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2011/03/17

原発導入を予定する東南アジア各国に驚きと不安

原発導入予定の東南アジア各国に不安 見直し促す声も
2011年3月17日9時35分


 福島原発で相次ぐ事故のニュースは、経済成長に伴う電力需要の急増などから原発導入を予定する東南アジア各国に驚きと不安を持って受け止められている。

 「建設予定地で地震発生は予想されていない」「地震対策は万全だ」。昨年10月、国内で初めて建設する4基の原発のうち、2基を日本企業に発注することを決めたベトナム。メディアが連日事故を詳しく報じるなか、14日付の政府系ラオドン(労働)紙は、科学者の言葉を引用して、原発の安全性を強調した。

 政府が世論の動きに敏感になっている表れだ。設置場所や災害時の冷却方法などでより慎重な計画を求める論評も出てきている。グエン・フォン・ガー外務省報道官は14日、朝日新聞の取材に「日本と協力し、最高の計画を作る」と語り、予定に変更のないことを確認した。

 地震大国インドネシアでも、国内初の原発建設に向けた計画が進行中だ。有力紙コンパスは、16日付で複数の原発関係者らのコメントを掲載。原子力専門家のイワン・クルニアワン氏は「日本は原発施設で長年の歴史がある。日本人は勤勉で規律を守る国民にもかかわらず、事故が起きた」と、見直しを促した。

 同国原子力庁の職員も16日、朝日新聞の電話取材に対し、匿名を条件に「日本の経験は多くの教訓を与えた。再考すべきだ、急ぐ必要はないではないか、という雰囲気になっている」と話した。

 現在、建設の可能性が最も高いのが、スマトラ島とカリマンタン島の間にある大小の島々からなるバンカブリトゥン州バンカ島の2カ所。ここで2007年、比較的大きな地震が起きたこともあり、NGOなどが反対している。

 2021年をめどに初めて原発を導入する方針を打ち出しているマレーシア。野党が政権を握るペナン州のトップ、リム・グアンエン首席大臣が福島原発の事故直後から、同州内での原発建設に反対する考えを訴えるなど、複数の政治家や専門家から、政府に見直しを迫る声が上がっている。

 リム氏は「先進国の日本ですら、原発をうまく制御できないでいるのに、マレーシアの与党政権が(原発事故に対し)どのような対応をするのか想像もできない」と述べた。

 28年までに原発5基の建設計画があるタイ。アピシット首相は13日、「日本の原発での爆発はタイの計画に影響を与える」と発言。15日には建設候補地の東北部カラシン県で建設反対の住民約1千人が集会を開くなど、建設に否定的な発言や動きが相次ぐ。

 また、温室効果ガス削減を理由に、一部で原発建設論議も出ているオーストラリアでは、与党労働党のギラード首相が14日、「豪州には太陽光や風力など代替エネルギーがほかにもあり、原発は必要ない」と語り、原発を推進しない姿勢を示した。(古田大輔、郷富佐子、塚本和人)