、「日本の尖閣諸島国有化は茶番だ」と述べ、一蹴した。
日本の尖閣国有化決定後、初めてこの問題に言及した習副主席。
「日本は、中国の主権と領有権を脅かす行動や言動を慎むべきだ」と強調し、「国有化は、周辺国の領土紛争を刺激した」と指摘したという。
これに対し、パネッタ国防長官は、中国側に平和的解決を呼びかけたものとみられている。
緊張が続く、尖閣諸島の周辺海域。
19日も新たに、3隻の中国の監視船が確認された。
日本の接続水域内には、漁業監視船など、6隻が航行している。
さらに、接続水域の外側には、別の監視船9隻が確認され、周辺海域を航行する中国当局の船は、15隻になった。
一方、その尖閣諸島に向けて出港したという中国の大漁船団の動きについて、中国国営テレビは、漁船の操業状態を示すセンターのモニターなどで、漁船団の動きを紹介した。
浙江省海洋漁業局は「われわれ浙江省所属の漁船は、現在、釣魚島(尖閣諸島)付近にいて、主に島の北側と西側に集中している」と話した。
尖閣海域に恒常的に船舶を送り、尖閣領有権の主張を強化する姿勢をアピールしている。
一方、過激さを増していた反日デモは、18日をピークに沈静化した。
北京の日本大使館前にも、デモ隊の姿は見られなかった。
北京市内の住宅では、日本大使館へデモに行かないよう、掲示板に通知が書かれていた。
北京市の公安当局は19日、「抗議活動は一段落した」、「大使館への抗議活動はやめるように」と呼びかけるショートメールなどで、デモの禁止を通達した。
大使館に近い地下鉄の駅を当面封鎖し、人が集まりにくくするなど、本格的なデモの規制に乗り出した。
こうした中国側の動きに、藤村官房長官は「わが方からも、いかなる理由であれ、暴力行為というのは、決して許されるものではないと。このようなことが発生したことは、誠に遺憾ということを、ここでも申し上げていますが。そういうことを十分に考慮をされたことの、今、1つの表れではないかと」などと述べた。
一方、中国側は、次なる一手も打ってきた。
中国商務省は「(尖閣諸島購入は)日中経済と貿易関係の正常な発展を必ず損ねる。われわれは、こうしたことを見たくはないが、悪影響については、日本側が全責任を負うべきだ」と述べた。
中国商務省は19日、日中韓3カ国の自由貿易協定(FTA)の交渉など、経済協力についても、日中関係の悪化で影響を受けるだろうと発言し、協議が停滞するおそれが出てきた。
さらに、中国の一部メディアは、2年前の漁船衝突事件の際に行われたレアアースの輸出規制を、中国政府が再び検討していると報じた。
経済制裁というカードをちらつかせる中国。
現在、日本にとって中国は、貿易総額の2割を占める、最大の貿易相手国。
日本企業の中国現地法人数も、ここ10年で5,500社を超え、2.5倍に増えている。
経済界からは、懸念の声が上がった。
日本貿易会の槍田松瑩(うつだ・しょうえい)会長は「日中両国政府には、このように両国にとって失うものが大変多い、現在の状況の一刻も早い沈静化といったものに、尽力いただきたいと」と述べた。
経済同友会の長谷川 閑史代表幹事は「ビジネスチャンスを全く無視をして、今回の問題を契機にですね、完全に撤退ということは、なかなか判断としては難しかろうと」と述べた。
専門家は、反日デモが長期化した場合、日本経済へ甚大な悪影響が出ると指摘する。
大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「仮に1カ月、日本の中国向けの輸出が全部止まるという仮定をすると、日本の国内の生産が、だいたい2.2兆円程度減ってくると」と話した。
さらに、熊谷氏によると、中国現地法人が1カ月停止した場合、売上高が2兆円減少、また、中国人観光客が半減してしまうと、年間2,200億円の減少になると試算。
今後、日本企業の脱中国依存の動きが出てくるだろうと予測する。
大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「これから、まだコストが安い、ミャンマーですとか、タイですとか、そういうような、ベトナム等に分散投資をして、いわゆる『チャイナプラスワン』、中国以外にもう1つ拠点をつくることによって、リスクを分散しておく。おそらく、そういう流れが、製造業の分野では、じわじわと出てくるのではないか」と述べた。
混迷する日中関係。
日本経済へのマイナス影響は、避けられそうにもない。
(09/20 01:47)
パネッタ米国防長官:中国は過去の傷を乗り越える必要
9月19日(ブルームバーグ):パネッタ米国防長官は19日、中国は尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる対立など今日の問題の解決に当たっては第2次大戦中に日本によって負わされた「深い傷」を乗り越えて取り組む必要があると述べた。
同長官は米国が日本に対して問題を平和的に解決するよう求めているとも言明した。習近平国家副主席と会談後に北京で士官候補生らに語り掛けた。
パネッタ長官は「第2次大戦中に中国が負った深い傷を私は理解しているし、その傷を米国は誰よりもよく理解できる。米国も深い傷を負ったからだ」とした上で、「われわれは過去に生きることはできない。われわれは未来に生きなければならない」と説いた。
尖閣諸島問題は日中関係に2005年以来最悪となる危機をもたらし両国間の貿易を脅かすと同時に、10年に1度の中国の指導部交代にも影を落としている。
警察官100人以上がこの日、北京の日本大使館前で警備しデモ隊を排除した。18日には数千人が北京のほか上海の日本総領事館近くに集まり、旗を振り毛沢東の肖像画を掲げて日本への憤りを示した。
少なくとも15日以来閉鎖されていた北京の日本大使館前の道路は19日には通行可能となった。軍の警察が大使館の門の警備に当たり、警官は通行者たちに立ち止まらず歩くように促している。
責任
香港城市大学の鄭宇碩(ジョゼフ・チェン)教授(政治学)は18日、「党中央は状況が制御不能となることは望んではいない。デモ抑制に一段と取り組むだろう」と話した。
パネッタ長官は日米同盟について、中国は米国が尖閣問題で日本の見解を支持することを意味するものだと解釈すべきではないと述べ、イスラエルとの同盟関係を例に挙げた。「米国はイスラエルに対して今はイランを攻撃すべき時でないとはっきり伝えた。同様に日本のリーダーに対しても、日本には今回の対立を平和的に解決する責任があると明確に伝えている」と語った。
中国外務省の洪磊報道官は19日の定例記者会見で、尖閣諸島をめぐる日中間の対立で米国は「中立を維持」すべきだと述べた。
原題:China Must Move Past Japan’s War-Inflicted Wounds, PanettaSays(抜粋)
更新日時: 2012/09/19 19:45 JST