産経
「世界を暗黒に落とす」日本を英・ブラジル批判 COP16議事録入手
2010.12.10 01:54
【カンクン(メキシコ)=滝川麻衣子】2013年以降の温暖化対策の国際的枠組みを話し合う国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)の水面下の交渉で、焦点の京都議定書延長に反対する日本が厳しい圧力にさらされている実態が8日(日本時間9日)、産経新聞の入手した議事録で分かった。英国の閣僚は「交渉決裂は世界を暗黒に落とす」と日本を強く非難。最終日の10日までに合意できない場合の責任を日本に負わせようとする動きをみせている。
京都議定書は、先進国のみに12年までの温室効果ガス排出の削減目標を義務付けている。批准していない米国や途上国扱いの中国などが対象外なので、日本は先月29日のCOP16開幕早々、延長を認めない方針を表明。新興国などから批判の集中砲火を浴びてきた。
議長のエスピノサ・メキシコ外相は、14カ国の閣僚級を分野ごとの調整役に専任。京都議定書担当は、中国などと延長論を主導するブラジルと、延長やむなしとする英国となった。
6日に行われた両国との交渉議事録によると、ブラジルは「(日本の主張は)議定書への挑戦だ」と批判。英国は「途上国から譲歩を引き出すには(合意文書に)延長で前向きな表現が必要だ。受け入れられないか」と方針転換を迫った。
英国とブラジルは議定書を暫定的に延長し、その後に米中を含む新しい枠組みと統合させる案などを持ち出して妥協を求めたが、日本側は、米中が枠組みに加わる保証がないとして「ノー」を繰り返した。
業を煮やした英国は「金曜日(10日)の段階で決裂したら世界中の人々を暗黒に突き落とすことになる」と批判。さらに「会議が失敗に終われば人々が日本について何を言うかは明らかだ。日本が新聞のヘッドライン(見出し)になる」と脅しともとれる言葉をかけたが、日本は「だれもレッドライン(最後の一線)まで追い詰めずに現実的な解決策を見いだすべきだ」と主張。1時間10分の攻防を終えた。
一方、8日の閣僚級会合では各国の代表が相次いで意見表明した。中国の解振華・国家発展改革委員会副主任(閣僚級)が「議定書延長を成果として目指すべきだ」と強調。インドのラメシュ環境相も同日の松本龍環境相との会談で「(日本の)延長反対がCOP16の進行を妨げている」と批判するなど新興国は“日本包囲網”を狭めてきた。日本政府関係者によると「中国と米国が接近している」との情報もあるという。
日本もロシアやカナダなどの主要国や途上国の島嶼(とうしょ)国などに働きかけて支持固めを続けている。両陣営の溝が埋まる気配はなく、日本の交渉担当者は「合意文書の表現がどうなるかは、まだみえてこない」と厳しい表情をみせている。