東京都世田谷区の区道で高い放射線量が検出された問題で、文部科学省は14日未明、隣接する民家の床下にあった瓶の中から、ラジウム226とみられる放射性物質が見つかったと発表した。最大で毎時3.35マイクロシーベルトが検出された原因はこの放射性ラジウムで、東京電力福島第1原発事故とは無関係と判断した。
文科省によると、13日午後3時半ごろ、世田谷区から「床下にある複数のガラス瓶が放射線源とみられる」との通報を受けた。同省は放射線障害防止法に基づき、担当者2人を派遣。民家の寝室の床下から、箱に入ったガラス瓶数十本を見つけた。中には粉末が入っていた。
粉末を検査した結果、ラジウム226やビスマス214、鉛214などの放射性物質が検出されたため、鉛容器などに入れ放射線量を低減する措置を取った。14日にも専門業者に処分を依頼するという。
この民家は1950年代に建てられ、女性が今年2月まで住んでいたが、現在は無人。女性の親族はガラス瓶などに心当たりがないと話しているといい、女性の夫(故人)も、放射性物質を扱う職業とは無関係だったという。(2011/10/14-01:22)
東日本大震災:東京・世田谷で高放射線量検出 放射線、原発と無関係
◇床下の瓶にラジウム?
◇船橋の公園で1.55マイクロシーベルト
東京都世田谷区弦巻の区道から毎時3・35マイクロシーベルトの高い放射線量が検出された問題で、文部科学省は14日未明、東京電力福島第1原発の事故とは無関係と断定した。同区は13日、区道に面した住宅の床下から見つかったガラス瓶が発生源と発表。通報を受けて調べた文科省が、ガラス瓶は数十本で、表面は最大で毎時600マイクロシーベルト、中身は粉状で大半は放射性物質のラジウム226と推定されると明らかにした。一方、東京都北区の小学校と千葉県船橋市の公園で毎時1マイクロシーベルトを超える放射線量を測定した。【黒田阿紗子、川崎桂吾、吉住遊、橋本利昭、野田武】
文科省が調べると、ガラス瓶は数十本あり、鉛容器に密閉すると、敷地境界線の放射線量は0・1~0・35マイクロシーベルトに下がった。同省によると、この家には90歳くらいの女性が2月まで住んでいたが今は転居。女性の夫は約10年前に亡くなるまで一緒に住み、いずれも放射性物質を取り扱う仕事とは関係なく、女性や親族も「あることすら知らない」と話しているという。女性は箱から約2メートルのところで寝起きしていたことがあるとみられ、概算すると1年間に30ミリシーベルトほど被ばくしていた計算になるという。警視庁世田谷署は、放射性物質の取り扱いを定めた放射線障害防止法に違反する事実があるかどうか確認するため、ガラス瓶の保管状況などについて調べる方針。
一方、東京都北区の区立滝野川第三小学校の体育倉庫裏で13日、除染などの対応をするため北区が独自に設定した空間放射線量の基準値(毎時0・25マイクロシーベルト)の約4倍に当たる同1・01マイクロシーベルトを確認していたことが分かった。
区によると、区教委職員が9月28日、区の測定器を使い体育倉庫裏の雨水排水管下の地上から約5センチの地点で測定した。雨水を排水する溝はなく、水がたまりやすい構造だったという。区は今後、小中学校や保育園、幼稚園など子供が通うすべての施設で遊具、雨どい、植木付近の放射線量を測定する。
また、千葉県船橋市は13日、同市金堀町の「ふなばしアンデルセン公園」で、地上1センチの大気中の放射線量が最大毎時1・55マイクロシーベルトを測定したと発表した。
同市によると、市民グループが12日に計測したところ最大同5・82マイクロシーベルトを測定。同市が13日に同種の測定機器を用いて同じ場所を測定したところ、5・82マイクロシーベルトの場所は0・91マイクロシーベルトだったが、園内の切り株の下で同1・55マイクロシーベルトだった。同市は周辺を立ち入り禁止とし、砂利や表土を取り除いた。測定に誤差が生じた点について同市は「同じ機器による1日違いでの誤差としては考えられない大きさ。徹底して清掃などをしたい」と話している。
毎日新聞 2011年10月14日 東京朝刊
高放射線量 原発事故と無関係
10月14日 5時13分
東京・世田谷区の住宅で床下にあった瓶から高い放射線量が検出された問題で、文部科学省が調査した結果、ビンの中の物質は、がんの治療や蛍光塗料などとして使われる放射性物質のラジウムの可能性が高く、高い放射線量と原発事故とは無関係なことが分かりました。この放射性物質は国への届け出がなかったということで、文部科学省が詳しいいきさつを調べています。
この問題は東京・世田谷区弦巻の区道の一部で高い放射線量が検出され、区が隣接する住宅の中を調べたところ、床下にあった箱の中の瓶から高い放射線量が検出されたものです。
文部科学省が、検査官を現場に派遣して調査した結果、箱の中には試験管のような瓶が数十本あり、粉状のものが入っていたということで、ビンの表面で1時間当たり600マイクロシーベルトの高い放射線量が検出されました。
このため、これらの放射性物質を放射線を遮る鉛の容器に入れるなどして、住宅の敷地境界から離れた場所に置いたところ、敷地境界で最大1時間当たり3マイクロシーベルト余りあった放射線量は、10分の1以下の1時間当たり0.1マイクロシーベルトから0.3マイクロシーベルトまで下がったということです。
また、放射線のエネルギーの分析から、これらの放射性物質は放射性セシウムではなく、がんの治療や蛍光塗料などに使われるラジウム226の可能性が高く、高い放射線量と原発事故とは無関係なことが分かりました。
この放射性物質は国への届け出がないということで、文部科学省は関係者から事情を聞くなどして床下にあった詳しいいきさつを調べるとともに、14日、専門の機関に委託して住宅から持ち出し、安全が確保された別の場所で保管することにしています。
ラジウムは、ウランが崩壊してできる放射性物質で、天然の状態では、溶岩が固まってできた玄武岩や花こう岩などに含まれています。半減期の長さが異なる4つの種類があり、今回見つかったものは、このうち半減期がおよそ1600年と最も長い、ラジウム226と推定されています。
ラジウムはエネルギーの強いアルファ線のほか、放射性セシウムなどと同じガンマ線を出します。このため、以前はこのガンマ線を利用してがんの治療に用いられていたほか、時計の文字盤を光らせる夜光塗料の材料などとして使われていました。
文部科学省によりますと、がんの治療や蛍光塗料などに使われるラジウム226は、医療用であれば、針のような形だったり、蛍光塗料であれば、時計の文字盤だったり、製品化された状態で保管するのが一般的で、通常、粉末の形では保管しないということです。ただ、古くは粉末で保管し、筆で塗って蛍光塗料として使っていたことがあるということです。
ラジウムとは
2011/10/14 1:30
▼ラジウム ウランが崩壊した放射性物質で、さらに崩壊するとラドンとなる。ラジウムやラドンを含む温泉は関節痛や神経痛に効用があるなどとして、治療やリハビリに使われることもある。病院で使う医療用や、塗料用ラジウムは1970~90年代に別の物質にとって代わられた。1898年、フランスのノーベル賞科学者、キュリー夫妻が発見したことで知られる。
ラジウムは1グラムあたり10ベクレル以上かつ総量が1万ベクレル以上の場合、国に届け出て専用の容器で保管することが放射線障害防止法で義務付けられている。