仏企業、中国にヘリ着艦装置…政府が懸念伝える
日本政府がフランス政府に対し、仏企業が中国との間で輸出契約を結んだヘリコプター着艦装置について、「軍事用に使われるおそれがある」との懸念を伝えていたことが18日分かった。
欧州連合(EU)は1989年の天安門事件以降、対中国武器禁輸措置を取っているが、仏側は「汎用性のある商品で軍事用と限定されていないため、国内法では規制できない」と回答したという。
日本政府関係者によると、仏企業は悪天候でもヘリコプターが船の甲板に着艦できる装置を中国に輸出する契約を結んだ。この装置が中国公船に使用されると、着艦技術が未熟でも離着艦ができる可能性があるという。
尖閣諸島周辺に領海侵犯を繰り返す中国公船に装置が使用された場合、日本が領空侵犯を受ける可能性が高まる。日本政府はオランド仏大統領の初来日を5~6月で調整しており、来日前に懸念を解消したい考えとみられる。
(2013年3月18日12時57分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130318-OYT1T00578.htm?from=ylist
中国に仏企業がヘリ装置売却 日本、仏政府に懸念伝える
2013年3月18日11時31分【倉重奈苗】フランスの防衛企業が中国に最新鋭のヘリコプター着艦装置を売却したことで、日本政府が仏政府に懸念を伝えた。沖縄県の尖閣諸島周辺の領海に侵入する中国公船に装備されるとみて警戒するが、仏政府は対中武器禁輸の対象外との立場だ。調整中の日仏首脳会談に影響しないよう、日本側は対応を求めている。
この仏企業はディレクシオン・デ・コンストリュクシオン・ナバール・システム(DCNS)社。同社の公表資料によると、ヘリコプター着艦装置は小さな穴が一面に並ぶ特殊な鋼板で、船の甲板に設置する。ヘリ側から着艦時に伸びる棒が刺さることで固定され、悪天候でも船員の補助なしで離着艦が可能になる。納入先は中国のほか韓国や台湾、欧米など20カ国を超えるとしている。
日本政府は、中国政府がこの装置を年内に海洋監視船2隻に装備するため購入した契約を把握し、「中国の不十分なヘリ着艦技術を補う」(政府関係者)と分析。尖閣周辺で領海侵入を繰り返す監視船と、監視範囲がより広いヘリを組み合わせて中国が海洋活動を強め、日本の実効支配を脅かしかねないとみている。
このため、日本政府は2月までにパリの日本大使館を通じて仏政府に懸念を伝え、対応を求めた。だが仏政府は、DCNS社の装置が中国で軍事目的には使われず、欧州連合(EU)が定めた対中武器禁輸などの対象外となるため規制できないと回答してきた。
仏大統領は昨年5月に中国重視のサルコジ氏からオランド氏に交代し、日仏両政府は5~6月の初来日で調整。首脳会談の成果として海の安全保障協力を含む共同文書の発表を検討している。日本側は「東アジアでの中国の力による現状変更について認識を共有したい」(外務省幹部)とし、DCNS社の件が会談に影響しないよう仏側に理解を求めている。
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〈尖閣諸島周辺への中国の監視船派遣〉 昨年9月の尖閣国有化以降、常態化し、領海侵入も繰り返す。ヘリコプター搭載可能な船もあり、今年2月には日本領海内で格納庫を開いた。飛べば即領空侵犯になり、尖閣上陸に使われるおそれもある。中国による実効支配が進まないよう、海上保安庁は周辺に全国の巡視船を集め対応。自衛隊の退役艦船の転用も検討するが、ヘリの接近を防ぐのは困難だ。